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記事2023年5月3日 2612号 (1面) 
改正私立学校法が成立
学校法人のガバナンス強化へ
理事・理事会、監事、評議員・評議員会
建設的協働と相互けん制確立

 政府が今国会に提出した「私立学校法の一部を改正する法律案」は4月25日、参議院の文教科学委員会(高橋克法委員長)で可決、翌日の参議院本会議で可決、成立した。同法案は衆参両院とも全会一致での可決成立となった。文教科学委員会では衆議院の文部科学委員会と同様に附帯決議も採択された。


参議院の文教科学委員会では議員から理事長が理事選任機関となれる可能性など疑問点を質す意見が聞かれたが、同時に私立学校が公教育に果たしている役割の大きさや、建学の精神に基づく特色ある教育の多様性を重視すべきだとの意見が多くの議員から聞かれた。


 その上で社会の要請に応え得る実効性のあるガバナンス体制で私立学校がより質の高い教育を展開していくことへの大きな期待感が文教関係議員や文部科学大臣等から述べられた。


 文部科学省の高等教育局私学部(滝波泰・私学行政課長)は同法案成立後の4月28日、主に私学関係者や都道府県私立学校主管部課関係者に向け私立学校法の改正についての約1時間半の解説動画を文科省の公式チャンネルを通じて公開し、改正点の詳細や今後のスケジュールなど現時点で決まっている事項を明らかにしている。


 その中では改正私学法の政省令や寄附行為(=定款)作成例の改正について、遅くとも令和6年の1月頃までに通知すること、その後、学校法人は寄附行為の変更の手続きの検討や、理事・監事・評議員(・会計監査人)の選任方法や人選等の検討、その他改正法施行に伴い必要な作業(内部統制事項の決定、評議員報酬基準の策定等)を行い、令和6年の秋から冬にかけて寄附行為変更申請を行い、認可を得て、令和7年度から改正私立学校法が施行されるなどと説明した。


 都道府県知事所管の学校法人(高校等法人)に関しては、令和5年度内に文科省による都道府県向け説明会が開かれる予定で、その後、各都道府県の私立学校所管課でモデル寄附行為や審査基準等の作成、所轄法人向け説明会が実施され、令和6年度内に寄附行為変更が認可、令和7年度から改正法施行となるスケジュールを明らかにした。


 今回の法改正の主なポイントは、理事の選任に関しては理事選任機関が行うこと(現行は寄附行為の定めによる)、理事選任機関が評議員会以外の場合、評議員会の意見聴取が必須なこと、理事の解任は理事選任機関が解任すること、評議員会による解任の求め、評議員による解任を請求する訴えの提起が可能なこと。理事長の選定等は理事会が選定(・解職)すること、監事の選解任は評議員会の決議によって行うこと、監事は理事・評議員・職員・子法人役員と兼職禁止、理事と評議員は兼職禁止、評議員会の構成では理事・理事会が選任した評議員は評議員総数の2分の1までで、職員は同様に3分の1まで。外部理事は1人以上必要で、大臣所轄学校法人等は2人以上必要としている。理事会・評議員会の運営については、招集、決議、議事録等について具体的に法定、大臣所轄学校法人等は寄附行為の変更(軽微なものを除く)、任意解散・合併については評議員会の決議が必要、評議員会は役員等に対する責任追及の訴えの提起を求めることが可能、役員等の特別背任、贈収賄、目的外の投機取引等について刑事罰を新設している。


 このうち評議員構成等に関する経過措置については、大臣所轄学校法人等に関して改正法施行後約1年は経過措置を適用、それ以外の都道府県知事所轄学校法人については改正法施行後約2年は経過措置を適用、いずれも令和9年度から完全施行となる。この経過措置は理事は2人以上に評議員と特別利害関係を有してはならないとの規定を3人以上とすること、監事は2人以上の評議員と特別利害関係を有してはならないなどの規定を経過措置では3人以上に緩和する。


 また滝波課長は、衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会でそれぞれ附帯決議が採択されたことに触れ、私学関係者等に向けしっかり留意してほしいと要請した。衆議院文部科学委員会での附帯決議については本紙3月23日号1面で報じているが、参議院の附帯決議では衆議院の11項目に加え、(12)評議員の選任に際して、教職員、卒業生、保護者、地域住民、有識者などバランスの取れた多様な構成とすることが望ましい旨を、各学校法人に周知すること、(13)役員、評議員の研修の機会確保に努めることなど、を求めている。

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