第11回高等教育の在り方WGを開催

私立高校生徒への修学支援措置について審議

公立高の振興策、急務との声も

中央教育審議会初等中等教育分科会内に設置されている高等学校教育の在り方ワーキンググループ(主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長、以下WGと表記)は4月9日、第11回WGを文部科学省でオンラインも併用して開催し、高等学校教育を巡る最近の動向について議論した。同WGは昨年8月31日に「中間まとめ」を策定、引き続き議論が十分にできなかった事項について審議する見通しだが、この日は私立高校生に対する授業料の無償化策等が取り上げられ、一部の委員(国立大学教授)からは、「私立高校生への修学支援の充実は大きな変化なので、法律成立時の国会での附帯決議に基づいて検証が必要だ。公立はこれまで機関補助一本だったので、対応が困難で、都道府県立高校の振興策が早急に必要だ。公立高校が支援の対象からこぼれ始めている。公私がイコール・フッティングとなっているのか。例えば私立高校では広範囲に通学バスを回しているが、公立についても通学バスの費用を支援すべきだ」といった意見が出され、また「私立学校に入学後の実質的費用負担額を調査する必要があり、入学前に表示されていた負担額と異なっていた場合(消費者契約法を念頭に置いてか)消費者庁マターだ」と述べている。

こうした高校生に対する修学支援の検討の背景には、同WGの委員(千葉県教育長)が言及したように江戸川を挟んで東京都と千葉県では高校生への修学支援が大きく異なっているため、全国一律の制度を検討してほしいとの思いがあることや、大阪府が独自に実施している私立高校等への修学支援の充実策で、今春、半数の公立高校が定員割れに陥ったことへの公立学校関係者の危機感があるものと思われる。  

また修学支援措置は高校生やその家庭に対する支援措置で、近年、そうした直接助成が分かりやすい少子化対策という側面もあり、充実されてきているが、その一方で私立高校への経常費助成(機関補助)は低迷あるいは国の財源措置を下回る状況が拡大する傾向にあり、私立学校にとっては補助金が低迷する中で、施設や設備の整備、ICT機器を活用する新しい時代の教育への対応が難しい状況となっている。校舎等の耐震化は公立がほぼ完了した一方で、私立高校はなお完了が見通せない状況だ。生徒1人1人のパソコン整備も公立は令和6年度に完了する予定だが、私立の整備率は公立を下回っている。  

こうした違いは、公立高校では保護者購入による生徒1人1人のパソコン整備は全体の17・0%に過ぎないが(残りは学校購入が41・8%、レンタル・リースが38・3%)、私立高校では保護者が購入する割合が64・6%(残りは学校購入が20・1%、レンタル・リースが14・2%等)と保護者頼りという財政事情から生じている。 

またWGの別の委員からは、「私立高校の無償化は公立高校の統廃合を加速する。地域の学習環境の公平さを考えると(公立高校が)なくなったでは済まない」、また別の委員からは「私立は進学しやすく進学者も多い。公立は中山間地域にあって小規模校が多い。公立は中卒者の減少に合わせて定員を減少している。定員面から公私の在り方を検討して頂きたい」など意見も出された。  

同WGは令和4年11月14日に第1回WGを開催し、審議をスタートしたが、検討事項とされたのは、(1)高等学校教育の在り方について(「共通性」と「多様性」の観点からの検討)、(2)高等学校制度の望ましい在り方(全日制・定時制・通信制の在り方、少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方等)、(3)「スクールミッション」「スクールポリシー」を体現し、「社会に開かれた教育課程」「探究的な学び」を実現するための校内外の体制について、(4)文理横断的な教育、産業界と一体となった実践的な教育の推進について―の4点で、私立高校生に対する修学支援の見直しに関する議論はこれまでほとんど聞かれなかった。今政府では少子化対策を最重要政策の一つに位置付けている時期に、なぜ私立高校生に対する修学支援が検討されるのか、同WGで明確な理由の説明はなかった。 

同WGの中間まとめで公立の通信制高校に関しては、学習を続けていくことに大きな困難を抱えた生徒を数多く受け入れているものの、生徒数の減少が続いていることから、一層の魅力向上・機能強化が必要と、支援を求める記述はあったが、私立高校生に対する修学支援の見直しといった指摘は見られない。  

このほか第11回WGで委員から出された意見としては、この日のWGで文科省が配布した同WGの中間まとめの概要を周知する広報用パンフレット「生徒を主語にした高等学校教育の実現に向けた取組」の中で、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方に関して、「全日制・定時制課程の不登校生徒が学習を続けられるように、単位数の上限の範囲内で、自宅等から高校の同時双方向型の遠隔授業を受講することを可能としたり、通信教育の活用を可能とするために制度を改正した」と紹介されている点に関して、高校長を務める委員からは、環境整備に時間がかかり、すぐに対応は難しいとの意見が出され、生徒や保護者に丁寧な周知を要請する意見も出された。実施するか否かは学校長の判断となる。 

また公立学校関係の委員からは、「公私が切磋琢磨するためには、施設整備への補助や教頭・副校長への支援員の派遣について高校も義務教育学校と同等に扱ってほしい」「私立高校に入学すると、修学旅行の行先もコースに分かれており、色々な体験機会もある。そうしたことへの支援の仕組みがあるといい」といった意見もあった。  

そのほか文科省からは高等学校教育を巡る最近の動向として、同WGの中間まとめを踏まえた制度改正の概要、令和6年度予算に盛り込んだ、各学校・課程・学科の垣根を超える高等学校改革推進事業(予算額は1・2億円、新規)や高等学校における質確保・多様性への対応に関する調査研究事業(同0・7億円)、東京都、大阪府における令和5年度と6年度の修学支援事業の概要などが報告された。