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記事2023年3月13日 2606号 (1面) 
第4期の教育振興基本計画答申提出
第11期最終の中教審総会開く
教育未来創造会議提言等踏まえ計画策定
社会全体で教育投資確保などを求める

中央教育審議会(渡邉光一郎会長=第一生命ホールディングス株式会社取締役会長)の第134回総会が3月8日、対面(文部科学省講堂)とオンラインのハイブリッド方式で開かれ、教育振興基本計画部会で約1年にわたり審議されてきた第4期教育振興基本計画に関する答申案について審議した結果、各委員から答申とすることが了承され、その場で渡邉会長から同省の簗和生副大臣に手渡された。答申には私立学校の振興等の記述も含まれている。次期計画(令和5―9年度)は、岸田総理が議長を務める教育未来創造会議の第二次提言等も考慮した上で閣議決定される。この日は第11期最終の総会。3月15日には第12期初の中教審総会(第135回)が開かれる。


 第4期教育振興基本計画は2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成、日本社会に根差したウェルビーイングの向上がコンセプト。


 その上でグローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成、誰一人取り残さず全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進、地域や家庭で学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進、教育DXの推進、計画の実効性確保のための基盤整備・対話を基本的な方針と定めている。


 また教育政策の持続的改善のための評価・指標も示しており、教育投資については、OECD諸国など諸外国における公財政支出の状況を参考に「未来への投資」としての教育投資を社会全体で確保するよう提言している。この中には教育の質向上に向けた環境整備として私学助成の適切な措置のほか、GIGAスクール構想、教師の処遇等の在り方の検討、成長分野への転換支援の基金創設、学校施設・大学キャンパスの教育研究環境向上と老朽化対策(私立学校施設の早期の耐震化完了を含む)等が基本施策例や指標例として含まれており、そのほか私学関係の指標としては学校法人における外部資金獲得状況の改善、事業に関する中期的な計画を評議員会の議決を経て策定している大学・短期大学等を設置している学校法人の割合の増加などが挙げられている。


 こうした答申案に対して委員からは、「教育の成果が出るまでには時間がかかる。評価や指標の立て方については慎重に」といった意見や、「文化や芸術は人間の持つ大きな能力で、芸術的な発信は大きな影響力を持つが、答申案の中で文化・芸術の扱いが少ないと思う」といった意見が聞かれた。


 渡邉会長から次期教育振興基本計画に関する答申を受け取った簗副大臣は、「コロナ禍の下、約3年が経過し教育行政も新たな局面を迎えている。グローバルな教育の回復や教育DXの更なる推進、不登校やいじめ等への対応、部活動の在り方、教師の人材確保や働き方改革、文理横断・文理融合、少子化への対応などさまざまな課題に待ったなしで取り組んでいく必要がある。政府部内でもさらに検討し、新たな基本計画として決定していきたいと考えている。併せて全国の教育現場や教育関係の皆様に計画の趣旨が伝わるよう積極的な周知広報にも取り組み、実効性のある計画としていきたい」と語った。


 答申提出後、第134回の中教審総会では、第11期の審議の状況や来期に審議が考えられる事項等について、各分科会長や同省の局長、審議官から報告された。


 初めは教育振興基本計画部会・令和の日本型学校教育を担う教師の在り方特別部会、生涯学習分科会、続いてさまざまな特別部会やワーキンググループを設けている初等中等教育分科会、さらに同様に複数の部会等を設けている大学分科会の審議状況と次の第12期中教審で審議することが考えられる事項等が報告された。このうち生涯学習分科会では来期には、生涯学習・社会教育の振興方策として、社会教育人材の活躍促進方策、リカレント教育の推進、国際的動向への対応等の審議が考えられており、初等中等教育分科会では現在審議中の義務教育の在り方ワーキンググループ、高等学校教育の在り方ワーキンググループの論点整理についてさらに検討を深めるほか、「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方に関する答申(令和4年12月)を踏まえた改革の実効性のある取り組みの実施等に向けた検討を進めることにしている。


 大学分科会に関しては、急速な少子化の進行等への高等教育の対応方策、大学院制度と教育の在り方、法科大学等の教育の改善・充実、認証評価機関の認証、教育課程等に係る特例制度について、来期に継続して審議することにしている。特に少子化に関しては、高等教育の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセスの確保の在り方、国公私立の設置者別役割分担の在り方等について一定の方向性を打ち出すべく審議を進める予定。


第134回中教審総会

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