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記事2023年6月3日 2614号 (1面) 
中教審第141回初等中等教育分科会開く
質の高い教師確保のための環境整備議論始まる
国・私立学校の教員処遇も課題

中央教育審議会の第141回初等中等教育分科会(分科会長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)が5月24日、対面(同省)とオンラインによるハイブリッド方式で開かれた。この日、中心となった議題は、「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策についてで、5月22日の文科大臣の諮問を受けて、遅くとも来春までに給特法の見直しなど公立学校の教員の処遇改善等について一定の方向性が示される。その際、公立学校とともに公教育を担う国・私立学校(非公務員)の教員をどう扱うかが大きな焦点の一つといえる。


初等中等教育分科会に関しては、4月4日開催の第140回会議で荒瀬克己氏を分科会長に、奈須正裕・上智大学総合人間科学部教授と堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授を分科会長代理に選任。また同日、初中分科会の下に「教育課程部会」、「教員養成部会」、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」、「デジタル学習基盤特別委員会」の設置が承認されているが、第141回では加えて同分科会の下に、「質の高い教師の確保特別部会」の設置が承認された。


第141回会議では質の高い教師確保のための環境整備に関しては、文科省の村尾崇・財務課長が、5月22日の永岡桂子文科大臣が諮問した理由や具体的に検討を要請したい事項、今年4月28日に速報値を公表した教員勤務実態調査(令和4年度)集計の概要、同省の質の高い教師の確保のための教職の魅力向上等に向けた環境の在り方等に関する調査研究会(貞弘斎子座長=千葉大学教育学部教授)が今年4月13日にまとめた論点整理の概要を説明。その上で審議のスケジュール感について村尾課長は、「施策を迅速・着実に実施していくため、審議の状況に応じて場合によっては逐次、取りまとめて頂くことも考えられるが、最終的には来年春頃に一定の方向性を示すことを目途に審議を進めて頂きたい」などと語った。


こうした同省からの説明や要請に、委員からは、より柔軟な学級編成や教職員配置、必要な財源の確保、包括的・総合的な検討、教員の働き易さや働きがいの重視、教員を平均(値)で見ないことなどを求める意見が聞かれた。


また吉田晋・日本私立中学高等学校連合会長が、質の高い教師の確保のための教職の魅力向上等に向けた環境の在り方等に関する調査研究会が論点の一つに「私立・国立学校と公立学校が担う役割にはどのような差異があるのか。また、差異を踏まえ、非公務員である私立・国立学校の教師と、公務員である公立学校の教師の職務や給与の在り方をどう考えるか」を挙げたことに触れ、「公立と私立学校はその成り立ちに差異はあるが、子供一人一人に真剣に向き合っている点は同じ。私学も残業の問題を抱えている。変形労働時間制にも良い点、悪い点がある。今の教職調整額制度は決して悪くはない。国には国公私立の教師の処遇を同じような形で考えてほしい」と要望した。


 このほかの委員からは、「包括的・総合的な検討との話があったが、(さまざま施策を)同時に行うのは物理的に困難。優先順位をつけるべきで、教員の定数を増やすことが重要」「保護者の過剰な要求から学校を守る仕組み、スクールロイヤーの拡充が必要」「教職調整額の見直しが大きく報道されているが、財源の問題もあるので、仕事を教師から切り離す、業務改善をすべきで、学校・教師の業務の3分類をもう少し精緻化し、権限移譲を考えていくべきで、その上でDXだろう」などの意見が聞かれた。


 第141回初等中等教育分科会では、二つ目の議題として、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議報告、三つ目の議題として誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)について、同省から説明が行われ、委員による意見交換が行われた。このうち不登校対策に関しては、フリースクールに対しても予算を付けることの検討や公立学校間で転校できる仕組みの検討を求める意見、幼稚園での体験を通じて学校の復帰する取り組みを求める意見などが聞かれた。


 このほかG7富山・金沢教育大臣会合(2023年5月12日〜15日)で話し合われたテーマ、取りまとめられた「富山・金沢宣言」などが同省から紹介された。


中教審第141回初等中等教育分科会

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