大学分科会・高等教育の在り方特別部会を開催

我が国の知の総和の向上目指して

「答申案」を取りまとめ、中教審総会に提出へ

中央教育審議会の大学分科会(分科会長=永田恭介・筑波大学長)と高等教育の在り方に関する特別部会(永田恭介部会長)の合同会議が1月28日、文部科学省でWEB会議も併用して開催された。この日は、同特別部会が中心となって約1年2カ月審議してきた答申案について審議、さまざまな意見が出たが、最終的な修正については永田分科会長・部会長に一任する形で議論を終えた。答申案は中教審総会で了承を得た後に文科大臣に答申される予定。大学分科会+特別部会の会議の最後に文科省から答申を受けて早急に政策パッケージを作成し実行に移していくこと、大きな制度改正を伴う提案に関しては、来期(第13期)の中教審大学分科会等の意見を丁寧に伺いつつ、スピード感をもって取り組んでいく方針が説明された。

政策パッケージには、今後10年程度の工程が盛り込まれる予定。

答申案は前回会議から大きな変更箇所はないが、答申案のタイトルが、それまでの「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」から「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」と変更になった。少子化という消極的なイメージから知の総和の向上を通じて国内外の社会課題の解決に向けた積極的な思いを込めたものだ。答申案の中では高等教育政策の目的を「質」の向上、「規模」の適正化、「アクセス」確保とし、教育研究の「質」の更なる高度化に関しては、学修者本位の教育の更なる推進、多様な学生の受け入れ、大学院教育の改革、研究力の強化、情報公表の推進を打ち出しており、また「規模」の適正化に関しては、高等教育機関間の連携推進、厳格な設置認可審査、再編・統合の推進、縮小や撤退への支援、高等教育の「アクセス」確保に関しては、地理的観点からのアクセス確保では地域構想推進プラットフォーム(仮称)や地域研究教育連携推進機構(仮称)の創設、地方創生の推進を、他に個人の経済的支援の充実、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)解消促進等を提言。

また機関別・設置者別のうち短期大学に関しては専攻科修了者の進学ニーズを踏まえた制度改善が、国立大学に関しては学部定員規模の適正化(修士・博士への資源の重点化等)、私立大学に関しては規模の適正化の推進(設置認可厳格化、再編・統合、縮小、撤退の支援)を、さらに財政面では短期的に公財政支援を充実、中長期的には教育コストの明確化、負担の仕組みの見直し、新たな財源の確保等を進めていく方針。 1月28日の合同会議では、答申案の審議に先立って(1)認証評価機関の認証、(2)日本の学位・称号等の枠組み(案)について、(3)専修学校適格専攻科修了者への大学院入学資格の付与が審議された。(1)は非公開で審議され(本紙3面参照)、(2)これは高等教育の資格の相互承認等を行うことにより、学生及び学者の移動を容易にし、高等教育の質を改善する目的で複数の国等で締結されている規約。ユネスコの「高等教育の資格の承認に関する世界規約」やアジア太平洋地域の「東京規約」などがある。東京規約では各国は国内情報センターの設置を求めており、日本では独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が高等教育資格承認情報センターを設置、小学校から博士課程までレベル分けした表を作成しているが、同省から中教審大学分科会として了解するかと問われ、委員から「高等教育以外の学校種もあるので、生涯学習分科会での審議が適当ではないか」「修業年限等ではなく、今や欧米で広く行われている学習成果の明記が必要だ」「学校種に関して認証評価がされているか、義務化されているかをもっとはっきり発信すべきだ」といった意見が出された。日本の教育の資格枠組みは不断の見直しを行うことを前提に同分科会で了承された。また一定の要件を満たす専修学校専攻科の修了者に大学院入学資格を付与するのにあたりしっかりとした質保証を求める意見が委員から出された。