第2回高校教育振興懇談会開く

「高校教育改革基本方針」を審議

3校のパイロットケースを創出して域内の公立に普及

私立高巡る状況、正確な理解要請

文部科学省の「高等学校教育の振興に関する懇談会(座長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は12月10日、WEB会議方式で第2回懇談会を開催した。

議題は、「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン=仮称)の骨子」についての審議。

このグランドデザイン骨子は、自由民主党、日本維新の会、公明党の3党で構成する「無償化を含む、多様で質の高い教育の在り方に関する検討チーム」が10月29日に合意した令和8年度から開始する高校教育等の振興方策の制度設計などを考慮し、文科省が省内に設置した、人材育成システム改革推進タスクフォース(TF:政務3役、事務次官、各局長等で構成)で議論・作成し、11月28日に公表したもの。骨子なのでA4判で4ページとごく簡潔なまとめ。

骨子などについて説明した橋田裕・初等中等教育局参事官(高等学校担当)は、初めにTFに触れて社会変革を見据えた徹底した高校教育改革、大学教育の構造改悪、産業イノベーション人材の育成を強化する仕組みの創設を議論していることなどを説明、グランドデザインについては関係者から意見聴取して、令和7年度中に策定する予定であること、高校改革の方向性については、(1)AIに代替されない能力や個性の伸長、(2)我が国の社会・経済の発展を支える人材育成、(3)一人一人の多様な学習に対応した教育機会・アクセスの確保―の3つの視点を定めており、これらを踏まえ、例えば理系人材の育成や専門高校における人材育成等に関する目標設定を検討していきたい、などと語った。

国のグランドデザインを踏まえ、都道府県が「高等学校教育改革実行計画」を策定、安定財源を確保した上で、令和9年度に新たに創設する「高等学校教育改革交付金=仮称」等により支援する方針。実行計画の策定は首長や関係部局等の意見も聞いて策定するよう求めているが、同省では都道府県教育委員会が中心となることを想定している。骨子に都道府県の判断で私立高校の取り組みを記載することも可能としているが、グランドデザイン等は私立高校授業料軽減の充実によって公立高校の生徒募集が厳しくなる、と言われており、そのテコ入れ策が発想の原点だ。

令和9年度の新交付金創設に先立って、令和7年度補正予算案(国会で審議中)に盛り込まれた産業イノベーション人材育成等に資する高等学校教育改革促進事業等(予算額2955億円)は、(1)アドバンスト・エッセンシャルワーカー等育成支援(課題解決能力の獲得に向け、探究的・実践的な学びの積み重ねや深まりのある学び)(2)理数系人材育成支援、(3)多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保―の3類型においてパイロットケース(校)を創出し、域内の高校に普及する方針。

第2回懇談会では委員から3千億円近い補正予算額の配分についての質問があり、文科省はあくまで中身を精査した上で決めたいとしたが、単純に計算するなら1県当たり人件費、施設・整備費、民間による伴走支援も含め60億円(パイロット校3校)と回答。同事業による支援期間は3年程度なので、1県当たり1年20億円と計算できる。

また同懇談会の荒瀬座長は都道府県立以外の公立高校(市立高校等)への支援の重要性も指摘しており、同事業がパイロットケースの創出を目的として限られた高校に資金を集中投下する方式であることを考えると、同事業で私立高校への支援は、ハードルが高いといえそうだ。このほか公立高校の高専化についても大学関係の補助金を活用して実現する方針で、国立大学が全面的に支援することなども説明された。

そのほか懇談会委員からは、「物を買うだけで終わらないようにしてほしい」「AIに代替されない能力の伸長という記述を止めて、AIの使い方が大事、とならないか。小中学校の理数の授業を増やす必要がある」「経済が前面に打ち出されている。人権や多様性、包摂といったことを根底にすべきだ」「選ばれた3校はいいが、生徒が集まらない学校は救われない。全ての学校が生き残れるように是非考えてほしい」「数ⅢCをしっかり教えられる学校であってほしい。理系教員のスキルアップを大学院などで行ってほしい」「教員の募集や高校入試改革等の面で、OSである教育委員会のアップデートも必要。実行計画づくり、評価づくり、伴走支援にも予算が使えるようにしてほしい」などの意見が出された。

都道府県の高等学校教育改革実行計画は、骨子中にもあるように「主として公立高校の取り組みを記載していることを想定している」ことから、日本私立中学高等学校を代表して同懇談会の委員を務める長塚篤夫・順天中学校・高等学校長は、懇談会の最後に発言し、「グランドデザインと言うなら、私学の役割や私学が多様な教育を行っている意義、改革に対する認識、メッセージがあっていい。私学は高校生の4割を占め、半数は大学の系列校。今回のプランの引き金になったいわゆる高校の無償化では事実確認が不足している点が2つある。高校が生徒1人にかける教育費は公立が132万円、私学は107万円で、私学の107万円のうち65万円が保護者の負担額、その6割が無償化されるということで完全無償化ではない。また私立高校で1人当たりの教育費が向上するものではなく、私学が豊かになる、教育の質を上げる資金が増えることはない。さらに私学への進学者が増えるように思われているが、この20年間を見ても、公立高校は260万人から180万人になり80万人減少、私立は110万人から100万人になり10万人減少、最新のデータでは99万人となっており、この間増えているのは広域通信制高校だ」と語り、改めて正確な情報に基づく審議等の重要性を強調した。近年、私立学校の保護者に対する授業料軽減措置は東京都や大阪府を中心に徐々に全国に広がっており、軽減額も増加する傾向にある。しかしその一方で私立学校振興助成法の主目的である私立学校の経常的経費に対する地方自治体の補助は先細りする傾向であり、また様々な価格が高騰する中にあって授業料の引き上げに厳しい目が向けられており、私立学校は厳しい運営を強いられている状況だ。