日短協 令和7年度春季定期総会開催

麻生会長「地方で学びの場所無くなるのは大きな問題」

修学支援新制度運用上の改善等要望

日本私立短期大学協会(会長=麻生隆史・山口短期大学理事長・学長)は令和7年度春季定期総会を4月24日、私学会館で開催した。総会に先立ち、文部科学省から、私立大学の在り方検討会議の設置や、修学支援法の一部改正、新たな評価制度と地域大学振興についての説明が行われた。総会では令和6年度収支決算報告及び令和7年度事業計画・収支予算案等を承認した。また大学・短期大学基準協会からは認証評価等の報告が行われた。

開会挨拶で麻生会長は「急激な人口減少の中、短期大学が養成している幼稚園教諭や保育士、家政系、医療介護系等の学科の志願者が現実に減っており、経営は厳しい。地方で学びたい学生が学べる場所が無くなるのは大きな問題だ。公的支援の充実をお願いしたい。修学支援新制度は学びたい学生に対する支援であり、様々な運用上の改善を図ってもらえるようアプローチをしていく」などと述べた。

来賓挨拶では、伊藤学司・文部科学省高等教育局長が、「中教審の「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」答申(以下、「知の総和」答申)の提言を受け、文部科学省では4月1日に地域大学振興室を設置、地域大学振興に関する有識者会議も設置した。また2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議を設置したほか、大学分科会の中に質の保証に向けた部会を置き具体の検討を開始した。文部科学省としては関係者の意見を受け止めながら、様々な支援策に取り組んでいきたい」などと述べた。続いて文部科学省から、三つの説明が行われた。

説明Ⅰ「2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議について」(以下、私立大学の在り方検討会議)と題して、私学部私学行政課の三木忠一課長が次のような概要で話した。

私立大学の在り方検討会義の検討事項は、▽地域の人材育成、▽国際競争力の強化、▽大学経営の在り方、▽教育・研究の質の向上。3月10日の第1回会議では、地域の人材育成に向けた私立大学の役割や関係者との協働の在り方等について議論した。議論の中で私立大学は、地域のエッセンシャルワーカーや地域の中核人材の養成に私立の大学・短大が重要な役割を果たしていること。大学は街づくりと一体であって、学生がいること自体に価値があり、教育だけでなく、地域振興、地域活性化の視点でしっかりと高等教育の在り方を考えるべき。地域人材を必要としている地方公共団体や産業界等と参画・協働することが重要で、これを後押しするインセンティブが必要ではないかという意見があり、

私学への財政支援の在り方については、基盤的経費の拡充の一方、メリハリ・重点化が必要といわれている。

また一時的に入学定員を減らした場合、元に戻しやすいよう制度改善したい―などと話した。

説明Ⅱ「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律について」、学生支援課の後藤彰宏課長補佐が次のような概要で話した。

令和7年度から子ども3人以上扶養世帯である多子世帯は所得制限なく授業料・入学金の最大額を減免する。大学等の機関要件についても見直しがあり、従来からの要件に加え、収容定員に関する要件を満たさない場合であっても同一県内に同種・同学位分野の代替進学先がない場合(首都圏大都市部を除く)は取り消しが猶予されること。また、過去に確認取り消しとなった短期大学等が再度申請する場合は、経営要件に加え、収容定員に関しては、直近3年度全ての在籍学生数が収容定員の6割以上、かつ進学・就職率が9割超の場合でも申請を可能とする―などと説明した。

説明Ⅲ「『知の総和答申』を踏まえた新たな評価制度と地域大学振興について」、大学振興課の石橋晶課長が次のような概要で話した。

評価制度の見直しで、第三者評価については、現在の認証評価から新たな評価制度へ移行、▽定性的評価を導入するとともに、定量的評価を行い、在学中にどれくらい力を伸ばすことができたかといった大学等の教育の質を数段階で示した上で公表する等の制度改善を行う。社会へのアカウンタビリティとして、○大学自らの情報公表の充実、○国民に分かりやすい評価結果の公表、○データベースと連携した新たなデータプラットフォーム(各大学間の比較可能)の構築、○全国学生調査結果のフィードバック等を行う、などと説明した。

