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記事2023年12月3日 2631号 (1面) 
私大団体連 私立大学振興協議会開催
文理横断の教育実施へ経費支援など要請
議員から「教育の無償化は大きな政治マターに」の声も

 日本私立大学団体連合会(会長=田中愛治・早稲田大学総長)は11月7日、「私立大学の振興に関する協議会」を都内のホテルで開催した。同協議会は、同連合会が来年度政府予算や税制改正に対する要望を自由民主党の国会議員に説明し理解を求め、意見交換することを目的に開催している。今回は議員側の出席者を、文部科学(文部)大臣経験者、同副大臣経験者、同大臣政務官経験者、文部科学部会長経験者等に絞り開催した。


 協議会の冒頭、主催者を代表してあいさつした田中会長は、「私立学校法改正を無修正で、衆参両院全会一致で承認いただき、お礼を申し上げたい。各大学はコンプライアンスを守り、ガバナンスの透明性を高め、経営感覚を持って、新しい大学教育に挑戦する必要がある。本日は令和6年度政府予算案および税制改正に絞って意見交換させていただきたい」などと語った。


 また議員(来賓)を代表して塩谷立・衆議院議員(元文科大臣)があいさつし、「来年度は、物価高騰、ガバナンスに関する経費に対応するため経常費補助のアップが課題で、寄附金の税額控除をいかに拡大するかが大きなポイントだ」などと語った。


 続けて、現職の盛山正仁・文部科学大臣が「私立大学の皆様には、国民の理解が得られるよう主体性を持って、ガバナンス改革に取り組み、私学振興にさらに尽力賜りたい」などと述べた。


 その後、田中会長が具体的要望事項を説明、理工農系学部等への転換のための基金創設に感謝した上で、同基金の資金は教員の人件費には充てられないことから経常費補助の拡充を要請。AI人材育成の推進では、人文系学部での文理横断教育を進めることが重要で、理工系の要素を取り入れた教育提供のための環境整備、学部間・大学間連携のための経費支援などを要請。さらに私学助成の授業料減免制度が廃止されたため、大学進学を諦める中間層が出てきているとして、中間層に対する支援を要望。そのほか地方の私大への支援、私学への個人寄附に対する税額控除率の大幅引き上げへの理解を求めた。


 こうした私大側からの要請に、山田賢司・自民党文部科学部会長(衆議院議員)は、「皆さんにヒアリングした結果を受け止め、文教関係の先生方の指導を仰ぎながら政策の実現に向け取り組みたい」と発言。


 防衛大臣の木原稔・衆議院議員(元文部科学部会長)は、私大が担う多様性の必要性やそのバックグラウンドにある建学の精神の重要性などに言及。遠藤利明・衆議院議員(元文科副大臣)は、予算の獲得には特別目的税など財源をどう作っていくかの議論がないと、財務省に大きなインパクトとはならないこと、憲法89条の改正と財源確保を絡めた議論の必要性などを指摘。


 赤池誠章・参議院議員(元文部科学大臣政務官)は高校段階での文理融合教育の重要性を強調、大学の附属校や指定校、付き合いのある高校にも文理融合を働き掛けるよう要請した。


 下村博文・衆議院議員(元文科大臣)は、教育の無償化では機関補助ではなく個人補助が中心となっていること、憲法の89条を変えることで、私立大学に税金が投入しやすくなること、公立大学が全て無償化されたら私大は深刻な状況となるとして私大側にドラスティックな提案を求めた。


 末松信介・参議院議員(元文科大臣)は、「文理融合に関して、具体的に困っている課題を教えてほしい」と質問。それに伊藤公平・慶應義塾長が「人材の取り合いが一番の問題」と回答した。


 渡海紀三朗・衆議院議員(元文科大臣)は「いわゆる出世払いと言われている奨学金制度(J―HECS)を学部にも導入するプロジェクトの開始を決めた。これから党が創ろうとしている奨学金制度に私学から意見を出してほしい。個人に着目することで公私間格差はかなり解消できる。いずれにしても教育の無償化が大きな政治マターになることは間違いないと思っている」と語った。


 塩谷議員も「20年、30年を見越して教育の在り方の根本的な議論が必要」と語った。そのほか田中会長は「大学の設置基準を厳しくしていかないと、今後、私学全体が潰れてくる可能性がある」と述べた。


田中会長


塩谷議員

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