教師や企業の退職者、教員に積極活用

文部科学省 令和8年度概算要求

移住支援も組み合わせ教師人材を共有

高校教育改革の実現は事項要求

文部科学省は8月29日に令和8年度概算要求を公表した。前号では高等教育関係の主な新規要求事業を紹介したが、今号では初等中等教育関係の主な新規要求事業を報告する。新規要求事業には多様な優れた人材を教師として確保する事業や情報活用能力の抜本的向上に資する実践研究、専門高校等への支援、不登校児童生徒の保護者等への相談支援体制強化、キャリア教育プラットフォーム形成支援等の事業が含まれている。

▽「多様で優れた人材の教師入職総合支援事業」=要求額2億円。

この事業では、(1)教師への入職を支援する新しいモデル開発や、(2)就職氷河期世代の教師入職を含む教師確保に資する研修や広報を実施する。

(1)は退職教員等が非常勤講師等として一時的な教師の不在を、地域内の学校を兼務する形でフォローする「日本版サプライティーチャー」導入の可能性(任用上・実務上の課題等)を調査、検討する。また教師が不足している地域に人材供給を行うことを目指して、主に教師や企業を退職した者を対象に、現在居住している地域以外で教師として入職するモデル(移住支援と組み合わせた、自治体を超えた教師人材シェアリング「トラベルティーチャー」)開発を行う。更にそうした実証事業の成果の周知も含め教師人材確保に関する各種取り組みの情報発信の強化を行う。事業規模は1億円で、民間企業や教育委員会等に委託する。委託件数は1件(4件の実証を実施する)。(2)は各自治体に対しより実践的な研修内容や入職後のフォロー等を含む、現職以外の教員免許保有者向け研修の強化を支援、促進する。また優秀な人材を獲得するためには社会全体で教職の価値・やりがいが共有されていくことが不可欠なため、NPO、民間企業等による、教職への関心を高め、意欲を喚起する取り組みの支援を行う。事業規模は700万円。

件数は30箇所で補助率は1/3。対象は(1)と同じ。

▽「学習指導要領改訂を見据えた情報活用能力の抜本的な向上」=要求額8億円。内容は(1)情報活用能力育成のための実践研究と情報活用能力調査(要求額4億円)、(2)動画教材・研修コンテンツの充実、情報モラル教育推進事業(同3億円)、(3)中学校技術科の複数免許取得促進を目的として、全国の免許法認定講習受講希望者がオンラインで負担なく受講できるようにするため、拠点大学における認定講習プログラムの開発・運用や環境整備を支援。またオンラインでは実施できない実習等を伴う一部課程については、全国の会場で対面により実施することとし、その際の指導を補佐する連携大学への支援を実施する。(同0・5億円)、(4)情報領域を専門とするような民間企業等の外部人材が、中学校技術科・高校情報科の指導者として参画する仕組みを検討、外部人材活用の手引き作成により質の高い授業が実施されるよう支援する(同0・2億円)。

▽「校務DX等加速化事業」要求額=3億円。事業内容は、(1)今の環境で出来る校務DXの推進、(2)環境整備を伴う校務DXの推進、(3)個人情報保護の徹底を含めた教育現場の情報セキュリティー対策。

校務DXを通じた働き方改革の加速が求められている中で、(1)では各学校・教育委員会が参考にできる取り組み事例の創出・横展開、効果検証を踏まえた「校務DXチェックリスト」の改善・周知、教育委員会間で情報を共有・交換できるイベントの実施を目指しており、(2)では次世代型校務支援システムの仕様書の作成や調達プロセス等について、教育委員会が常時相談できる相談窓口の設置、次世代型校務支援システムの調達時に、教育委員会と一緒に仕様書を作成するなど、技術的な知見を有した専門人材の派遣を行う。(3)では教育情報セキュリティーに関するガイドラインの改訂、情報データの利活用に係る留意事項の改訂を行う。同省が民間企業等に委託して教育委員会・学校を支援していく。

▽「高等学校教育改革の実現」=要求額は示さず事項要求。自由民主党、公明党、日本維新の会の3党合意に基づく高校無償化に関する論点整理(今年6月11日)で公立高校(専門高校を含む)などへの支援の拡充を含む教育の質の確保として、国が示す基本方針「高校教育改革に関するグランドデザイン(仮称)」を踏まえ、都道府県が作成する計画「高校教育改革実行計画(仮称)」に基づく高校教育改革や施設の老朽化対策等の教育環境の整備を計画的かつ円滑に実施できるよう交付金等の新たな財政支援により支援づくりが必要とされており、また多様な教育機会の実現として、探究・文理横断・実践的な学びの充実、グローバル人材やDX・AI・半導体・コンテンツ産業等の人材育成、産業界の伴走支援による専門高校の機能強化・高度化、普通科改革を通じた高校の特色化・魅力化を図るための支援の必要性が指摘されており、また今年の政府の骨太の方針2025でも、「いわゆる高校無償化については令和8年度予算の編成過程において成案を得て、実現する」等が打ち出されている。

これとは別に専門高校に関しては、二つの新規事業が要求されている。

▽「ネクスト・マイスター・ハイスクール事業」=要求額6億円。

産業界の伴走支援を受けながら、(1)即戦力エッセンシャルワーカーの育成、(2)高等教育と連携し(進学を見据えて)高度専門人材を育成、(3)宇宙、観光ビジネス、造船、土木、伝統建築物の保存・修理など特定分野に特化した専門人材の育成といった専門高校運営モデルを構築(47カ所、単価約1千万円、委託先は地方公共団体、学校設置者)、その成果検証・実態調査、広報を民間事業者に委託する計画。

▽「専門高校のための広域教師等人材バンク構築支援」=要求額2億円。専門高校へ専門人材を派遣するために体制構築、産業界と教育界との人的資源の好循環モデルを構築する。民間団体等に委託する。