総会では、令和7年度事業計画について、私立短期大学を取り巻く環境は一段と厳しい状況にあることから、地域における高等教育及び高度な生涯学習の拠点として、私立短期大学の特色を発揮し、その存在意義について効果的な情報発信を行う。また、中央教育審議会(以下、中教審)の最終答申では、「短期大学の専攻科修了者の大学院への進学ニーズ等を含め、短期大学制度の改善の検討を行う」ことが盛り込まれたところである。これらの状況を踏まえ、引き続き、短期大学の有為性や存在意義などの特性に応じた振興方策の実現に向け、制度改正や公的助成の拡充、更には昨今の度重なる自然災害に対する復旧・復興に向けた活動について、全私学連合をはじめとする各団体とも協調し、国や地方公共団体に要望していくとした。秋季定期総会は11月26日に私学会館で開催する。今年度の研修会は、入試広報担当者研修会を8月29日に、教務担当者研修会を10月24日に、いずれもオンラインで開催する。調査は、令和6年度私立短期大学卒業生の卒業後の状況調査、私学助成及び管理運営に関するアンケートを実施。また私立短期大学の広報サイト「短大クエスチョン」やインスタグラムでは、私立短期大学の魅力を発信しており活用してほしいとした。

中教審等の審議状況について、第13期が始まった大学分科会では、大野博之委員が短期大学の振興も取り上げてほしいこと、志賀啓一委員は、新しい評価制度では学生がどのくらい伸びたか等を測るとしているが、公正な基準が作れるのか疑問があると意見を述べた。加藤映子委員は大学教育の質保証とAIの共存について問題提起した。なお、第12期の報告として、専修学校の適格専攻科修了者の大学院入学資格に関して質保証に懸念の声が上がっていたことから、文部科学省が基準に基づき認定すること、第三者による評価を義務付けること、立入調査の実施等が示されたことが報告された。

大学入学者選抜協議会では、澤辺桃子委員より実施要項の改定について、大学団体から▽実施要項の遵守の徹底、総合型選抜・学校推薦選抜は多面的・総合的な評価を実施する、その上で、調査書等に加え2種類以上を組み合わせて選抜を行い、更に基本的なテストによる基礎学力の把握も認めてほしいこと、▽学校推薦型選抜は、推薦の在り方に一定の条件を設ける―等が提案された旨報告があった。

また、短期大学の振興に係る活動等について、昨年12月にあべ文部科学大臣に提出した「私立短期大学の振興方策について(要望)」が説明されたほか、3月開催の自民党の新しい地方経済・生活環境創生本部の会議に志賀啓一副会長が出席し、私立短期大学の振興や修学支援について要望を行ったと報告した。

最後に大学・短期大学基準協会より、令和6年度の認証評価では短期大学36校が受審し適格は36校、大学は5校が受審し5校とも適格であったこと。令和6年度の認証評価は1短期大学と5大学から申し込みがあったとした。なお、令和7年度からの第4評価期間に向けて、認証評価要項及び評価基準を改定したとした。また、基準協会が実施している短期大学生調査の活用と評価員の推薦について協力の依頼がなされた。

閉会後、同会館にて情報交換会が行われ、麻生会長より主催者挨拶の後、伊藤高等教育局長、短期大学振興議員連盟会長の中曽根弘文参議院議員、同事務局長の田野瀬太道衆議院議員、同事務局次長の岩田和親衆議院議員、自民党政務調査会長の小野寺五典衆議院議員、佐々木紀衆議院議員、日本私立学校振興・共済事業団の福原紀彦理事長から来賓挨拶があり、多くの関係者と会員校との活発な意見交換が行われた。