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記事2022年9月23日 2590号 (1面) 
大学院段階の学生支援のための新たな制度検討会議が初会合
貸与奨学金の出世払いの仕組み創設など検討
日・豪・英制度比較など説明

 大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議(座長=小林雅之・桜美林大学教授)の第1回会合が9月13日、東京・霞が関の文部科学省で開催され、動画で同時配信された。同会議では教育未来創造会議等で提言された貸与型奨学金の出世払いの仕組みの創設等を検討する。


 初めに事務局から大学院の状況や学生への調査結果、奨学金の所得連動返還の仕組みの日本、豪州、英国の比較が説明された。


 大学院の状況については、修士課程・博士課程・専門職課程の学生数はここ数年あまり変わっていないが、10年前と比べると減少傾向にある。


 学部4年生を対象とした大学院進学の動向と経済的な支援に関する調査結果が報告された。調査対象は3000人。ただ、調査対象学生の在籍する大学は、東京大学等著名国公立大学11大学と慶應義塾大学等著名私立大学4大学だった。


 回答をみると、大学院への進学希望者は約6割、進学を希望しない学生は約4割だった。


 進学を希望しない学生に、当てはまる理由を聞いたところ、最も多かったのが、「大学院で学修・研究を深めたいという気持ちがあまりない」が36・9%、次いで「早く社会に出て仕事の経験を積みたい」が33・7%だった。一方、「経済的に家庭に頼ることが困難」が13・0%、「奨学金を借りることになるが、借金を背負うことは避けたい」は6・3%だった(1次回答のみの結果)。


 進学を希望しない学生に、「大学院において在学中は授業料を納めなくてよいが、大学院修了後の収入に応じて、無理なく授業料相当額を月々返済する」という制度(以下、新たな制度)が進路選択時にもしあったら、大学院に進学した可能性があると回答したのは約27%だった。一方、進学希望者では、新たな制度があったら「利用する」は40・9%だった。


 わが国の無利子奨学金(所得連動返還方式)と豪州・英国の類似制度も紹介された。それによると、支援形態は、日本は在学中の学生に現金を貸与するが、豪州・英国は、在学中には授業料を徴収しない(政府が授業料相当額を大学に支払う)。対象については、日本は学力・経済状況の要件があるが、豪州・英国は全員が利用可能(希望者は先払い)。


 返済の際の徴収方法は、日本はJASSO(日本学生支援機構)への口座振替、豪州・英国は税当局が源泉徴収する。返還額は、日本は課税所得の約9%、豪州は課税所得合計が約460万円を超えたら所得階層に応じて1〜10%、英国は年収が440万円を超えた場合、超えた額の9%(返済開始後から30年を超えた場合は徴収されない)。この結果、返済されない債券の割合は、日本が約2・8%、豪州が約15%、英国が30〜45%となっている。ただし豪州・英国は大学教育が無償から有償になったことでこの制度が導入された。


 検討会議の検討課題案として示されたのは、(1)授業料を在学中に不徴収とするための方策(代理受領等)、(2)対象学生、(3)「出世払い」の具体的方法、(4)その他関連して検討すべき論点。


 委員からは、現行の奨学金制度との整合性をとることや、新たな制度は救済なのか優秀者を対象とするのか、導入目的・ターゲットを明確にすべきだとの意見が複数出たほか、「豪州・英国は大学教育が無償から有償になった事例だ。日本とは事情が異なる。有償から始まった事例がほしい」「日本が豪州・英国のような仕組みにする場合、給付、回収をどうするか。文部科学省だけではできない」「豪州・英国は回収率が低い。日本でこの方式を取った場合、回収できない分は政府が負担するのか」「そもそも貸し過ぎではないか」「JASSOの活用も減っている。救済なら保護者の所得要件も必要」「出世払い(貸与)は、一時立て替えということなので、学生は評価しないだろう」。また財源について「豪州・英国のように全員対象なら財源はどうするのか」「JASSOだけでは難しい」「学部生から院生に移す方法もある」などの意見が聞かれた。


第1回大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議

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