全私学連合 文科省に予算拡充等要望

国私間の公平な競争環境整備

学校運営に係る問題解決への支援等を

全私学連合(田中愛治代表=早稲田大学総長)は8月5日、文部科学省に「令和8年度私立学校関係政府予算に関する要望」を提出した。令和8年度政府予算案編成に向けて各府省が概算要求を8月末までに財務省に提出するのに合わせて、文科省に私学関係予算の新規計上や拡充等を要望したもの。全私学連合は、日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会、日本私立中学高等学校連合会、日本私立小学校連合会、全日本私立幼稚園連合会の5団体によって組織されている。

このうち私立大学関係政府予算に関しては、圧倒的多数の学生数を預かる私立大学が質の高い教育研究によって社会に貢献する人材を育成し、国や地方行政、産業界、市民社会などと一層連携を深めながら、社会のイノベーションのエンジンとして日本の労働生産性向上と未来社会の創造に貢献しなくてはならないこと、私立大学の教育は知識やスキルだけではなく、主体的、能動的姿勢の下で、多様な学問分野の“総合知”によって科学的・複眼的思考を養い、「厳しい時代を生き抜く力」を身に付けさせることが重要で、日本社会の持続的発展と個人のウェルビーイングにおいて、私立大学が担うボリュームゾーンの人材育成は極めて革新的な意味を持ち、この両立に大きく寄与することには疑いがない、と指摘。令和8年度の私立大学関係予算においては、国私間の公平な競争環境を整備するとともに、教育研究の実現に積極的かつ革新的に取り組む私立大学が、2040年を見据えた質の高い高等教育機関へと成長を果たせるよう支援を要請。

その上で最重点要望項目として、(1)新たな教育財源(教育国債2兆円)の確保と機能別配分による私立大学等経常費補助の強化、質の高い教育に向けた規模の見直しへの支援、(2)厳しい時代を生き抜くための質の高い(成長分野、文理横断)教育に対する支援、(3)地方創生に貢献する私立大学(エッセンシャルワーカー、地方・地域の知の拠点形成)への支援等を要望している。

また令和8年度私立高等学校等関係政府予算に関しては、私立中学高等学校等の質の高い教育の実現に向けて、私立高等学校等経常費助成費補助金の一般補助と特別補助の拡充強化、私立高等学校等におけるICT環境の整備に対する補助の拡充強化、私立高等学校等施設の耐震化・高機能化及び私立専門高等学校の施設設備に対する補助の拡充強化に加えて、新たに私立高等学校等の学校運営に係る問題解決への支援を要望している。

いじめ問題や不登校生徒へのカウンセリング、障がいを抱える生徒への合理的配慮、日本版DBSへの対応、保護者からの過剰な苦情や要求など、学校に求められることは多岐にわたり、複雑化している中で、公立高校等では教育委員会が組織として解決に当たるが、私立高校等は個々の学校が対応せざるを得ず、自ずと限界があるため、学校運営に係る問題解決に向けた支援を要望、学校現場の実態に即した制度の見直しを要望している。

経常費助成費補助金については、諸物価が高騰する中で補助単価の伸び率は1%程度で、社会情勢に追い付いていない状況で、しかも公立学校では来年1月以降、毎年、教職調整額が1%ずつ引き上げられることが決まったことにも言及している。このほか保護者の負担軽減を更に進めるため、私立中学高等学校の就学支援金等の拡充強化、私立高校等生徒の海外留学・研修旅行、国内修学旅行等への支援の拡充強化、日本私学教育研究所事業費等に対する補助の拡充強化も要望している。

令和8年度私立小学校関係政府予算に関しては、私立小学校の経常費等に対する補助の拡充強化(2分の1助成、35人学級、教員の大幅な増加)保護者負担教育費の公私間格差の是正(私立小に対する認識の改善、私立小学校にも給食費相当額の支援、学童保育やアフタースクールへの補助)ICT環境整備に対する支援措置の拡充強化(端末支給やメンテナンス等への全額補助等)、いじめ対策・学校安全対策・環境整備に対する補助の拡充強化、特別支援を要する児童に対する教育支援補助、教職員の研修・研究への助成拡充などを要望している。

幼稚園関係予算に関しては、幼児教育振興法の制定に関する要望、私立高等学校等経常費助成費補助制度(幼稚園分)等の拡充、保護者負担の軽減、幼稚園教諭・保育教諭の処遇改善、経営基盤の安定施策等を要望。

このほか日本私立学校振興・共済事業団は、同事業団が行う事業の一層の充実のため所要の予算措置等の拡充等を、一般財団法人私学研修福祉会は研修事業の充実のため新たな財源確保方策が講じられること、時代に応じた柔軟な助成金制度設計の見直しを強く要望している。