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記事2022年8月3日 2586号 (1面) 
部活動で公私間格差懸念も 中教審第128回教育課程部会
部活動の扱い、位置付け
次期学習指導要領で確定か

 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(部会長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は7月29日、WEB会議と対面によるハイブリッド方式で第128回会議を開き、大字弘一郎委員(全国連合小学校長会会長)と平井邦明委員(全日本中学校長会会長)から公立小、中学校における学習指導要領の実施状況や課題等について聴取した。


 また会議の最終盤に行われた、中学校における運動部・文化部の部活動の地域移行に関する意見交換で市川伸一委員(東京大学名誉教授)から、「(公立では)学校が運営主体として行う運動部部活動は禁止していくと理解した。いい方向性だと思うが、私立学校をどう扱うのか伺いたい。部活動は学校の“売り”になる。私立学校が手放すことはないだろう。新たな公私間格差を生むことにならないか心配している。私立、私立へという動きが益々加速されるだろう。全体としてどういうことを考慮していくべきか、私立学校を含めた議論をしていくべきだ」などと問題提起した。


 こうした問題提起にスポーツ庁地域スポーツ課の橋田裕課長は、令和5年度から部活動の地域移行を開始、令和7年度までの改革集中期間の検証等を参考にして改めて議論していく考えを明らかにし、荒瀬部会長の確認に対して次期学習指導要領の改訂(本則での部活動の扱いをどうするか)が最終的な結論であることを示唆した。


 これに対して日本私立中学高等学校連合会会長の吉田晋委員は、「団体(中体連)側の目、子供の目をしっかり捉えて議論してほしい。令和5年度から、(地域移行が)そう簡単にできるのか」などと語った。


 このほか、末冨芳委員(日本大学教授)が、部活動の強制加入や不適切な指導の根絶に向けた学習指導要領での位置付けの見直し(総則の改訂)、高校入試の調査書での部活動の評価(簡略な活動歴、大会成績のみ)の改革の必要性を訴えた。


  会議の冒頭から行われた学習指導要領の実施状況や課題等をついての聴取では、大字委員が全連小の全会員数の4%に当たる747の公立小学校を対象とした調査(調査期間:令和3年7月27日から9月1日)の結果を報告した。その中ではICTの利活用や情報教育に重点的に取り組む学校が令和2年度の60・2%から90・9%に急増、しかしプログラミング教育や外国語教育に重点的に取り組む学校は2年から3年度にかけ大きく低下していた。またコロナウイルス感染症予防を進める中、学習指導要領を着実に実施する上での課題に関しては(三つ以内で選択)、「多様な地域人材の活用や連携」が最も多く55・3%、次いで「探究的な学びの充実を図った授業改善」が49・4%で第2位だった。


  一方、平井委員は令和3年10月に実施した調査(対象:全国からバランスよく抽出した公立中学校544校)の結果を平成30年度、令和元年度、2年度と比較し報告した。その中では「主体的・対話的で深い学び」の主な指導方法のうち、重視して取り組んでいる学習(複数選択可)では、「子供同士の協働(グループ〈ペア〉ディスカッション、ディベート、グループワーク等)が83・6%で最も多く、「主体的・対話的で深い学び」を実施する上での課題としては、その指導方法の理解や研修の機会が最も多く挙げられていた。またカリキュラム・マネジメントに関して、3分の2の学校は教科横断的な視点での取り組み、必要な人的・物的体制、時間確保が実施できているとは言えない状況だった。


 こうした報告に教育課程部会委員からは、「ただ話し合いさえすればいいと活動だけを追って深い学びがない授業もある」「教員は十分に社会に開かれた教育課程を認識しているのか」「(状況を把握するには)教員へのアンケートより、教員が皆で語り合う場、教員の声を聴くことが重要」などといった意見が聞かれた。その中で荒瀬部会長は、管理機関や国による教員が学習指導要領の実現に専念できる条件整備の重要性を強調。またしっかりとした枠組みを堅持しながら教科横断的な学びを行っている。それだったら枠自体を考え直した方がいいと思った」などと語っている。


7月29日の教育課程部会

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