文科省ワーキンググループ

2025年~29年までのデジタル教科書推進方策を議論

文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会は、5月22日、同省でオンラインを併用して第8回デジタル教科書推進ワーキンググループ(主査=堀田龍也・東京学芸大学教職大学院教授)を開催した。

第8回では次の学習指導要領が全面実施されるまでの2025年から2029年までを“当面の間”と位置付け、当面の間のデジタル教科書の推進をどう進めるかが話し合われた。

その中で文科省は当面の間の推進方策として次の5つの論点を挙げた。

(1)当面の間のデジタル教科書の段階的な導入では、小5~中3を対象に「英語」から導入し、その次に「算数・数学」を段階的に導入する方針となっているが、その後は国で特定の教科を決めるか、現場の希望に応じるか。

(2)デジタル教科書の効果的な活用方法の発信・教員の指導力向上では、教員研修をどのように充実させるか、教員養成課程で学生がデジタル教科書を利用しやすくするための検討、デジタル一辺倒でなく、デジタル・紙の良さ組み合わせた効果的な活用の検討。

(3)アカウント管理等の負担軽減では改善に向けた国と教科書発行者が連携した取り組みの検討。

(4)健康環境への影響では、視力低下などへの対応を徹底し、更に見直す点はないか。

(5)ICT環境の整備では、デジタル教科書のメリットが十分に得られる通信環境整備の検討等。

論点に関してWGの委員に意見が求められた。論点(1)、(2)に関しては「国語は時間数が多いので早くデジタル教科書を使いたい。家庭科、音楽は実習、演奏などが見られるのでデジタルとの相性は高いが、時数が少ないので優先度は低いと言えるか。どの教科でもデジタル教科書を使ったことのある人を増やし、その感想を教科書発行者に届けたい」、「学校でのデジタル教科書の活用の差が子供の学びの差にならないように、当面の間に差が是正されるようにしたい」、「論点(1)は(2)に依存するものなので、(2)が重要。活用方法の発信は、好事例の紹介ではなく、事例を構造的に整理して原理と対応させ、先生たちの個々の授業スタイルにデジタル教科書を組み入れてもらうようにする時期になっているのではないか」、「教員養成課程の学生は、大学でデジタル教科書を活用できないようだ。自由に使えないのは大きな問題。パッケージ化して安価で提供できるような仕組みが必要」などの発言、提案があった。

論点(5)に関しては、「文科省推奨の固定回線の学校規模ごとの1校当たりの帯域の目安を満たしている学校は2割程度しかないのに、困っていないと話す学校がある。本当に困っていないか児童生徒、先生に体感調査も必要」、「令和5年度末の時点で、私立学校で、1人1台端末が整備されていない学校が23%ある。公立と同様の支援があればデジタル教科書の活用はさらに進む」などの意見が出された。

最後に堀田主査が「デジタル教科書の利用経験者を増やすことが重要であり、『英語』、『算数』・『数学』の次は各学校の実情に合わせて力を入れる教科に導入することが考えられる。当面の間に先生達にデジタル教科書の利用実績を積んでもらい、地域、学校の実態に合った授業づくりと合わせて、デジタル教科書の導入の在り方を考えてもらいたい」と第8回WGを締め括った。