私大団体連 私大振興協議会(拡大)開催

国会議員と教育投資など議論
私大を核とした地方創生推進も
日本私立大学連盟と日本私立大学協会で組織する日本私立大学団体連合会(会長=田中愛治・早稲田大学総長)は2月17日昼12時から1時間、都内のホテルで「私立大学の振興に関する協議会(拡大)」を開催した。
同協議会は歴代の文部科学大臣、副大臣、大臣政務官、文部科学部会長(自由民主党)と私大団体連の役員等をメンバーに、私立大学への理解と支援を得ることを目的に、平成29年3月に設置された組織。今回はより多くの議員の理解を得るため協議会メンバーに加え、自民党の文部科学部会、税制調査会、科学技術・イノベーション戦略調査会等に所属する文教関係議員を迎え拡大開催した。当日は、国会開会中だったが、衆参両院から議員本人23人、代理出席25人が駆け付け、私大団体連が提案した「新たな公財政支援のあり方について」や「私立大学を核とした地方創生の推進―人口急減期における私立大学への支援強化―」に耳を傾けた他、議員本人からは教育への投資拡大が必要なこと、近年、私立大学で発生した不祥事について、「私立大学は襟を正してほしい」「大学の定員問題をどう考えているのか」などの意見が出された。冒頭、私大団体連を代表して田中会長が挨拶し、年内に入試を行う場合は調査書や面接等で総合的に判断する必要性があるが、同時に基礎学力の確認には大学入学共通テストをできれば9月頃に前倒し実施し、それぞれの大学が受験生についてどの程度の基礎学力があるのかを確認できればいいのであって、1点を争うようなことから脱却すべきだと語った。また議員を代表して遠藤利明・衆議院議員があいさつし、「大学無償化の議論があってもいい。卒業後、税金で返してもらうといった思い切った発想の転換が必要だ」などと語った。
その後、私大側が提案した「新たな公財政支援のあり方について」は日本私立大学連盟が昨年8月に発表した構想で、プロジェクトチームの担当理事を務める曄道佳明・上智大学長(私大団体連副会長)が説明した。
我が国の学生の8割の教育を担う私立大学がどれだけ質の向上を図れるのかが、国民全体の能力の総和の増減に大きく関わり、天然資源を持たない我が国は、「大学教育」を将来の社会発展に向けた人的投資と捉え、「教育国債」を創設するなど財源を確保していくべきで、国公私立大学の設置形態に関わらず、大学の質を上げていくための公平な競争環境を整え、協調と競争を促していくことが必要と指摘。知の総和を高めることで税収増・経済成長を実現していくべきだと説明した。
国立大学と私立大学に対する機関補助(合計約1兆7千億円)と現在の個人補助(約5千億円)に、新たな財源(教育国債約2兆円)を加えた約4兆2千億円(授業料は含まず)を、私大経常費補助金・施設設備費等に約1兆円、国立大学については運営費交付金等を約1兆3千億円とするも授業料の柔軟化により増収を図り、その上で新たなスキームで個人補助を、現在の支出額(約5千億円)の4倍近い水準(約1兆8千億円)に拡大すること、税制面では教育費に係る家計負担軽減と納税者間(国私学生家計支持者間)の不平等の是正、寄附の促進等を提言している。
また「私立大学を核とした地方創生の推進」の提案は、日本私立大学協会が提言したもので、同協会会長の小原芳明・玉川大学理事長・学園長(私大団体連副会長)が説明した。基本的考え方としては、労働力人口の減少に直面する中で、一人一人の生産性を向上させるためには学部学生数の約80%を担う私立大学の役割がますます重要で、地方創生政策に係る地域振興策は地域の特性に基づき、多様な価値追求によって地域を牽引するリーダー及び中間層を育成する私立大学を核としての推進が期待されており、国による支援(公財政支出の拡充と私立大学等経常費補助金による2分の1補助の早期実現、国私間の公財政支出格差是正による公正な競争環境の確立)をはじめ、地方公共団体による支援(地方交付税交付金を含む助成金の私立大学への積極的な支出)、個人等からの寄附による支援(寄附税制の改善)により財政基盤の強化を図ることは喫緊の課題だ、と語った。
こうした提案や国債を活用しての教育への投資拡大については複数の議員から賛意が示された。また連日、与野党間で議論が続けられている高校の授業料無償化を取り上げる議員もいて新年度予算成立の駆け引きに使われており、長期的なビジョンに立たないと、既存の研究開発のための基金の取り崩しにもつながる恐れがあること、私立大学での不祥事に関しては、私大団体が廃校を考えている大学の相談相手になることも考えてほしい、といった意見が出された。
また議員から「大学の定員問題をどう考えているのか」といった質問もあり、田中会長は、「問題は設置審の在り方で、必要要件を満たしている限り認可しないといけないということはもう止めてほしい。地方も首都圏も、関西圏もそれぞれの所でいい学生をしっかり育てる必要がある。それに見合うような大学には設置して結構だが、基準を甘くしながらどんどん大学という名称を付けることは好ましくない。逆に言えば私立大学の責任は非常に大きい。しっかり学び世の中に出て行くことが重要で、文理を分けた教育も問題だと思う。努力して変わっていく大学は学生を集めることができて、教育効果が上がる。そうでないところには退場してもらうしかない」などと答えた。