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記事2022年9月13日 2589号 (1面) 
文科省の令和5年度概算要求
高等教育修学支援新制度事項要求に
所得中間層への支援、別途検討

 文部科学省は8月31日までに令和5年度概算要求を財務省に提出した。前号の私学助成関係要求に続き、今号では私立学校の学生や生徒等も対象となる修学支援関係予算要求を報告する。主なものは高等教育の修学支援新制度や奨学金の貸与事業、高校生等就学支援金、高校生等奨学給付金等だ。なお高等教育の修学支援新制度関係予算は少子化対策のための社会保障関係費としてこども家庭庁に予算計上し、文科省が執行に当たる仕組み。


 高等教育の修学支援新制度(授業料等減免・給付型奨学金)は現時点では「事項要求」となっており、具体的な要求額は示されていない。予算額は今後の予算折衝の中で決定する。前年度予算額は5196億円。


 この事業は大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生が対象。進学前は学習意欲を確認、大学等へ進学後は学修状況に厳しい要件が課される。また支援措置の対象となる大学等(進学先)についても、学問追究と実践教育のバランスの取れた点や、経営的に問題のないことなどが要件となる。このうち授業料減免では、例えば私立大学の学生の場合、入学金として約26万円、授業料として約70万円減免される(いずれも年額)。 


 また同時に学業に専念するため必要な学生生活が賄えるよう給付型奨学金(返済の義務なし)が独立行政法人日本学生支援機構から学生に支給される。支給額(年額)は、例えば私立の大学・短期大学・専門学校の自宅生で約46万円、自宅外生で約91万円。


 また、同機構が実施する奨学金の貸与事業についても無利子奨学金については事項要求となっている。前年度の予算額(政府貸付金)は1015億円。令和5年度要求では貸与基準を満たす希望者全員に無利子奨学金を貸与し、有利子奨学金に関しては70万9千人への貸与を計画している。無利子奨学金の貸与を受けるには、家計基準、高校評定平均値3・5以上(予約採用時)の基準がある。


 高等教育の修学支援新制度に関しては、中間所得層への支援の強化が課題とされており、教育未来創造会議の第1次提言等を受けて文部科学省に「高等教育の修学支援新制度の在り方検討会議」が設置され、8月24日に初会合が開かれている。中間所得層のうち多子世帯、理工系・農学系で学ぶ学生への支援、対象となる大学等について機関要件の厳格化(定員充足率が収容定員の8割以上)等が検討される予定。座長は福原紀彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長。


  高校生等への修学支援=令和5年度要求額4313億円。前年度比13億円の増額。その中身は、(1)高等学校等就学支援金等が4143億6800万円、(2)高等学校等修学支援事業費補助金が7億1500万円、(3)高校生等奨学給付金が162億2100万円。このうち(1)は高校生等の授業料に充てるため、年収約910万円未満の世帯の生徒を対象に公立高校の授業料(11万8千円)分の就学支援金を支給する。設置者が代理受領する。世帯年収590万円までは私立高校生等への加算措置があり、39万6千円まで支援する。令和5年度は基本的制度に変更はない見通しだが、止むを得ない理由により世帯の収入が著しく低下した場合の支援の仕組みを創設することを要求している。(2)は都道府県事業等に対する補助で、高校等で学び直す者(補助率10分の10)、高校等専攻科の生徒(補助率2分の1)に対する修学支援等がその中身。(3)は、生活保護世帯、非課税世帯の生徒について授業料以外の教育費負担を軽減するための給付金。都道府県が実施、国がその一部を補助する。国公立私立とも給付額非課税世帯の全日制に通学している生徒に年額で増額支給するようよう求めている。令和5年度要望としては、非課税世帯の全日制等(第1子、第2子以降)、通信制・専攻科の給付額の増額を求めている。


 このほか私立小・中・高校等に入学後、家計が急変して授業料の納付が困難となった児童生徒に最長で小学校で6年間、中学校で3年間支援する措置もある。令和5年度の要求額は10億円。

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