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全私学新聞

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記事2023年3月23日 2607号 (1面) 
私立学校法改正で参考人質疑
3月22日に衆院文部科学委で可決
11項目の附帯決議を採択

 内閣が2月17日に国会に提出した「私立学校法の一部を改正する法律案」が3月22日、衆議院の文部科学委員会(宮内秀樹委員長)において全会一致で可決された。可決後、自由民主党の中村裕之議員ら4人(5会派共同提案)により附帯決議案が提案され、全会一致で採択された。同法案については3月15日に同委員会で質疑が始まり、同17日には全私学連合の田中愛治代表ら4人を招いて参考人質疑が行われており、近く衆議院を通過、今後、質疑の舞台は参議院に移る。


 このうち3月17日の参考人質疑には、田中愛治・全私学連合代表(早稲田大学総長)、いわゆる骨太の方針2021等を受け社会福祉法人や公益法人と同等のガバナンス改革を目指して評議員会の最高監督・議決機関化等を令和3年12月に打ち出した学校法人ガバナンス改革会議(文部科学大臣直属の会議)の増田宏一座長(日本公認会計士協会相談役)、その議論の途中から同改革会議の改革案の実効性を疑問視する声が教育現場や国会議員等から複数挙がったのを受けて、急遽、文部科学省に設けられた学校法人制度改革特別委員会で主査を務めた福原紀彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長(当時は中央大学前学長)、藤本明弘・嵯峨幼稚園理事長・園長の4人が出席した。国会に提出された私立学校法一部改正案は同特別委員会の報告書(令和4年3月)が基礎となっている。


 3月17日の文部科学委員会では参考人全員が学校法人のガバナンス改革の必要性では一致、ただ国会に提出された私学法改正案に対して田中参考人、福原参考人が評価したのに対して、増田参考人は、「一歩前進だが、(ガバナンス改革には)全く不十分」と語った。


 田中参考人は、特別委員会では丁寧な合意形成が図られたこと、理事・理事会、評議員・評議員会、監事の役割が明確に分離され、また理事会と評議員会が互いに牽制するだけではなく、普段は建設的に協働するが、例えば理事が規範を逸脱した場合は、監事が重要な役割を果たすなどの機関設計を評価、肝に銘じて改革を進めていく考えを明らかにした。


 一方、増田参考人は学校関係等の懸念が強かった評議員会を学校法人の最高監督・議決機関とする改革提案について、「最高監督・議決機関(評議員会)は執行機関ではない。多くの関係者が誤解していて残念だ。評議員会が暴走、学校法人を乗っ取るようなことはあり得ない」と語ったが、田中参考人は「評議員会が重要な案件を否決・差し戻して、評議員が自分に関係する企業などを提案することも考えられる。評議員会が不正を行わない保証はない」と語り、また評議員会を構成する企業関係者や弁護士、公認会計士といった人は教育の専門家ではなく、学校法人のステークホルダーである児童・生徒・学生等とその保護者を第一に考えた選択が難しいことなどを訴えた。


 福原参考人は、法案の基となった報告書は教育現場や関係者の声を丁寧に聞いて実効性ある法制度となるように考えたこと、不祥事の防止の基盤整備とともに、時代の社会的要請に果敢に挑戦するための機関設計としたこと、学校法人の特殊性や独自性に配慮したことなどを説明、私立学校に関しては、法人とは別に学校については教育基本法や学校教育法等により教学マネジメントの規律が行われており、法人と学校という二元的なガバナンス構造は他の法人にはほとんど見られない機関構造であることなどを説明した。


 藤本参考人は「一人の園長、現場の声」として聞いてほしいと前置きした上で、京都では園児数が100人を切っている園がほとんどで、大規模な大学法人とは大きく運営体制が異なっていることなどを説明した上で、小規模法人への考慮の必要性、教育における自由や学問の独立、幼稚園は均一を求められる社会福祉とは似て非なるものだなどと説明した。


 その後、与野党5人の議員から質問があり、藤本参考人には、今回の法改正に(小規模な園で)対応できるかといった質問があり、藤本氏は「高齢の園長もいて2年で対応できるか、京都府の所管課が対応できるかに不安がある」と語った。


 さらに理事を選任する機関を学校法人の寄附行為(=定款)に定めることについて少し問題がないか」との質問が田中参考人に出され、田中参考人は、「寄附行為の作成例(モデル)を文科省が可及的速やかに出すことが大事で、作成例が私学共通の倫理観を持つことにつながる」と語った。


 質問に立った議員のほとんどが私学法改正案に大きな異論はなく、小規模な法人を大規模な法人と同様に扱うことに懸念を示す議員も少なくなかった。


 一方、3月22日の衆議院文部科学委員会で採択された附帯決議は11項目の構成。主な内容は次の通り。(1)私学の建学の精神を侵さない。大学の教育・研究に不当に干渉しない。(2)評議員会の権限強化策を推進する。(3)理事選任機関に評議員を含めるなど理事会からの中立性確保を周知。(4)理事又は理事会が選任する評議員数の上限について当該割合まで含めるものでないことを各学校法人に周知する。(5)理事、評議員の積極的意見交換を周知する。(6)文部科学大臣所轄法人等においては理事長職の在り方について検討する。(7)会計監査人は監査証明業務と非監査証明業務の同時提供はできない旨周知する。(8)特に小規模な学校法人に運用面での負担軽減措置を講じる。(9)都道府県に対して丁寧な説明や調整が行われるよう努めること、(10)株式会社立学校の設置主体に指導助言を充実する。(11)女性の登用に配慮を求める旨、周知する。


田中全私学連合代表


増田座長


福原私学共済理事長


藤本理事長・園長

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