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記事2022年9月23日 2590号 (1面) 
第4回中教審大学振興部会を開催
文理横断・融合教育を議論
「出口の質保証」の検討も開始

 中央教育審議会大学分科会大学振興部会(部会長=永田恭介・筑波大学学長)の第4回会議が9月14日、オンラインで開かれた。前回に続き経済団体や企業関係者からヒアリングを行ったほか、同部会の三つの審議テーマのうち、先行して検討している文理横断・文理融合教育の意義や推進策について議論を深め、二つ目の審議テーマである大学教育における「出口の質保証」について議論を開始した。三つ目の審議テーマとしては今後、大学の「強み」と「特色」を生かした連携・統合、再編等による地域における学修者のアクセス機会の確保や学生保護の仕組みの整備、高等教育の規模の在り方等を検討する。


 このうち、文理横断・文理融合教育に関しては、第2回会議(7月11日)で行われた大学での実践事例の聴取も参考にまとめられた審議経過メモ(たたき台)が第3回会議(8月9日)で事務局(文部科学省)から示され、第4回ではたたき台の文字がなくなり審議経過メモという形で14ページの報告が示された。


 この問題については、「(文理横断・文理融合教育の在り方に関して)個人が文理両方(の知見)を持っているのか、専門家と専門家が協働する力の育成なのか正解が分からない」との委員の発言を皮切りに、「(ミネルバ大学の例を挙げ)個人の能力にも増して多様な能力をつなぎ合わせる力が大事なのではないか。生活を一緒にする、あるいはプロジェクトを行うことが重要」「われわれの議論の焦点は大学院で、専門の意味を問い直す必要がある。複眼的・俯瞰的資質能力を育てるべきだ」「エリートを育てることが重要」「大学の教員は文理融合の人材なのか、一人の教員で指導できるのか、大学でチーム・ティーチングの指導が必要なのか」との意見が聞かれた。


 その一方で議論が拡散し、総花的となっていることを懸念する意見も複数委員から聞かれた。


 一方、二つ目の審議テーマの「出口の質保証」とは、各大学において、密度の濃い主体的な学修を可能とする学修者本位の実現、ディプロマ・ポリシーに定める卒業生の資質・能力を保証する「出口の質保証」が徹底され、社会との「信頼と支援の好循環」を形成する仕組みづくりのこと。


 冒頭、事務局から主な論点として8項目が示された。8項目とは、(1)「出口の質保証」の意味するところは何か、(2)「出口の質保証」に密接に関わる取り組み、(3)成績評価への信頼性の確保や学修成果・教育成果の把握・可視化に向けた取り組み、(4)「密度の濃い主体的な学修」を実現する上で、ST比(教員1人当たりの学生数)の改善による教育体制の充実が必要か、(5)「密度の濃い主体的な学修」を促す観点から、各大学においてどのような教育課程上の工夫が重要か、(6)学修管理システム(LMS)の導入やオンラインによる遠隔教育の普及・進展は「出口の質保証」を徹底する上で、どのような効果があるのか、(7)「出口の質保証」がなされている大学・学部等を積極的に評価、支援していくための取り組み、(8)大学における「出口の質保証」の取り組みを進める上での産業界との連携・協力。


 こうした論点の提示に委員からは、「ST比をKPI(重要な業績評価指標)にするのはいかがか。学生が大学で何を学んだか、卒論にもっとスポットライトを当てたらいい」「学修成果の可視化が一番重要。GPA(学生の成績評価値)をもう少しちゃんと使うべきだ」「CAP制(学生の履修登録単位数の制限)を実質化したらどうか」「国立大学でも運営費交付金が減額され、ST比を簡単に小さくできない。むしろ密度の濃い教育を考えていくべきだ」「ST比の実態把握は必要」「企業と卒業検定を一緒にしたらいい」などの意見が出された。


 企業関係者からの意見聴取では、商社等で組織する一般社団法人日本貿易会の的場佳子・人事委員会委員長(伊藤忠商事株式会社人事・総務部長)が「働き方改革の進化を通じた企業価値の向上」と題して報告した。またこの日は欠席となった中教審大学院部会委員の迫田雷蔵・株式会社日立アカデミー取締役社長のヒアリング概要が文書で報告され、課題を見つける力・提起する力の重要性等が指摘された。


第4回中教審大学振興部会

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