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記事2023年2月23日 2604号 (1面) 
私学法改正案、国会提出
ガバナンス改革推進
執行と監視・監督の役割明確化・分離

 岸田内閣はこのほど、「私立学校法の一部を改正する法律案」と「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。このうち私立学校法改正案は、「我が国の公教育を支える私立学校が、社会の信頼を得て、一層発展していくため、社会の要請に応え得る実効性のあるガバナンス改革」を推進するための制度改正。「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から、理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の権限分配を整理し、私立学校の特性に応じた形で「建設的な協働と相互けん制」の確立を目的としている。


 私立学校法の見直しは最近では、教育の質向上、運営の更なる透明性の確保を目的に令和元年に法改正が行われ、令和2年4月1日から施行され、役員の職務・責任の明確化等が進められた。


 その後、学校法人のガバナンスに関する有識者会議が発足し令和元年12月20日から令和3年31日まで11回の会議が行われたが、令和3年7月には社会福祉法人等と同等のガバナンス機能を発揮するための改革を抜本的に推進することを目指して改革会議が発足、私立学校の実情等と大きくかけ離れた改革提言に私学関係者からその実効性について疑問の声が上がり、議員の疑問の声もあり、改めて文部科学省は令和3年12月21日に私立学校ガバナンス改革に関わる対応方針を発表、それと共に学校法人制度改革特別委員会が令和4年1月に初会合を開き、3月29日に報告書を公表、同省は5月20日に私立学校法改正法案骨子を公表、法案提出の準備を続けていた。


 今回の私立学校改正法案はそうした検討状況や私立学校の円滑な運営等も考慮してまとめられた法案で、理事・理事会に関しては、理事選任機関を学校法人の寄附行為(=定款)で定め、理事選任に当たって、理事選任機関はあらかじめ評議員会の意見を聴くこと、理事長の選定は理事会で行うこと、監事に関しては監事の選解任は評議員会の決議で行い、役員近親者の就任は禁止。


 評議員・評議員会に関しては、理事との兼職は禁止、評議員の下限定数は理事の定数を超えるまで引き下げること、理事・理事会により選任される評議員の割合や、評議員の総数に占める役員近親者及び教職員等の割合に一定の上限を設けること、評議員は選任機関が機能しない場合に理事の解任を選任機関に求めたり、監事が機能しない場合に理事の行為の差止請求・責任追及を監事に求めることができる。


 大学・高専を設置する大臣所轄学校法人等では会計監査人による会計監査を制度化し、その選解任の手続きや欠格要件等を定める、としている。


 また大臣所轄法人等においては、学校法人の基礎的変更に係る事項(任意解散・合併)及び寄附行為の変更(軽微な変更を除く)につき、理事会の決定に加えて評議員会の決議を要することとしている。そのほか監事・会計監査人に子法人の調査権限を付与し、会計、情報公開、訴訟等に関する規定を整備する。また役員等による特別背任、目的外の投機取引、贈収賄及び不正手段での認可取得について罰則が整備される。


 大学など大臣所轄法人と高校など知事所轄法人とでは基本的に規模が大きく異なることから取り扱いで異なる点が少なくない。同法の施行は令和7年4月1日からで、評議員の構成等については経過措置を設けるとしている。同改正法が成立後、省令等が定められ、ガバナンスコードの見直し、寄附行為の作成例などが策定される予定。


 ◇


 もう一つの日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案は、日本語教育機関の認定制度を創設、認定日本語教育機関の教員の資格を創設するもの。認定機関に対して、文科大臣は日本語教育の実施状況の報告を求めることができるほか、勧告、是正命令を行うことができる。


 一方、認定日本語教育機関の教員の資格の創設に関しては、必要な知識と技能についての試験(日本語教員試験)に合格し、大臣の登録を受けた機関(登録実践研修機関)が実施する実践研修を修了した者が「登録日本語教員」として大臣の登録を受けることができる。日本語教員試験には「基礎試験」(基礎的な知識及び技能を判定)、と「応用試験」(知識及び技能のうち応用に関するものを判定する)が設けられるが、大臣の登録を受けた日本語教員の養成機関(登録日本語教員養成機関)が実施する養成課程を修了した者については、申請により基礎試験が免除される。

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