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記事2023年12月13日 2632号 (1面) 
わが国高校生学力は世界トップクラス
OECD PISA2022結果公表
数学的、科学的リテラシー第1位(加盟国中)
読解力も前回調査と比べて大きく上昇

欧米諸国や日本など38カ国(2022年9月時点)で構成する経済協力開発機構(OECD)は12月5日、おおむね3年ごとに行う15歳を対象にした学習到達度調査「PISA2022」の結果を公表した。今回の調査は数学的リテラシーを中心に、読解力、科学的リテラシーの3分野で実施し、調査には81カ国・地域から約69万人が参加。日本からは全国の高等学校、中等教育学校後期課程、高等専門学校の1年生のうち、国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)の約6千人が参加した。調査結果によると、日本は参加国中、数学的リテラシーで5位(加盟国中では1位)、読解力で3位(同2位)、科学的リテラシーで2位(同1位)と、3分野全てで世界トップレベルだった。


前回の2018年調査と比べ、OECD平均得点が低下した一方で、日本は3分野全てで平均得点が上昇した。今回の結果について、OECDは、「新型コロナウイルス感染症による休校期間が日本は他国に比べて短かったことが影響した可能性がある」と指摘している。そのほかわが国でICT環境の整備が進みコンピュータ使用型調査(CBT)でのICT機器の使用に慣れたことなども影響しているようだ。2018年調査では、日本の読解力は参加国・地域中15位と落ち込んだが、今回は復活を見せた。全参加国・地域中、シンガポールが3分野全てで世界1位となった。同調査は義務教育修了段階の15歳の生徒が持っている知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測ることを目的として調査。  


調査結果全体を見ると、社会経済文化的背景(ESCS)の水準が高いほど習熟度レベルが高い生徒の割合が多く、低いほど習熟度レベルが低い生徒の割合が多い傾向が見られ、OECD平均と同様な傾向が見られたが、数学的リテラシーの平均得点が高い国の中では、日本はESCS水準別に見た数学的リテラシーの差が小さい国の一つで、かつ、ESCSが生徒の得点に影響を及ぼす度合いが低い国の一つだ。  


今回の調査の中心となった「数学的リテラシー」とは、数学的に推論し、現実世界のさまざまな文脈の中で問題を解決するために数学を定式化し、活用し、解釈する個人の能力のこと。生徒に対する質問調査では、「数学の授業の規律ある雰囲気」指標はOECD加盟国中、日本が第1位、また「数学の授業における教師の支援」指標はOECD加盟国中第8位で、日本の生徒は数学の授業で教師のサポートを受けていると感じているが、OECD平均と比べて、日本の生徒は実生活の課題を数学を使って解決する自信が低く、実際の数学の授業で実生活の事象と関連付けてた学習経験が少ないことなども分かった。  


そのほか、日本の各教科の授業でのICTの利用については、前回調査以降、わが国の高校等におけるICT環境整備は進んだものの、OECD諸国と比較すると活用頻度は低く、ICTを用いた探究型の教育の頻度指標もOECD平均を下回っていた。 


12月4日にOECD東京センターが行った事前ブリーフィングでは、OECD教育・スキル局長のアンドレアス・シュライヒャー氏は、シンガポールが良い結果を収めた理由について、「カリキュラムに明確な定義があり生徒への要求が高いこと、教員の技能開発に力を入れ、キャリアの選択肢が多いこと、スマートテックの積極的な活用、教育政策の一貫性が良い結果の理由と考えられ、シンガポールからは学ぶべきことが多い」と述べた。  


また、数学的リテラシーのジェンダーギャップについて、「全体的にジェンダーギャップは解消されつつあるが、日本は、数学的リテラシーのトップクラスの点数にいる生徒は男子の方が多い。平均点的に数学ができる女子ではなく、トップクラスの女子を育てる数学教育が必要ではないか」と話した。 


OECDは欧米諸国、日本など先進38カ国の加盟国で構成され、さまざまな分野で政策調整・協力、意見交換などを行う国際機関。

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