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記事2022年8月13日 2587号 (1面) 
文化部活動の地域移行で提言提出
地域の状況に応じ柔軟な体制づくり推進
指導者の確保には人材バンクの設置など提言

 文化庁の文化部活動の地域移行に関する検討会議(座長=北山敦康・静岡大学名誉教授)の第7回会議が8月9日、オンラインで開催され、提言が北山座長から中原裕彦審議官に手渡された。


 提言では、地域移行には、地域の文化芸術環境を速やかに整備し、平日の文化部活動の地域移行も視野に入れつつ、休日の文化部活動から段階的に地域移行し、移行の在り方や方法は地域の状況に応じ柔軟な体制づくりを進めること。財政支援として、国等の公的支援だけでなく企業による基金の設立なども想定されること。指導者の確保については、人材バンクを設けての外部指導者の派遣、遠隔地の指導者によるICTを活用した練習・指導、指導を希望する教師には兼職兼業を許可することなどを求めている。また円滑な学校施設の利用のためのルールの策定や、大会・コンクールの在り方については、参加資格の緩和、大会等引率者の規定の見直しの検討。移行に伴い支払いが生じるとみられる会費については、保護者に大きな負担とならないよう施設等の低廉な額での利用、地方公共団体や国からの支援などのほか、経済的に困窮する家庭の生徒への支援のため地方公共団体の補助や地元企業の寄附等による基金の創設、国による支援方策の検討を提言。このほか保険の在り方、学習指導要領等の見直し、高校入試における部活動の評価の在り方の検討についても言及している。


 会議では全国知事会・全国町村会からの意見が紹介された。


 全国知事会に関しては、(1)地域の実情に応じた実施、(2)学校部活動の教育的意義と地域移行との関係性を丁寧に説明し、十分な広報を行うこと、移行の手順や具体的な取り組み内容を早急に例示すること、また著作権の問題についても理解が深められる支援、(3)必要な取り組みの推進と財政措置として、指導者となる人材確保、国の確実な財政措置、運動部活動におけるスポーツ振興くじの創設、経済的困窮家庭への国の財政措置、(4)教職員の兼職兼業の運用指針の提示、(5)保護者や生徒の意見を十分に反映した取り組みなどを求めていることが報告された。


 全国町村会に関しては、(1)受け皿となる文化芸術団体等が少ない、指導者人材の不足などについて国による環境整備と財政措置、(2)意欲ある教員の兼職兼業の基準を明確に示すこと、保護者負担に対する財政支援、(3)地域移行では課題や問題点を検証しつつ都道府県・市町村・関係団体等の意見を聞きながら慎重に進めること、(4)移行は柔軟に進めること、全国一律に移行時期を限定して進めることのないようにとの要望が出された。


  委員からは、「文化部活動が衰退していくことはあってはならない」「今まで先生たちがやってきたことへの敬意を示してから始めてほしい。全国一律ではなく、違いを認め個性が出るような取り組みを」「子供たちの活動をどう保障していくのか、再構築しないといけない」「部活動を民間・地域に移行することで、大人の都合で子供たちが搾取されるなどいろいろなことが起きることを危惧している」「受益者負担といって、(生徒・保護者の)負担が大きくなってはいけない」「地域での指導者は少ない。地方では自治体の負担増も難しい。受益者負担が増えるのではないか」など、文化活動の衰退や安全性への危惧、生徒・保護者の負担増を懸念する意見が複数、聞かれた。


 一方で、「これが地域振興の町づくりのチャンスとなることを願う」「兼職兼業の先生方には外部指導者と同様の時給を支払う体制をとってほしい」との意見のほか、「部活動改革の断行こそが(働き方改革)問題の解決の方策であるかのような報道もあったが、教員の忙しさは部活動のみが原因ではない。教員数の適正化、仕事量の低下等に全く手を付けず、部活動を地域移行すればうまくいくだろうというのは理解しがたい。今後問題が噴出するだろう」との厳しい指摘もあった。


 今回の提言の中で、私立学校に関しては、冒頭の「はじめに」の中で、「私立学校においても、これらの取組も参考にしながら、学校等の実情に応じて適切な指導体制の構築に取り組むことを望みたい」などと記述している。


 休日の文化部活動の地域移行の達成時期については、令和5年度の段階的移行開始から3年後の令和7年度末を目途としている。


中原審議官に提言を手渡す北山座長(右)

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