実践女子学園の取り組み

実践女子大学渋谷キャンパス共用スペースの本格運用を開始
社会連携とグローバル化を象徴する場に
学校法人実践女子学園(東京都日野市)はこのほど、実践女子大学渋谷キャンパス(東京都渋谷区)120周年記念館1階に「JISSENPLAYBASE」と「グローバルラウンジ」という異なる特色を持った共用スペースを作り、本格運用を始めた。同学園の教育の柱である「社会連携」と「グローバル化」を象徴する場となり、イベントや学生の学習、交流の拠点として内外に発信していく。
「JISSENPLAYBASE」は北欧風の椅子や机などが配置され、テーブルにはオーガニック成分を配合したハンドクリームや保湿美容液など、スキンケア用品の試供品が30点以上展示されている。試供品を提供した企業のインスタグラムに登録して、企業の認知度などに関するアンケートに答えると商品が当たる限定企画も設けている。社会連携推進室の担当者は「安心して使える商品などを展示している。企業に協力してもらうことで、学生には身近な商品を学内で楽しんでほしい」と話す。
現在、ハンドクリームなどを製造・販売する㈱EPIS(岐阜県美濃市)と、家族で使えるスキンケア商品を展開している㈱アンジュジャパン(東京都渋谷区)が試供品を提供している。
同推進室は令和2年、「実践の実践」として取り組んでいた産業界や自治体とのコラボによる実践的な授業などを加速させるために設置された。企業や自治体など、コラボした件数は累計で7百件以上に上る。ただ、授業や課外活動で連携する際、企業に依存している課題を抱えていた。
この問題を解決するためにできたのが「JISSENPLAYBASE」で企業側は商品展示などの機会にアンケートを実施してZ世代の情報を収集でき、マーケティングが可能となる。学生や保護者らに商品をPRし、QRコードから企業のECサイトに導くこともできる。学生は企業から提供されたアイテムなどを試すことで、企業への興味や関心が醸成され、社会連携プロジェクトの実施や企業研究の場所として使える。
同推進室は、社会連携する企業や商品展示に興味を持ちそうな人はイベントで来校する保護者らも含め年間7~8千人と推計し、利用を期待している。今後、製薬会社やファッションなどのセレクトショップ、雑貨店など2~3カ月に1回のペースで展示を変える予定。将来はゼミや課外活動での研究でも活用することを考えている。
同推進室の担当者は「学生と企業をつなぐマルチスペースとして1回だけで終わることもあった企業とのつながりを継続させ、企業、学生、学園がウィンウィンの関係になれたらと考えている」としている。
「グローバルラウンジ」は海外の新聞などが置かれ、大型スクリーンにはNHKワールドの放送などが流れている。イベントやワークショップの開催時などを除けば、原則、日本語の使用は禁止されている。学生がいつでも気軽に椅子に座ってくつろぐ、あるいは友人と会話を楽しめる国際的な雰囲気が漂うスペースとなっている。
利用できるのは同大学の学生のほか、海外からの留学生らで、特定のイベントでは近隣大学の留学生や日本語学校などの学生も活用できる。海外に強い志向を持つ学生だけでなく、関心の薄い学生も含み、興味を持たせてグローバルマインドを醸成していくことを念頭に置いている。
学生が自由に使っている時間以外は、主に学内外で開催される国際交流イベントや留学のプログラムに関する説明会などに使用。海外からの留学生との交流にも使われ、今年度前期はベトナムとジョージアの交換留学生が同大学の学生とベトナム語や英語を使用して交流し、語学のレベルアップを図った。今年度後期はベトナムやフィリピン、カンボジア、ジョージアからの交換留学生が訪れる予定で、英語を主体に国籍の違いや言葉の壁を乗り越え、学生のコミュニケーションの幅を広げていく。
同大学は、変化が激しく予測困難な(VUCA)時代を生き抜いていく上で必要なマインド・スキル「グローバルキャリア」を掲げており、必ずしも海外留学する学生を増やすことではなく、グローバルなマインドを持った人材の育成や、海外も視野に入れたキャリア観の育成を進めている。
これに伴い、海外の大学や短大の協定校は10年前に比べ約6倍の63校(令和6年度)に急増し、女子大学ではトップクラスとなった。
海外留学者数はコロナ明け以降、年間200人前後となっており、今年度は320人、令和10年度には450人と倍増を目指している。
国際交流推進課は「留学に興味がない学生たちにも、語学の上達だけでなく、何らかのグローバル体験を通して、自己肯定感を高め、人生に役立つスキルを一緒に培っていきたいと考えている。グローバルラウンジは、私たちが進めるグローバルキャリアを実現するためのランドマークにしていきたい」との考えを示している。