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記事2023年12月3日 2631号 (1面) 
第1回高等教育の在り方特別部会開く
2人の専門家から意見聴取
国立大学値上げを求める声も

 今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方や、国公私の設置者別等の役割分担の在り方等を検討するため、10月25日に中央教育審議会大学分科会に設置された「高等教育の在り方に関する特別部会」の初会合が11月29日に文部科学省内で開かれた。部会長には大学分科会長の永田恭介・筑波大学長が就任、委員は臨時委員を加え14人と比較的小規模体制で、その中に私大関係者としては、伊藤公平・慶應義塾長、大野博之・国際学院埼玉短期大学理事長・学長、大森昭生・共愛学園前橋国際大学・短期大学部学長らが参加している。


 冒頭、永田部会長は、大学は教育、研究で社会に貢献することが責務で、わが国の知の総和を増やしていく必要があることなど留学生や社会人学生も含め質的向上の重要性を強調、文科省の政策につながる具体的提案、審議を要請した。


 続いて文科省の池田貴城・高等教育局長は、今学んでいる子供たちが中心となって活躍する21世紀半ばの社会においては、日本のこれまでの社会の仕組みの延長線上では対応できない事態に直面すること、高等教育も大きな転換点に立っており、少子化の進行については個々の大学の努力では対応しきれないような深刻な状況だなどと説明、2040年以降の社会を見据えた高等教育の目指すべき姿、その実現方策などの審議を要請した。その後、事務局(文科省)から9月25日に盛山正仁大臣から諮問された内容や、最近の中教審総会や大学分科会で出された関連する意見等が簡潔に紹介された。


 続いて2人の専門家からのヒアリングが行われ、濱中義隆・国立教育政策研究所高等教育研究部長が、「大学進学率60%時代の高等教育を考えるために」と題して、また同特別部会委員で社会学者の吉見俊哉・國學院大學観光まちづくり学部教授、元東京大学副学長)が、「急速な少子化の進行と高等教育の未来」と題してそれぞれ意見発表を行った。


 この中で濱中氏は2040年には18歳人口が現在の7割にまで減少すること、産業構造・職業構造の転換を考えれば高校新卒者の進学需要は今後も減退するとは考えにくいこと、進学から将来的なリターンに不確実性を伴うノンエリート層(量的拡大を牽引する学力中〜下位層)の進学機会や費用負担がどうあるべきかが問われていること、教育の質を促すような大学間競争をいかに導くかが重要で、そのほか、ゆるやかな「公立大学化」も選択肢の一つで、機能分化を更に進めて「種別化」も検討せざるを得ないのではないか、などと述べた。


 吉見委員は、科目過多の授業体制から抜け出して、大学は意欲ある優れた教師と学生の出会いの場であるべきで、「多く、軽く」から「少なく、重く」への転換が必要で、各週2〜3回の開講、予習・復習(実質的な学修時間)の徹底、4年間で学ぶ30〜35科目の学生視点での設計、TAの日本的解釈の是正(キャリアとしてのTA、学生=主役、TA=わき役、教授=演出家)、データサイエンス⇔法学、医学⇔哲学など複眼のカリキュラム設計(文理を越境する教育体制)、研究、教育に加え、社会的実践が重要であり、人生の中で3回大学に入るという、大学のマルチステージ化の必要性を指摘した。


こうした意見発表に対して、特別部会の委員からは、「大学は社会からどう考えられているのか、整理が必要」、「授業料のアップは避けて通れない。国立大学はもっと授業料を上げていってほしい。そうでないと私大は上げられない。クオーター制を実施しているが、効果が上がっている」「大規模大学は、今年から来年あたりに授業料を上げていくが、地方の小規模大学にとって値上げは厳しい」などの意見が聞かれた。


 記事中に記載のあった委員以外の委員は次の各氏。▽吉岡知哉・独立行政法人日本学生支援機構理事長▽小林浩・リクルート進学総研所長▽中村和彦・山梨大学長▽濱田州博・公立諏訪東京理科大学長▽平子裕志・ANAホールディングス取締役副会長▽堀有喜衣・独立行政法人労働政策研究・研修機構人材開発部門統括研究員▽益戸正樹・UiPath株式会社特別顧問▽松塚ゆかり・一橋大学森有礼高等教育国際流動化機構教授▽両角亜希子・東京大学大学院教育学研究科教授。


第1回中教審高等教育の在り方に関する特別部会

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