高校教育の在り方WGが審議終結

広域通信制になお課題との認識
引き続き高校教育の在り方など検討の場要望
中央教育審議会初等中等教育分科会個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の「高等学校教育の在り方に関するワーキンググループ」(主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は1月31日、文部科学省でオンラインも併用して第16回会議を開いた。
この日は、令和4年11月から16回にわたる審議のまとめ案について最終的な検討を行い、委員からは様々な意見や要望等が出されたが、文言の修正等については荒瀬主査に一任することが了承され、約2年2カ月に及んだ審議が終了した。
最終回のWGでは、委員からとりわけ広域通信制高校・連携協力施設での教育になお課題が見られることを指摘する意見が聞かれ、引き続き、高校教育の在り方や広域通信制高校について改善策を検討する場を求める声が荒瀬主査を含め複数委員から上がった。全国で教育を展開する広域通信制高校を認可県だけで管理するのはそもそも無理との意見も聞かれた。
また全国高等学校長協会会長の内田隆志委員(都立三田高校校長)も公立高校、私立高校とも、広域通信制高校での入学者選抜の早期化により中学生が数多く通信制に流れていること、背景には安易な学校選択や保護者が藁にもすがる思いで広域通信制高校を選択していることがあること、しかし通信制に馴染めず、通学制に戻る例も最近出ていることも報告した。
別の委員は私立高校に関して入学後にどの程度の経費が必要となるのか、もう一段踏み込んで学校側に公表を促す必要性を指摘、私立高校への支援が充実する中で、公立高校への支援が疎かになっているとし、公立高校に関してスクールバスなどの通学手段の確保が必要なことについて国として設置者にメッセージを出すことを求めた。
同WGに日本私立中学高等学校連合会を代表して出席していた長塚篤夫委員は書面で意見を提出、通信制高校に関して認可県による認可時だけでなく、認可県外に通信教育連携協力施設を設けた後も、引き続き当該施設を認可県の認可基準を参酌し、適切な運営がなされるように、過去に遡及して常に見直していくことや、高度で多様な専門的知見を有する人材の意義を十分に受け止めて特別免許状の授与権者である都道府県教育委員会が積極的に取り組むことを要望した。
同WGは令和4年11月に初会合を開いて以降、高校教育の在り方(「多様性」と「共通性」の観点からの検討)、少子化が加速する地域における高校教育の在り方、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方、社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断・実践的な学びの推進についてヒアリング等も行いながら検討、令和5年8月31日に中間まとめを公表。今回の審議まとめは、中間まとめをベースに大幅に加筆等を行ったもので、審議の中で提言された具体的方策を国と学校・設置者等に分けて整理した一覧表も掲載しており、少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方に関しては、国に、都道府県の枠組みを超えた複数の高校により構成されるネットワークの構築、生徒同士の学び合いの深化、ネットワークの定着・自走に向けてのノウハウ等の構築や優良事例の創出・普及促進等を求め、学校・設置者等には必要に応じて、地域や学校を超えた生徒同士のつながりを可能にした上で、総合的な探究の時間等の充実を求めている。
全日制・定時制・通信制の望ましい在り方に関しては、国に対して学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置促進、通信制課程の質の確保・向上に向けて必要な取り組みの実施、通信制課程に係る私立高等学校の認可基準(標準例)を踏まえた所轄庁における設置認可等の状況についての把握、通信教育連携協力施設を含め実施校(本校)が法令等に則り適切に情報提供を行うよう継続的な働きかけの実施、公立の通信制高校等の機能強化、学校間連携等の促進等を求めており、学校・設置者等には、高校入学者選抜の見直し、通信制高校については法令等を踏まえた教育活動の実施、所轄庁において適切な設置認可等の実施、積極的な公立学校間連携等のネットワークを構築し、安定して登校することが難しい生徒の学びの保障、学期ごとの単位認定や単位制への移行の検討等を求めている。
社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断・実践的な学びの推進に関しては、国に高校段階における生徒の理数系教育への興味・関心の一層の向上、産業界等と専門高校の連携・協働の強化、取り組みの横展開、DXハイスクールの拡大等を求め、学校・設置者には、制服や体操服、学習者用端末等の購入費用の低廉化、高校入学後に発生する授業料以外の費用負担について早期に高校ごとの公表の実施等を求めている。