こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2023年1月13日号二ュース >> VIEW

記事2023年1月13日 2600号 (1面) 
第170回大学分科会を開催
文理横断・融合やST比など
大学振興部会等の審議状況等を検討

 中央教育審議会大学分科会(分科会長=永田恭介・筑波大学長)は昨年12月21日、第170回会議を開き事務局・文部科学省から、(1)中教審大学振興部会の議論の進ちょく状況、(2)同教育振興基本計画部会の議論の進ちょく状況、(3)大学・高専の学部再編等における特定成長分野への転換等支援のための約3千億円の基金創設、(4)昨年10月の大学設置基準等の改正で新たに実施する教育課程等の特例制度の4点について説明を受け、委員からは改めて高大接続改革の必要性等が指摘された。


 このうち(1)の大学振興部会に関しては、事務局から同部会の論点とされている文理横断・文理融合教育の推進、「出口における質保証」の充実・強化について議論の整理(たたき台)と、高等教育機関を取り巻く環境が一層厳しくなる中で「学生保護の仕組みの整備」に関する課題や論点を巡る審議状況等が報告された後、委員からは数多くの意見が出された。


 文理横断・文理融合教育に関してたたき台では、主専攻・副専攻の活用等により「文理複眼」的思考力等を涵養する必要性等が記述されているが、委員からは「教員のコラボレーションは想像以上に難しい。大学への何らかの支援が必要だ」「自分の足場(専門知)がしっかりしないまま文理横断・文理融合に入ると、何を学んだのか、となってしまう」といった意見が出されたほか、高校の早い段階で進学先の文理選択が行われていることを懸念する意見、結局、問題は大学入試に起因していること、大学入学資格をもっと明確に打ち出すことを求める意見、初等中等教育と高等教育の一層の連携の重要性を指摘する意見等が聞かれた。また「出口における質保証」に関してたたき台では卒業論文・卒業研究、ゼミナール教育の充実、教員1人当たりの学生数(ST比)、DPに修得単位数以外の学修成果に関する卒業要件を規定することなどに言及。ST比の改善については政府の教育未来創造会議が第一次提言の中でその必要性を指摘したが、大学分科会ではST比を教育の質保証における遵守すべき基準とすることに関しては、国際的動向も含め更なる研究・知見の蓄積を要する課題で、新たに導入された基幹教員制度等が教育研究体制等にどのような影響を及ぼしていくかを評価・検証すること、単なる人数比だけではなく、きめ細かな情報公表に努めることなどを提言している。


 こうした整理に委員からは、「ゼミ、卒論の方が国際標準だと思うべきだ」「国として卒論の実態把握が必要と言及すべきだ」「ST比に問題があることは以前から広く知られている」との意見が出された。そのほか「非大学型の高等教育機関の振興策に言及してほしい」との意見もあった。


 (2)の教育振興基本計画部会に関しては、令和4年度内に答申する予定で、この日は次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過報告の素案のうち高等教育に関わる部分を中心に事務局が説明。委員からは少子化への対応の重要性が複数指摘され、「日本型のウェルビーイングとグローバルなウェルビーイングとの齟齬が生じないようにすべきだ」「大学入学共通テストを前年の7月に行うべきだ」といった意見も出された。


 (3)の基金創設(本紙令和4年12月13日号1面参照)に関しては、歓迎する意見が複数聞かれたが、助成に当たっては、「大都市圏の大学中心とならないように」、「地方の小規模大学でも使いやすいスキームとしてほしい」、「私大の理工系学部の定員充足率はどうなっているのか」などの声が聞かれた。実施に当たっては文科大臣が基本指針を策定するが、その前に中教審に意見聴取することになっている。


 (4)の特例制度は、申請の1次締め切りが終了、2次締め切りは令和4年度末。簡易審査となるモデルケースに沿った申請((1)遠隔授業の60単位上限、(2)授業科目の自ら開設の原則)と型に捉われない多様で先導的な取り組みの申請がある。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