文科省予算額1兆6,091億円

令和7年度補正予算案閣議決定
高校教育改革に3千億円
成長分野をけん引する大学・高専機能強化に200億円
政府は11月28日、令和7年度補正予算案を閣議決定した。高市内閣の「総合経済対策」(国の財政措置等は25兆5千億円)を実現するための予算で、このうち文部科学省関係の予算額は総額で1兆6091億円に上り、令和7年度当初予算額5兆5094(一般会計)の約30%に当たる規模だ。
文科省の補正予算案の柱は、総合経済対策の三本柱である、(1)生活の安全保障・物価高への対応、(2)危機管理投資・成長投資による強い経済の実現、(3)防衛力と外交力の強化のうち、(1)と(2)を事業の柱にしている。
このうち(1)の生活の安全保障・物価高への対応では、公教育の再生が主要な事業。その中では、「高等学校教育改革の推進(基金を含む)」(予算額3009億円)、「GIGAスクール構想の推進等(基金を含む)」(同742億円)、「不登校・いじめ対策等の推進」(同4億円)、「学校における保護者等への対応の高度化」(同2億円)、「教師の新たな入職モデルの創出」(同1億円)、「部活動の地域展開等の全国実施の加速化」(同82億円)、「学校給食費公会計化等の推進」(同42億円)、「全国学力・学習状況調査のCBT化等」(同6億円)、「教育DX環境を支える基礎ツールや各種システムの整備・活用」(同17億円)、「幼児教育の質の向上」(同32億円)、「外国人等に対する日本語教育の推進・外国人児童生徒等への教育等の充実」(同4億円)といった事業等を予定している。
この中で最も大きな予算額「高等学校教育改革の推進」の中の98%を占めるのが「高等学校教育改革促進基金の創設」。
いわゆる高校の無償化実施に伴い私立高校への進学者の増加が見込まれる一方、地理的アクセスを踏まえた多様な学びの場の確保や、地域の経済社会を支えるエッセンシャルワーカーの不足、特に理系人材の不足が懸念され、産業イノベーション人材の育成が重要となる中で、文科省が都道府県に事務費も含め基金造成経費を交付、類型に応じて高校教育改革を先導する拠点のパイロットケースを創出し、取り組み・成果を域内の高校に普及するという取り組み。
支援対象は主に公立高校、専門高校で、ITスキルを身に付けた「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」等の育成支援や、「理数系人材育成支援」、「多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保」の実施が想定されている。この事業は公立高校が対象としたものだが、県の「高等学校教育改革実行計画」に私立高校の取り組みを記載することも可能の予定だ。高校教育改革のグランドデザインは令和7年度中に策定される予定で、それを踏まえ都道府県の「実行計画」が策定され、安定財源を確保した上で令和9年度に創設される「高等学校教育改革交付金(仮称)」等により支援が行われる予定。令和7年度補正予算の約3千億円はそうした方針の先行実施で、3年程度の支援を想定している。
また高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)事業の継続に52億円が計上されている。これは公私立高校が対象で新規採択校は100校、既に約1200校が指定を受けており、高校段階におけるデジタル等成長分野を支える人材育成を目的としたもので、新規採択校には1000万円、指定2年目の学校には500万円(重点類型は700万円)、3年目の学校には300万円(同500万円)を補助、大学での文理融合教育や理系教育に繋げていく方針だ。「GIGAスクール構想の推進」(685億円)は国公立学校、日本人学校等に向けた支援措置で、私立学校については令和8年度予算で要求中としている。
一方、(2)の危機管理投資・成長投資による強い経済の実現では、「大学病院の機能強化・経営環境改善」(予算額349億円)、「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化【基金】」(同200億円)、「私立学校における産業人材育成機能の強化等」(同146億円)、「私立学校の防災機能強化等」(同116億円)のほか科学技術関係の支援事業を数多く設けている。
このうち大学病院機能強化推進事業は、昨今の物価や人件費の高騰等の影響を受けて、令和6年度に国公私立大学病院で過去最大(508億円)の赤字を出し、令和7年度も更なる悪化が予想され地域医療の崩壊など、社会全体に影響を与えかねない事態にあるため、増収減益の経営から脱却、大学病院改革プラン等に基づき病院運営の構造転換を図る大学病院に対し、診療報酬では補填されていない教育・研究に質を高めるために必要となる経費の一部を支援するもの。主な支援内容は、高度医療を担う人材の育成や、臨床研究体制の整備等、大学病院の構造転換の促進に必要な経費、教育・研究環境の充実に必要となる最先端の医療機器、教育・研究に係る情報システム費等で、64カ所程度の採択を想定。補助単価は1カ所5億円程度。
また「大学・高専機能強化支援事業」(成長分野転換基金)は、将来の社会・産業構造変化を見据え、大規模大学も含めて成長分野への学部転換・半導体等の重点分野の人材育成を一層強力に推進するもの。支援内容は、(支援1)学部再編等による特定成長分野(デジタル・グリーン等)への転換等と、(支援2)高度情報専門人材の確保に向けた機能強化で、支援1では新たに大規模大学を含め、文理横断の学部再編等を対象にした支援枠を新設し、必要な経費40億円程度(支援1の支援上限額の倍)まで支援する。
具体的には施設設備等の上限額を引き上げ、支援対象経費に「新設理系学部の教員人件費」「土地取得費」等を追加。大学院の設置・拡充、産業界との連携を実施する場合に助成率を引き上げ、文系学部の定員減を要件化、既存の文系学部の教育の質の向上に向け、ダブルメジャーを導入するなど高度なレベルの文理融合教育を実施する場合も支援対象とする。支援1と支援2の支援対象は、公私立大学の学部・学科(理工農の学位分野が対象)、原則8年以内(最長10年)支援、令和14年度まで受け付け。支援2では、これまでの高度情報専門人材の育成に加えて、AI、半導体、量子、造船、バイオ、航空等の経済成長の実現に資する重点分野に係る高専等の学科・コースの設置等に伴う体制強化に必要となる施設・設備整備費、教員人件費等10億円程度まで支援する。情報系分野の高専新設・転換の場合、上限額は20億円まで引き上げられる。支援対象は国公私立の大学(大学院段階)・高専で、最長10年間支援、令和10年度まで受け付ける。
また私立学校の防災機能強化等に116億円が計上されている。この中には私立幼稚園の施設整備支援20億円が含まれている。今年6月に閣議決定された第1次国土強靱化実施中期計画(2026年度~2030年度)に基づいて大規模地震発生時の安全確保や熱中症による事故を防止するため耐震対策や空調設備等の整備を推進する。
私立学校の5割は指定避難所となっており、8割の私立大学等は地域住民の受け入れや備蓄品の提供など防災拠点としての活動を予定していることから、校舎や体育館等の構造体の耐震化や非構造部材(吊り天井・外壁等)の耐震対策、避難所機能の強化策としてバリアフリー化(多目的WC、スロープ等)、自家発電設備、熱中症対策として空調設備・換気設備、学校安全対策として防犯対策(カメラ・門・フェンス等)、アスベスト対策等を進める。補助率は大学等が2分の1以内、高校等が3分の1以内だが、一部補助率の嵩上げがある。同中期計画では私立学校施設の構造体の耐震対策完了を令和10年度と見込んでいる(令和4年度現在、実施済みは93・8%)。このほか今年夏の豪雨災害、令和6年度能登半島地震で被災した私立学校施設の災害復旧費等への補助30億円も計上されている。


