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記事2022年8月13日 2587号 (1面) 
中教審第3回大学振興部会を開催
経団連等からヒアリング行う
高校段階からの文・理コース分け解消を求める

 中央教育審議会大学分科会の大学振興部会(部会長=永田恭介・筑波大学長)は8月9日、第3回会議をWEB会議で開催し、日本経済団体連合会(略称:経団連)とSMBCバリュークリエーションからヒアリングを行った。最初に「大学教育に関する経団連の考え方〜文理融合・STEAM・リベラルアーツ教育、大学教育の質保証、情報公開〜」と題して、同連合会の長谷川知子常務理事が概略次のように話した。


 


 Society5.0において企業が求める能力・資質(産学協議会における合意内容)は、リテラシー(数理的推論、データ分析力など)、論理的思考力と規範的判断力、課題発見・解決力、未来社会を構想・設計する力、高度専門職に必要な知識・能力であり、これらを修得するための基盤となるリベラルアーツ教育が重要だ。大学教育では、(1)文理融合教育・STEAM教育・リベラルアーツ教育、(2)PBL等の課題発見・解決型教育、(3)専門教育、(4)数理・データサイエンス・AI教育、(5)リカレント教育が必要となる。文理融合教育等のためには、高校段階からの文系・理系のコース分けの解消が必要だ。


 


 続いて「SMBCグループにおける生産性向上の取り組みと文理融合人材の重要性」と題して、SMBCバリュークリエーションの山本慶・代表取締役が人材育成等について概略以下のように報告した。


 


 金融業界においてもIT・デジタルを取り込んだビジネス・業務の再構築が必要となっている。迅速な対応や付加価値創造のための余力を創出するための生産性の向上として、優秀かつ即戦力の現有人材の生産性向上を推進した。


 SMBCグループでは、業務効率化のためにPC上での業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用。RPAは人が行っていたPC上の業務を代替し、自動で行うシステムで、入力・集計作業、システム間の情報連携、大量の単純作業等を自動化し、業務を効率化するものだ。これまでRPAは人員削減ツールという概念だったが、これを覆して人が生き生きと働くためのサポートツールとして活用。業務効率化等により、従業員の余力を創出、付加価値業務へのチャレンジ等、生産性向上を実現する手法として確立した。SMBCグループは中期経営計画で、2020年3月までに1500人分の余力捻出を計画。目標を達成し、同年3月末までに2800人分の余力を捻出した。この人員余力は付加価値業務の拡大、働き方改革の推進、人員配置の最適化で活用した。


 SMBCグループでは、デジタル人材を育成するためにデジタル・ユニバーシティ研修を実施。全従業員対象のほか、目的に応じてツールやシステム活用、ロジカルシンキング等のビジスネスキル、具体的な営業トーク等、幅広い講座(スキル30講座・リテラシー40講座・マインド60講座)を実施している。


 研修を実施した結果、新たなキャリアにチャレンジする従業員や、一般職から企画業務に転身する行員も出ている。


 育成のポイントは、(1)1対1で現場従業員を徹底サポート、(2)ケース演習ではなく実業務を確実に自動化させる、(3)カウンセリングによるロボ開発スコープの選定。研修は応募制である。


 RPAやAIによって単純業務の効率化・代替が進む中では、リベラルアーツの学修を通して自らの価値を醸成し人間力を磨くことが重要だ。


 


 大学振興部会の委員から、価値醸成と人間力について質問された山本氏は「大学教育でコアの部分がしっかりしていれば得た知識を社会で応用するのは簡単だ」などと答えた。また、他の委員から「課題発見力というが、哲学や生き方がないと課題を発見できない。根源的なことが重要だ」「一つの意見に統一するのではなく大学の自由度を認めてほしい」などのほか、「経営者か明確な理念を示してくれないとも聞いた」との声も聞かれた。


8月9日の第3回大学振興部会

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