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記事2023年7月23日 2619号 (1面) 
第8回高校教育の在り方WG開催
少子化が加速する地域の高校教育の在り方等検討
近く「中間まとめ」を策定へ

中央教育審議会初等中等教育分科会の個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の下に設置されている「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」(主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長、以下、WGと表記)は7月21日、第8回会議を対面とオンラインのハイブリッド形式で開いた。8月24日の次回(第9回)での「中間まとめ」策定に向け、論点別にこれまでWGで委員から出された意見の整理について意見交換した。


同WGの論点の柱は、(1)高等学校教育の在り方(「共通性」と「多様性」の観点からの検討)、(2)少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方、(3)全日制・定時制・通信制の望ましい在り方、(4)社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断・実践的な学びの推進―の4点。


 このうち多くの委員の関心が高かったのが、少子化が加速する地域の高校教育をどうするか。


高校が廃校となると地域の衰退が更に進むとの懸念から地元自治体も含め小規模ながらもどう高校を残すかという点への関心が高かった。過疎化の進む北海道や高知県等では遠隔授業の導入が進んでおり、授業配信のためのセンターなど設けられているが、濱田久美子委員(高知県香美市教育委員会生涯学習振興課推進官、元高知県立山田高等学校長)は、配信センターから16校に配信しているが対面と同程度の水準で生徒の満足度は高いと報告、同時双方向遠隔授業を強力に推し進めてほしいと訴えた。またCOREハイスクール・ネットワーク構想で行っている受信側の教員配置要件を緩和しての遠隔授業を国の主要な政策に位置付けてほしいと要請。さらに遠隔授業で課されている一部対面授業の実施(2単位)の単位削減を要望した。教科書についてもさまざまな生徒の学力等に合わせた遠隔授業型教科書を用意していることも報告した。


石崎規生委員(全国高等学校長協会会長)は、「遠隔授業をすればどんどん高校の統廃合をしていいという間違ったメッセージは出さないでほしい」と語り、まず地域に学校を残すことの重要性を訴えた。また、公立高校が県外で生徒募集をしていることを挙げて、「生徒を奪い合っているだけ。少子化を解消しない限り本質的に解決しない」と訴えた。そのほか委員からは、遠隔授業で生徒が授業のレベルを選択できることや他校の特定の科目の授業を受講できる仕組みの重要性の指摘があった。冨塚昌子・千葉県教育委員会教育長は郡部に小規模校を残すため、市町が寄宿舎や通学費、ICT端末への支援を行っていることなどを報告。


また「国立大学が授業配信センターの機能を担ってはどうか」といった意見や「オンデマンドの教材活用を認めてもいいのではないか」「(遠隔授業では)生徒の多様な興味関心に現時点で対応できていない」「教員に関してもオンラインのスペシャリストを育てるべきだ」「放送大学の科目の中に高校の授業科目を入れられたらいい」「文科省は曜日を決めて積極的にオンラン授業を進めたらいい」「上限規程を設けた上で積極的に遠隔授業を進めたらいい」などの意見が聞かれた。


論点(2)に関しては、全日制、定時制でもオンラインで学んだ単位を認めること、その際、学修成果を測る仕組みが必要といった意見が聞かれ、公立の通信制高校の魅力づくりに関しては、卒業率や進路決定率の向上が重要とする意見、またそのためには教員定数等の拡充が必要との意見も聞かれた。また、「定時制課程で学ぶ生徒の大学進学を考えると、授業数が十分ではないので、オンラインで受けられるといい」「高校入試の在り方を考えるべきだ」「高校にも大学にあるような長期履修制度があってもいい。3年で卒業しないというスティグマが緩和できる」といった意見も出された。


このほか高校の不登校特例校(通信の方法を用いた教育)の制度の概要や私立高校で7校の適用実績があることなどが同省から説明された。


第8回高校教育在り方WG

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