中教審第15回質の高い教師確保特別部会

教員を取り巻く環境整備関係予算案など説明

働き方改革や休職者数の報告も

文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会の質の高い教師の確保特別部会(部会長=貞広斎子・千葉大学教授)は1月24日に同省で第15回部会をオンラインも併用して開催した。文科省から教員を取り巻く環境整備関係の令和7年度予算案の報告があった。

「令和の日本型学校教育」の実現に向けた教育環境整備(義務教育費国庫負担金)に1兆6210億円を計上。小学校の教科担任制の拡充、中学校の生徒指導担当教師の拡充、小学校の35人学級のための教師の定数増、教職調整額の改善、一律支給されている義務教育等教員特別手当の見直しなどに充てられる。

また、保護者や地域からの過剰な苦情や不当な要求など学校だけでは解決が難しい事案への支援体制の構築に1億円。学校管理職OBなどによる学校問題解決支援コーディネーターを教育委員会に配置し、弁護士、スクールソーシャルワーカーなど専門家の意見を聞きながら解決案の整理・提示を実施する。学校の支援スタッフの配置支援に121億円を計上。教員業務支援員の拡充、副校長・教頭マネジメント支援員の配置などに充てる事業も行う。

そのほか新規事業として、校内教育支援センターの設置を促進し、スクールカウンセラーなどと連携し、不登校児童生徒を支援する支援員を配置する事業に4億円、部活動の地域クラブ活動への移行に向けた実証事業に16億円、中学校への部活動指導員の配置支援に18億円を計上した。

いじめなど学校が対応する課題の多様化・複雑化、若手教師の増加などに対応するために教諭と主幹教諭の間に創設する「新たな職」や、教職調整額の段階的に引き上げ(令和12年度までに10%に引き上げ、令和7年度は5%)などのための給特報等の改正が予算措置と共に講じられる。

また、教師の働き方に関する2件の調査報告もあり、「令和6年度教育委員会における学校の働き方改革の取組状況調査」では、令和5年度の時間外在校等時間は、月45時間以下の割合が小学校で75%、中学校で58%、高校で72%。中学校では月45時間を超える教師は4割以上あった。

昨年8月の中教審緊急提言の指摘事項の改善は全ての項目で実施率が上昇したが、時間外在校等時間・その縮減の取り組み状況の公表、業務改善に向けたPDCAサイクルの構築は自治体間で実施率に格差が見られた。

都道府県・指定都市の教育委員会を対象とした「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査」では、教員などの精神疾患による休職者数は7119人、令和4年度と比べ580人増加し、過去最多となった。休職の理由は児童生徒への指導に関するもの、職場の対人関係が多かった。

令和6年度公立学校教員採用選考試験の実施状況も報告された。全体の採用倍率は3・2倍で、前年度の3・4倍から低下し、過去最低となった。

受験者総数は11万5619人で、前年度から5344人減少。採用倍率の低下は定年による大量退職に伴う採用者数の増加と既卒の受験者数の減少によるところが大きいと分析している。

報告を受けて論議が行われ、教師の確保に関しては「対策を講じてすぐに教師が増えるわけではない。教師の仕事のすばらしさをアピールしていくことも重要である」「ライフプラン、キャリアプラン関する資料を作り、教師を目指す大学生や高校生に提示してはどうか」などの提案があった。「教員加配で採用が増えているが、大学側としては教職大学院までいってもらい丁寧に育てたいという思いがある。しかし教育委員会からは早く送り出してほしいと言われる」との意見もあった。働き方改革に関しては「PDCAを回すことが目標にならないようにしなければいけない。教育委員会からの過度なプレッシャーは避けたい。うまく回せない学校は困っている学校なので、支援を必要としている」などの発言が出された。