東京薬科大学の取り組み

都下ワイナリーとのコラボでワインを開発

地域資源活用した発酵技術の社会実装等に貢献

東京薬科大学(東京都八王子市)はこのほど、都下ワイナリー㈱(東京都日野市)と共同開発した「東京薬科大学『東薬・花の酵母』の白ワインTOKAwinery azami」が完成した。

同社は平成20年の設立以来、東京都多摩地区の醸造所として、さまざまなワイン造りを行っており、地域食材や学術研究との連携を生かしたワインの開発にも力を入れている。

「TOKAwinery azami」には、同大学生命科学部食品科学研究室(担当:志賀靖弘助教)が推進する「東薬・花の酵母」プロジェクトで、平成28年秋に同大学キャンパス内から最初に単離されたアザミ由来の酵母が使用されている。この酵母は、単離当初から高い香り成分生成能力を示しており、同研究室内でも「いつか商品化を」と期待されてきた菌株。

アザミ類はキク科アザミ属に属する多年草で、春に花を咲かせる「春咲き」タイプと、秋に花を咲かせる「秋咲き」タイプがある。今回のアザミ酵母の単離源となったのは、タイアザミ(大薊)Cirsium comosum (Franch. et Sav.) Matsum.という、関東地方に普通に分布する種類で、花は「秋咲き」タイプになる。

アザミには「独立」や「厳格」などの花言葉がある。また、タイアザミの「タイ」は「大きな花を咲かせること」が由来(諸説あり)とも言われていることから、大学発のワインに、ふさわしいイメージの花となっている。

今回の初醸造では、スペイン産の白ワイン用品種「アイレン」の濃縮果汁を使用し、色調は濃いゴールド、アルコール度数10・5%とやや軽めで、ほのかに香る花とフルーツの香り、すっきりした甘みとやわらかな酸味が特徴のバランスが良い白ワインに仕上がった。

志賀助教は「今回、ワイン醸造に使用したアザミの酵母は、私たちの『東薬・花の酵母』プロジェクト開始後、最初に単離された記念すべき酵母菌株であるため、個人的に思い入れが非常に強く、また単離当初から非常に良い香りを出していた系統ということで、いつか世に出したいとずっと考えていた。今回、都下ワイナリーとのコラボレーションによって、おいしいワインという形で届けられることを大変喜んでいる」とコメントしている。

同社は「ワイン造りにおいて、酵母選びは極めて重要であり、選ぶ酵母で仕上がりは全く違うため、造り手のセンスはここに出ると言っても過言ではない。弊社にとって今回のプロジェクトはまさに挑戦であり、志賀先生をはじめ、生命科学部食品科学研究室の長年にわたる研究と努力が、一つの結果となる重要なプロジェクトであると感じている」と述べている。

両者は、今回の成功を足掛かりにして、今後も「東薬・花の酵母」プロジェクトに基づくコラボワインの開発を継続していく予定。アザミ以外の花から単離した酵母を用いた商品や、チリ産「ペドロヒメネス」など、他品種のぶどうを使った醸造の検討も進められている。

さらに将来的には、日野市・多摩地域産のぶどうを使用したストレート果汁100%の「地ワイン」開発を目標に、地域資源を活用した発酵技術の社会実装と、地域食文化の発信に貢献していく方針だ。

なお、「TOKAwinery azami」は初回生産数約250本の限定醸造。税込み・送料別途1870円/本(内容量750ミリリットル)で、都下ワイナリー直販、通信販売、イベント販売、アンテナショップでの販売などが行われている。

 詳細は、同社のホームページ(https://www.tokawinery.jp/)まで。