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全私学新聞

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記事2023年7月3日 2617号 (1面) 
私学振興協議会を開催
私学団体代表が要望など説明
自民党文教関係議員と今後の教育で意見交換

全私学連合を構成する私学団体の代表と与党・自由民主党の文部科学(文部)大臣経験者、文部科学(文教)部会長経験者、現職の文部科学部会長で組織する「私学振興協議会」が6月28日、都内のホテルで開催された。今回のテーマは「私学の要望と課題」。私学団体からは当面する課題に関する説明や改善要請等がなされ、一方、議員側からは課題に対する見解や、逆に私立学校に対する要請等が行われ、わが国の一層の教育振興に向けて忌憚のない意見交換の機会となった。


私学振興協議会では冒頭、全私学連合を代表して田中愛治・日本私立大学団体連合会会長(早稲田大学総長)が、出席した10人を超える議員の日頃の支援に感謝した上で、「私学の課題を議員の皆様と共有でき、ご意見を頂けること、大変ありがたく思っています」とあいさつ。


続いて議員側を代表して塩谷立・元文部科学大臣(衆議院議員)があいさつし、今国会で私立学校法が改正されたことに触れ、「私立学校にはしっかり対応してほしい。一方で大きな時代の変革期の中で教育全般が問われており、人口減少は待ったなしの課題で私学の経営のことも多々出てくるだろう。改めて私学の役割をしっかり認識しながら子供たちのために対応していただきたい」などと語った。さらに中村裕之・文部科学部会長(衆議院議員)が、「29%台まで行った私学への助成割合が、今は8・9%。こうしたことが家計の負担につながり、少子化の要因の一つになっていると感じている」などとあいさつした。


その後、私学5団体の代表が要望を行い、私立大学を代表して田中会長は、「私学法の改正で人件費の増加が見込まれるため経常費補助の拡充を、また国策のAI人材育成には文理横断の教育が必要。基金の創設などをお願いしたい。また企業と大学のマッチアップ、そのための橋渡しの人材が必要。ご理解を」と、また小原芳明・日本私立大学協会会長(玉川大学理事長・学長)は、「地方の人達や産業教育の場として私立大学への補助をお願いしたい」などと要請した。


日本私立短期大学協会の関口修会長(郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は「短大卒業生が一番地域社会に貢献している。地方がさらに豊かになることを考えてほしい」などと語り、地方の振興と短大での教育内容の充実がよい循環となっていることなどを強調した。


日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長は、私学助成の都道府県間格差や高校でのICT環境の整備の遅れ、生徒数の確保に不安を感じている学校の施設の耐震化の実施などが課題と説明。その上で大阪府で実施が予定されている授業料のキャップ制をかけた上での無償化策については、私学の自由が奪われることなどを説明、修学支援の都道府県間格差解消のためにも国の支援の強化を訴えた。日本私立小学校連合会の重永睦夫会長(学校法人五島育英会評議員)は、私立小学校でも特別支援を要する子供たちが入学してくるようになっていて、深刻な教員不足に陥っていることなどを説明した。全日本私立幼稚園連合会の田中雅道会長(光明幼稚園理事長)は、私立幼稚園が地域の社会資本、資産であることことなどを訴えた。また誰でも保育が始まっているが、保護者の評判が芳しくないため、子どもが育つ視点で進めてほしいと要請した。


こうした私学側からの要請や問題提起に対して、初めに自民党政調会長の萩生田光一・元文部科学大臣が、「高等教育のボリュームの検討が今後必要。通信制大学に関して人間力が付けられるのか足を止めて考えなければいけない。今、4学年で2万人の規模の通信制大学の設置計画が出ている。異常だ」などと語った。


また下村博文・元文部科学大臣は、憲法改正論議は26条、89条等で私立学校にも関わりがあることなどを説明。大阪府の授業料無償化問題に関しては、キャップ制の意味について必ずしも国民がよく理解していないことなどを危惧した。


そのほかの議員からも同制度が私学の公立化を招き、個性の喪失につながりかねないとの意見が複数聞かれた。


柴山晶彦・元文部科学大臣は、「時代の流れにどうマッチアップしていくかについて私立学校は気を配ってほしい」と語り、赤池誠章・元文部科学部会長は、私学はAI人材育成でコンソーシアムを作ってほしいと要請。亀岡偉民・元文部科学部会長は、「私学はもう一歩踏み出してほしい」などと語った。同協議会に出席した議員は次の各氏(敬称略・順不同)渡海紀三朗・元文科大臣、塩谷立、下村博文、柴山晶彦、萩生田光一、末松信介・元文科大臣、義家弘介・元文部科学部会長、木原稔・元文部科学部会長、亀岡偉民、赤池誠章、階恵美子・元文部科学部会長、中村裕之。


6月28日の私学振興協議会

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