第4回高等教育の在り方特別部会開催

伊藤慶應義塾長 5年制文系ディプロマコースの導入

国公立大授業料大幅引き上げ提案

中央教育審議会大学分科会の高等教育の在り方に関する特別部会(部会長=永田恭介・筑波大学学長)は3月27日、第4回会議を文部科学省でオンラインも併用して開催した。この日は同特別部会の伊藤公平委員(慶應義塾長)が、「大学教育の多様化に向けて」と題して、(1)「学部+修士課程」をセットとする5年制の文系ディプロマコースの国レベルでの系統的導入や、(2)国立・公立・私立大学の協調と競争を促すため国・公立大学の学納金を年間150万円程度に引き上げる改革を提案。  

また、両角亜希子委員(東京大学大学院教育学研究科教授)が、「少子化の急速な進行と高等教育のあり方」と題して、韓国の蘆(ノ)政権(2003―08年)以降、現在の尹(ユン)政権までの間に進められてきた大学における定員削減政策の特徴や課題等について説明、今後、わが国の高等教育に必要なことなどを指摘した。このうち、伊藤委員の改革提案の(1)に関しては、大学院教育と労働生産性には正の相関が見られること、わが国の知の総和を増やしていくためには学士課程4年間では十分ではなく、全ての国立大学と高度人材育成を目指す一部の公立・私立大学では、文系(人文学、社会科学等)学部において、「学部4年+修士課程1年」をセットとする5年制のディプロマコースを国レベルで導入、ディプロマコースを国際卓越や特色ある研究大学を目指す大学の文系全学部の標準として、高等教育修了者のレベルを引き上げ、従来の4+2(修士課程)や4+2+3(博士課程)という学部と大学院をパッケージ化した教育とともに、高等教育の多様化を図る重要性を指摘。

その文系ディプロマコースでは、少なくとも3年生の終わりまで就職活動に煩わされることなく学問に集中し、5年生(修士)時にも論文執筆など高等な修了要件を課すことなどを求めている。  

また(2)に関しては、高度な大学教育を実施するためには、学生1人当たりの収入として年間300万円は必要なこと、国公私立大学の設置形態に関わらず、大学教育の質を上げていくためには公平な競争環境を整えることが必要で、国・公立大学の家計負担(学納金)を現在の年55万円から年150万円程度に引き上げ、このことで一部の私立大学では経営努力により国立より低水準の学納金設定で公平な競争に参加できること、国立大学は学納金の増加(年間4300億円)、運営費交付金は減額するものの、総額としては大学の収入が増える方向性を確保すること、国公私立大学の設置形態に関わらず、個人の経済状態に応じた奨学金制度を設計し、家庭の収入等の基準による公平な支援を設計すること、修士課程の学納金を学部と同水準またはそれ以上に設定することを提案している。2000年から2022年にかけて慶應義塾大学では学納金を90万円から140万円に増額したものの、国立大学の学納金は22年間に49万円から55万円に6万円増えただけだなどと説明した。

一方、両角委員は今後、世界は、少子化・生産人口減少、グローバル、ローカルな社会問題に直面、その中にあっても社会の知の総和は高める必要があり、大学が担うべき役割は大きいが、国際比較の観点から日本の大学について見ると、18―22歳の伝統的学生が多く、社会人学生や留学生は少なく、低コスト(授業料が安い・経済支援も多くない)運営が行われており、GDP(国内総生産)に占める公財政教育支出の割合が低いまま維持されていること、大学教育の質向上に関して文科省は力を入れ、大学自身も努力を続けているものの、社会からその成果が分かりにくく、透明性、誰でもわかる内容で提示するという点では課題があること、教員も職員も非常勤・非正規が増加し、内部管理が複雑化、研究志向に関しては、純粋基礎研究、純粋応用研究に比べて実用志向の基礎研究が弱い傾向にあること、ただしOECDの調査では日本の大人の学力は国際的に見て高いことなどを指摘した。

その上で、(1)教育の質の担保とその見える化が必要だが、マイクロコントロールではなく、自律性が重要なこと。また(2)社会との直接の接点の充実が必要で、難しい社会課題の解決には大学と社会が組むしかないこと、社会との接点が増えれば、教育研究の志向性も変わり、社会からの大学に対する見方も変わるはずで、そうした好循環を生み出すインセンティブを設計するべきだとし、また(3)国公私立を問わず国からの支援の枠組みが複雑で頻繁に変わり、長期的な見通しができないこと、高等教育の修学支援新制度で支援対象が広がったこと自体は評価できるが、高等教育政策との整合性の点で課題があり、総合的に議論すべきだと指摘した。  

こうした発表を受け、委員からは「個別の大学が財政基盤を強くしていかないといけない」「今、フランスで関心の高い日本文化を学ぶなら、東京ではなく、地方(大学)の方がいい。文化なら海外と日本の地方が直接つながる」「企業からの支援も含め個人補助が広がる中で奨学金の相談サイトやアドバイザーの充実が必要」などの意見が聞かれた。意見交換では同特別部会の最重要テーマである地域における質の高い高等教育へのアクセス確保や高等教育全体の適正な規模について、さまざまな意見が出されたが、永田部会長は、特別部会の具体的な提案につながるよう、もう一度同じテーマで、文科省から問いかける形で意見を求めたいと語った。次回は4月26日の開催。第4回特別部会ではこのほか、同省から過去3回の同特別部会等における主な意見の整理などが説明され、同省が博士人材活躍プランを策定したことなどが説明された。