国士舘大学の取り組み

家屋を地域に開かれたカフェにリノベーション
地域と学生つなぐ新しい交流モデル
国士舘大学(東京都世田谷区)理工学部建築学系の南泰裕教授の研究室では、地域住民からの依頼を受け、家屋の1階をカフェとしてリノベーションする取り組みを昨年から進め、今年8月23日、世田谷区豪徳寺で「Gotokuji cafe piece of peace」としてオープンした。プロジェクトにおける設計図作成や工程には南研究室の学生らも深く関与した。カフェは現在、地域に開かれた交流の場として運営されている。
同プロジェクトは、同大学世田谷キャンパスの近隣住民である風間氏から依頼を受けて始動した。風間氏は、大学進学後もやりたいことを見つけられないという長男に「背中を押してあげたい、そして、何か大きなことを成し遂げる素晴らしさを知ってほしい」という「想い」を持ち、以前から温めていた自宅カフェ構想を実現するため、南教授にリノベーションを依頼した。
南教授と学生らは、風間氏と基本設計図作成の場を設け、カフェに求められる機能やデザインについて話し合いを重ねた。その結果、高齢者や子供たちが気軽に集い、イベントも開催可能で、地域住民同士が交流できる場にするといったカフェの基本設計がまとまった。
同プロジェクトでは、学生が設計プロセスに深く関与した。大学院生を中心として、4年生や3年生もアイデアを出し、設計図の作成や模型制作などに取り組んだ。設計に当たっては、同学系の小久保彰准教授に構造設計の助言を求めるなど、安全性を十分に確保した設計を意識した。
南教授は「学生たちが地域住民と直接関わり、設計の過程を体験することで、社会に対する責任感や建築家としての使命感を深めてほしい」とコメント。年度をまたいでのプロジェクトになるため、卒業する学生は後輩にバトンを託すことになり、南教授は「継承から生まれる学びも大事にしてほしい」としている。
また、同プロジェクトは大学と地域住民が一体となることによって大学が地域貢献に寄与できる点で、同大学が地域に「開かれた大学」としての新たな可能性を示す好機となった。
作成した図案は、設計事務所が監修した。学生らは解体、施工など改築現場にも立ち合い、内装を手伝う貴重な経験も得た。施工を手掛けた㈱Change Up代表の赤上大輔氏は「学生のうちから、こうした体験ができるのはうらやましい。彼らが現場を想像しながら引いた図面と、実際の現場には想像していなかった違いが山のようにあるはず。この貴重な経験をステップアップのきっかけとしてほしい」と語っている。
南教授は依頼から完成までの約1年を振り返り「地域と学生をつなぐ新しい交流モデルとして画期的なプロジェクトだった。風間氏の柔軟性と学生の成長が、この取り組みを特別なものにした」と述べている。
大学院工学研究科の横山秀さん(修士2年)は「実際の仕事に直結する、学びの多い貴重な機会だった。この経験を生かし、将来はアトリエ系設計事務所で条件に応じた提案や関係づくりを行い、より良い設計活動につなげたい」と話している。
風間氏は「地域住民や学生が、このカフェでさまざまな経験をし、自分自身の可能性を広げてほしい。この場所が地域全体の活性化につながる一助となれば幸いだ」とコメントしている。


