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記事2023年4月23日 2610号 (1面) 
参議院文教科学委員会私立学校法一部改正案質疑が始まる
村田前関西学院大学学長ら招き参考人質疑
私学関係者からは法案を評価、改善を求める声も

 私立学校におけるガバナンスの強化を目指す「私立学校法の一部を改正する法律案」が3月24日に衆議院本会議で全会一致で可決、通過、4月17日に参議院文教科学委員会(高橋克法委員長)に同法案の審査が付託され、翌18日には永岡桂子・文部科学大臣から同法案についての趣旨説明を聴取、同月20日には3人の参考人(私学関係者や法学者)を招き意見聴取、質疑が行われた。


 この日、意見を述べたのは関西学院大学前学長・同経済学部教授で、文部科学省の大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長を務める村田治氏、全日本私立幼稚園連合会長の田中雅道氏(光明幼稚園理事長)、龍谷大学法学部長・教授で学校法人龍谷大学理事・評議員の丹羽徹氏。


 この中で村田参考人は、今回の私学法改正案について、理事と評議員の兼職を禁じることや、評議員会の決議によって監事が選任されることなど、理事長、監事、評議員会の三者がバランスよく相互に牽制しつつ、協働する仕組みとなっていること、法人の規模や学校種に配慮したバランスが取られていること、評議員に学校の教職員や卒業生を入れることができ、私立学校にとって最も重要な建学の精神を(継承することを)担保する仕組みがうまく取り入れられていることなどを挙げ、改正案を評価する考えを示した。


 続いて田中参考人は改正案では理事会、評議員会、監事の三者の関係がより明確になることや、大学など大臣所轄法人と幼稚園など知事所轄法人では違いがあることが今回の改正案で明確にされたことは大きな成果だと話すなど改正法案を評価した上で、幼稚園は現在、(出生数の低下から)縮小・撤退の状況にあり、スムーズな撤退の検討の必要性などを指摘した。


 丹羽参考人は、まず大学を代表してではなく、憲法、教育法の専門家の立場で、国会の質疑の中で明らかにしてほしいこと、課題として残されたことについて発言したいと語り、何度か学校法人制度の改正をしてきた中で、私立大学で大きな不祥事が発生したのは現行の学校法人制度に欠陥があるからとし、とりわけ評議員の任命を理事会ができること、理事や評議員は複数のチャンネルで選ばれる必要があること、監事の監査が教学面に及ぶと教育への不当な介入に当たること、ボトムアップ型の意思決定が重要なことなどを指摘した。


 3人の参考人による意見陳述を受けて、議員による質問が行われたが、まず自由民主党の高橋はるみ議員は、「今回の法改正で私学が社会の信頼を得てさらに発展していく仕組みはできるが、運用が重要で、どう制度に魂を入れられるか」と質問。これに対して村田参考人は、「各私学が改革の趣旨や具体的にどう機能していくのか真摯に考えていくことが大事で、文科省からも具体的な(運用の)モデルが上がってくると思う」と語り、田中参考人は「質の向上に向けて変化していくことが重要」などと語り、丹羽参考人は「寄附行為で定めるとされている内容についても法定すべきだ」などと語った。


 また宮口治子議員(立憲民主党)は評議員の選任で一部の幹部に権限が集中しかねない余地が残っているのではないか」と質問。村田、田中参考人からは監事の選任(評議員会が選任する)が重要な役割を果たすと回答。また宮口議員は「当該学校法人の職員が評議員総数の3分の1を超えないことに意味があるか」と尋ねたのに対して村田参考人は関西学院では評議員を教職員、外部、クリスチャンで構成していること、田中参考人も評議員は地域、保護者、学校法人の職員から構成されていることなどを明らかにし、3分の1という数字は意味があるとした。丹羽参考人はもう少し学校教職員の比率を増やす余地はあるのではないかと回答した。


 竹内真二議員(公明党)は、当初案(学校法人ガバナンス改革会議の提言)と比べ私立学校法の一部改正案の評価を各参考人に尋ねた。村田参考人は当初案では評議員会を最高監督、議決機関としていた点について、「屋上屋を作るだけ。理事会の形骸化を懸念していた」と語り、田中参考人は「理事会、評議員会、監事が互いにけん制しながらも一体となって動くことが重要」とし、丹羽参考人は「評議員会で議決すべき事項がもう少し拡大してもいい」と語った。


 松沢成文議員(日本維新の会)は不祥事を起こした者への厳罰化について抑止力につながるか、と質問。村田参考人は「抑止力につながると思うが、監事の調査権限、調査義務が加わったことが大きい」とし、丹羽参考人は「厳罰化は抑止力にはつながらない。不祥事が起きない仕組みをつくることが大事」と答えた。


 吉良よし子議員(日本共産党)は、「学校法人ガバンス改革会議の提言は何が問題だったのか」と尋ね、村田参考人は「評議員会から教職員を排除していること、理事会の役割がはっきりしなくなったこと」などと回答した。そのほか、伊藤孝恵議員(国民民主党)、舩後靖彦議員が(れいわ新選組)が質問した。


村田参考人


田中参考人


丹羽参考人

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