中央教育審議会の第12回教育振興基本計画部会(部会長=渡邉光一郎・第一生命ホールディングス株式会社取締役会長)が1月13日にオンライン形式で開催された。
初めに前回の会議で出された素案に審議内容を踏まえて追加、修正された審議経過報告案の説明があった。
報告案では新たに教育投資の記述が加えられた。創造性を発揮し、付加価値を生み出す原動力は人であり、人への投資を通じた「成長と分配の好循環」を生み出すために教育への効果的な投資を図る必要があると、教育投資の意義が示された。また、未来への投資である教育投資は社会全体で確保するとした。
現状の教育投資を国際的なデータから見ると、公財教育支出総額をGDP比で見た場合、就学前教育段階から高等教育段階において、OECD諸国平均が4・4%なのに対して、日本は3・0%、在学者1人当たりの公財政教育支出額では、OECD諸国平均1万161ドルに対し、日本は8944ドル(いずれも2019年度)で、政府はさまざまな教育課題に教育投資を確保する必要がある、としている。
教育段階別に見た必要な教育投資として、初等中等教育段階では、GIGAスクール構想での端末活用の推進や、自治体間格差の解消に向けた取り組み、学校の望ましい指導体制の構築、校務DXの推進に向けた環境整備などを挙げている。
高等教育段階では、国立大学法人運営費交付金や私学助成に多元的な財政基盤の確立などを進める。デジタルやグリーンなど成長分野をけん引する高度専門人材の育成に向けて、大学、高専が学部転換などの改革に踏み切れるように、新たに創設する基金を活用し支援。また10兆円規模の大学ファンドを通じて、世界最高水準の研究大学の実現を目指し、若手研究者の安定的雇用の確保を図り、優秀な博士課程学生を支援する、としている。
教育投資には、公財政支出、家計による負担に加え、寄付やボランティアなどの人的貢献、企業のCSR活動などの取り組みが含まれる。日本では諸外国と比較し寄付が少なく、寄付文化を醸成する必要があるとした。
審議経過報告案に対して、委員からは「教育投資の効果で、金額では計れない価値も加えたい」、「教育投資を行うかの判断には収益は避けて通れない。社会的に不利な状況にある人たちに教育投資することで社会的不平等を解消するなど、目標はさまざまで、国民の理解を得るためには、投資の効果が上がったと示すことが重要。この案に示されているEBPM(証拠に基づく政策立案)は投資へのフィードバックが薄いので、明確にさせたい」など、教育投資の効果、価値をめぐる論議が活発に行われた。
教育投資のための寄付文化の醸成について「ふるさと納税のように、次世代のために使える教育納税の仕組みもありうるのではないか。具体的なあり方を検討したい」といった意見が出された。
永田恭介副部会長(筑波大学学長)は「教育における少子化への対応に触れられていない。人口が少なくなると、一人一人の能力を上げていかなければならないので、学びの高度化が必要」と少子化への対応を求めた。
最後に渡邉部会長は「教育への投資は未来への投資である。その効果は短期間に出るものではなく、世代を越える場合もあるだろう。財政が厳しい時ほど未来への投資が必要になる」と述べた。
今回の会議の論議を踏まえて審議経過案を修正し、パブリックコメントにかける。