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記事2023年10月3日 2625号 (1面) 
将来社会を見据えた高等教育の在り方について諮問
中教審に 急速な少子化が進行
高等教育の役割分担など検討へ

 文部科学省は9月25日に第137回中央教育審議会(会長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)総会を対面(同省講堂)とオンラインのハイブリッド形式で開催した。総会では、盛山正仁文部科学大臣が、少子化が急速に進行する中で、将来の社会を見据えた高等教育の在り方を中教審に諮問した。諮問では、18歳人口の減少により、今後の大学入学者の減少が見込まれるが、国の持続的な成長のためには人材育成と知的創造活動の中核となる高等教育機関の役割が一層重要となり、AIでは代替えできない役割を実行できる人材の育成が必要と諮問理由を説明した。


 諮問された四つの主な検討事項は次のとおり。


 (1)2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿:時代を担う人材に必要とされる資質・能力の育成に向け、高等教育機関で取り組むべき具体的方策、(2)今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域での質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方:大学入学者の減少、地域の状況の違いを踏まえ、教育研究の充実、高等教育機関間の連携強化、再編・統合等の促進、情報公表の方策の検討、(3)国公私の設置者別等の役割分担の在り方:国公私の設置者別、大学、短大、高専、専門職大学、専門学校など機関別の役割の在り方や果たすべき役割・機能、その実現方策、(4)高等教育の改革を支える支援方策の在り方:(1)〜(3)を踏まえ、教育研究を支える基盤的経費や競争的研究費などの充実、民間投資など多様な財源の確保の観点も含めた、今後の高等教育機関や学生への支援方策の在り方。


今回の諮問に関して中教審委員からは、「都道府県でどのような人材育成をするのか明らかにし、国立、私立、公立大学間で特色を生かした役割分担をしてはどうか。それを大学任せにするのではなく、文科省が介入してほしい」「企業では学び直しのニーズが高い。リカレント教育に大学の存在価値を発揮するチャンスがある」「進学校では、大学入試の学習が優先で、探究学習が形骸化しているとの話を聞く。リカレント教育がベースになれば18歳で大学入学する必要性はなくなる。学びの時間軸を変えたい」などの意見が出された。


また8月28日に中教審初等中等教育分科会の質の高い教師の確保特別部会(部会長=貞広斎子・千葉大学教授)が取りまとめた「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策」について文科省から説明があった。


緊急提言では、(1)学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進、(2)学校での働き方改革の実効性の向上、(3)持続可能な勤務環境整備などの支援の充実の3点を直ちに取り組むべき事項とした。


具体策は、標準授業時数を大幅に上回っている学校の授業時数の見直し、学校行事の精選・簡素化、ICTの活用による校務の効率化の推進、保護者からの過剰な苦情に対する行政による支援体制の構築、小学校高学年の教科担任制の強化、教員業務支援員の全小中学校への配置、大学と教育委員会による教員養成課程の見直しや地域枠の設定、奨学金の返還支援の速やかな検討などだ。


緊急提言に対して中教審委員からは「中教審と現場にはギャップがある。緊急提言の本質が学校に伝わらず、提言にある用語だけに着目されると負担感が増すだけ。戦略的な広報が必要」「教育の質を下げて働き方改革を行うという保護者に間違った解釈をされる恐れがある。学校の働き方改革が、学校関係者以外に届いていない」「企業の視点として、先生の業務の実態把握がまず必要だ。行うべきことを数値に置き換え、目標も数値化させるべきだ」などの意見があった。


さらに中教審生涯学習分科会の社会教育人材部会(部会長=牧野篤・東京大学大学院教授)がまとめた「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方についての中間的まとめ」に関しても報告があり、社会教育主事と社会教育士の役割の明確化と配置促進が提言された。


社会教育人材の量的拡大には、社会教育主事講習の定員の拡大が急務で、柔軟な履修方法による選択肢の拡大や講習科目の提供方法の弾力化などが考えられる、と指摘している。


文化庁からは、喫緊の課題である日本語教育の環境整備のために、日本語教育機関を認定し、日本語教育機関の教員資格を創設する日本語教育機関認定法が今年6月に公布された旨の報告があった。


中教審総会で諮問を行う盛山大臣(右)

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