第5回私大の在り方検討会議開催

4大学が教育研究の質向上に向けた文理横断・融合教育等報告
文部科学省の「2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議」(座長=小路明善・アサヒグループホールディングス株式会社会長)は、9月26日に文部科学省でWEB会議も併用して第5回検討会議を開催した。
この日の主議題は私立大学における教育研究の質の向上。議論に先立ち(1)須賀晃一・早稲田大学副総長から「入学者選抜改革を中心とした文理横断・文理融合教育の推進他」について、(2)昭和女子大学の井原奉明教授、今井章子教授から「教育研究の質の向上Field research & Project―Based Learning」について、(3)永井悦子・玉川大学リベラルアーツ学部長から「玉川大学リベラルアーツ学部におけるダブルフィールド制への取組み」について、(4)髙橋道和・放送大学学園理事長と加藤和弘・放送大学副学長から「放送大学を活用した大学連携の推進」について発表があり、その後、同検討会議委員との間で意見交換が行われた。
この日、意見交換を予定していた、教育研究の質の向上、私立大学附属病院の支援の在り方、新たな評価の在り方に関しては、伊藤公平・慶應義塾塾長、大森昭生・共愛学園前橋国際大学学長、平子裕志・ANAホールディングス株式会社特別顧問の3委員が作成した「検討課題」も参考にして意見交換が行われた。
このうち早稲田大学からは、大学の授業にきちんとついてこられるように政経・法・社学・人科・スポ科の共通テスト利用入試では「数学」を必修科目とし、またアカデミック・ライティング、数学、データ科学、情報、英語の基盤教育を最重要視しており、グローバル・エデュケーション・センター(GEC)の情報科目に今年度から「AIプログラミング基礎」を設けたこと、現在、AI研究教育センターの設置を構想しており、社会人中心のノンディグリー教育(非正規課程)を重視して、今後も履修証明プログラム等を順次開発していく予定で、リカレント教育、リスキリングのニーズに積極的に応える大学づくりを進めていることなどの説明があった。
昭和女子大学からは、全学的な教養科目の分野横断的な学びとPBLを推進しており、PBLの枠組みには専門学知に基づくものと、学外連携・学科横断の社会実装型があること、学士(経営学)課程教育における学習効果を測定したところ、学習態度や高度な思考力・問題解決能力、教員・学生同士の共同作業・コミュニケーション・自立心でプロジェクト型学習に参加していない学生と参加した学生を比較すると、参加した学生の方が意識や態度の面でより積極性が見られたことなどが報告された。その上でPBL指導者は不足している状況で、学外にある専門家を主たる組織から引き剥がさずに大学教育に引き寄せるための柔軟な雇用制度、国の重要政策(地方創生、地方大学との連携、グリーン・デジタル改革等)にPBLを結びつける政策や予算措置が要望された。
玉川大学はリベラルアーツ学部で学べる学問分野を4つのフィールドに分け、学際的・文理融合を進め、他分野との融合を意識し、STEAMの学びを実践の場で学生自ら展開し、併せて地域の課題も認識すること、さらに数理・データサイエンス・AI教育プログラムを、全学部全学科を対象に進めていることなどが紹介され、その上でカリキュラム設計や、教員の意識醸成(教育面では学際的な視野、社会課題との連携)、社会(企業)の就職に不向きとのイメージ払拭が重要と指摘。
放送大学は情報関連科目や教養科目、文理横断型基礎教育の構築に放送大学が開設する多様な科目が有効なこと、そのため申請しやすい手続き、財政的支援などの必要性を指摘した。
4大学等からの報告に検討会議委員からは、「学生の将来の発展のために学び続ける力をつけることが大事」「数理・データサイエンス・AIの力は英語と同様に大切。情報の先生がいない大学もある。支援をどうしていくか」「経産省の人材需要予測とのミスマッチをどう防ぐかが出発点」「大学間でもう少し連携していくことについてどう感じているか」「地域にもグローバルニッチ企業がある。技術革新を進める理工系人材が不足している。サテライトキャンパスを是非進めてほしい」といった意見が出された。小路座長は「道州制を検討しつつ地域大学の産学連携を考えていくべきだ」などと語った。 このほか令和5年度に財政赤字に転落、医師の働き方改革等の課題に直面する私立大学病院の実情が同省から説明され、相良博典・昭和医科大学病院長からは地域医療や教育・研究の拠点として私立大学病院の窮状等が報告され、また文科省から令和8年度私立大学関係概算要求・税制改正要望、私立大学の教育研究の質に関連する資料等が説明された。


