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記事2022年9月3日 2588号 (1面) 
文科省・通信制高校の在り方会議が議論終える
審議まとめ案
教員等数の見直し巡り
意見が分かれ、座長等に一任

 文部科学省の「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議(座長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は、8月29日、第10回会議を開き「審議まとめ案」を審議し、意見の集約ができなかった一部を除き全委員が了承、11カ月に及ぶ審議を終えた。今後の扱いについては荒瀬座長、日永龍彦副座長(山梨大学大学教育センター教授)、事務局(同省)に一任となった。


 意見がまとまらなかった点は、今回の審議まとめ案の中核となる「取るべき対応策」の中の指導体制の在り方に盛り込まれた「教諭等の指導体制の確保と規模の規制の見直し」の中の記述。


 平成16年以前、通信制高校は生徒数に応じて教員数が規定されていたが、同年の大綱化以降、「実施校における通信制の課程に係る副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭及び教諭の数は5人以上とし、かつ、教育上支障がないものとする」と規制緩和された。しかし通信制課程の入学者がかつての勤労学生から近年では不登校経験者など多様化し、全日制にも増してきめ細かな指導が求められることや、大綱化後に設置された通信制高校では旧規定を満たさない学校が58%にも及ぶことなどから、審議まとめ案では「少なくとも生徒数80人当たり教諭等が1名以上必要」との基準を設定すること、これは最低限の基準であることなどが提言されている。


 こうした記述に、複数の委員から数字が独り歩きすることへの懸念や、通信制課程には多様な生徒が在籍することなどを挙げて、「通信制課程が適法性を前提としながらも多様性が発揮できる方向性にしてほしい」といった意見などが聞かれた。


 その一方で、別の複数の委員からは、教育の質を担保するためには数的な規制が必要であり、審議まとめ案については修正の必要性はないとする意見が出された。多くの問題に直面する生徒を適切に指導するには80人でも多いと学校現場で校長を務める委員が語っており、また同会議でも一部の通信制高校での不適切な学校運営等の実態がしばしば報告され、所轄庁の実態把握、指導が難しいなど制度的問題点も明らかになっており、そうした改善が急務というのが今回の会議の当初からの検討課題だった。


 審議まとめ案では、そのほか多様なメディアを利用した学習による面接指導等時間数の減免の適正化、第三者評価の実施機関の体制整備の推進、所轄庁による指導力の向上、都道府県間の連携協力体制の構築などを提言している。


  提言を受けた後、文科省は高校通信制教育のガイドラインを改訂するほか、各学校への実態調査、各学校等への財政・人材等の支援、サテライト施設における定員の設定、設置認可、指導監督等に関する権限の在り方、通信制課程「発」の新たな教育の可能性の検討等を進めていく意向。


第10回通信制高校の在り方会議

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