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全私学新聞

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記事2022年8月13日 2587号 (1面) 
全私学連合が文科省に令和5年度予算等で要望
国私間の公財政支出格差是正など要望
ICT環境整備補助拡充強化を

 幼稚園から大学までの私立学校5団体で組織する全私学連合(田中愛治代表=早稲田大学総長)は8月3日、文部科学省に義本博司・事務次官、丸山洋司・文部科学審議官、森晃憲・高等教育局私学部長等を訪ね、令和5年度私立学校関係政府予算や税制改正に関する要望文書を提出し、その実現を要請した。政府は今年6月7日に閣議決定した「骨太の方針2022」で、人への投資の抜本的強化を前面に打ち出しており、私学も教育・研究等のさらなる機能強化、有為な人材の育成等を通じて国や社会の発展に寄与していく考えで、環境整備に必要な予算の拡充等を要望した。


 例年、文科省は8月末に来年度予算の概算要求をまとめ、財務省に提出しているが、今回の私学側の要望は文科省の概算要求に私学側の要望事項が盛り込まれるよう、8月初旬に要請した。


 文科省を訪れたのは田中愛治・日本私立大学団体連合会会長(日本私立大学連盟会長)、本山和夫・日本私立大学協会副会長、関口修・日本私立短期大学協会会長、吉田晋・日本私立中学高等学校連合会会長、重永睦夫・日本私立小学校連合会会長、尾上正史・全日本私立幼稚園連合会副会長等。福原紀彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長も出席した。


 このうち私大関係では、最重点要望項目として、(1)授業料減免をはじめとする学生への経済支援に対する支援(特に所得中間層、大学院生、新型コロナウイルス感染症等による家計急変家庭の学生に)、(2)特色ある教育研究に対する支援(特に文理横断教育、数理・データサイエンス・AI教育の推進、ICTを活用した教育の推進、リカレント教育の推進、デジタル、グリーン(脱炭素化等)等成長分野関連の人材育成の推進に)、(3)グローバル化と地方創生推進に対する支援(特に海外からの学生受け入れや教員の招へい、学生や教職員の海外派遣ならびに教育環境の国際化の充実、地方・地域の知の拠点形成のための地方大学の振興、大都市大学と地方大学等との連携事業等を通じた人的好循環を生む仕組みづくりに)、(4)新型コロナウイルス感染症対策に対する支援(特に学生の感染防止対策、私立大学病院における医療・福祉系人材育成に)の4項目を要望した。


 私立短期大学に関しては、全体の約65%の学校が地方中小都市に設置され、地方の高等教育機関として大きな役割を担い、また女子の高等教育機関として中核的役割(学生の約88%が女子)を果たしていること、地域に根ざした身近な高等教育機関(自県内入学率約69%、卒業後自県内就職率約74%)として、幼稚園教諭、保育士、栄養士、看護師など多様な人材を養成していることから、短大の地方振興に見合った支援の充実を要望。また内閣府所管の「地方大学・地域産業創生交付金」等について短大が活用できるよう支援すること、地方公共団体が財政支援を行う場合の特別交付税措置による支援制度の拡充を要望した。


  私立中学高等学校に関しては、(1)私立高等学校等の経常費助成費等に対する補助の拡充強化(一般補助の拡充、教員の負担軽減、ICT活用指導力育成に資する補助の拡充、諸物価急騰への予算措置)、(2)私立高等学校等におけるICT環境の整備に対する補助の拡充強化(個人所有による1人1台端末化の実現に向け道を拓くこと、端末の保守・更新等に係る費用の検討も含め、補助の大幅な拡充、ICT関連機器・設備・校内ネットワーク環境の整備等の公私の別ない実現)、(3)私立高等学校等施設の耐震化およびコロナ禍、省エネ・脱炭素化における空調・換気設備等に対する補助の拡充強化(子供たちの生命と安全を守り、災害時には地域の避難場所としての役割を果たしている)、(4)私立中学高等学校の就学支援金等の拡充強化(年収590万円を境に大きな格差が生じ、都道府県間格差も大きいことからその格差是正等)、(5)日本私学教育研究所研究事業費等に対する補助の拡充強化等を要望した。


 私立小学校に関しては、(1)【経常費補助】私立小学校の経常費等に対する補助の拡充強化、(2)【保護者負担の軽減】公私間格差の是正、(3)【ICT関連】ICT環境整備に対する支援措置の拡充強化、(4)【危機管理】学校安全対策・環境整備に対する補助の拡充強化、(5)特別支援を要する児童に対する教育支援補助、(6)教職員の研修・研究への助成拡充の6項目の実現を要請した。


 私立幼稚園に関しては、(1)私立高等学校等経常費助成費補助制度(幼稚園分)の拡充等、(2)子ども・子育て支援新制度(公定価格の基本分単価の改善等)、(3)幼児教育の質の向上・多様な課題に対する園内体制・施設整備の支援、(4)新型コロナウイルス感染症への対応のための私立幼稚園等への支援・延長の充実を要望した。このほか関連して日本私立学校振興・共済事業団への予算措置の拡充、一般財団法人私学研修福祉会研修事業に関しては安定的な財政基盤の強化・財源確保方策等が要望された。


 一方、税制に関しては、教育費に係る経済的負担軽減のための措置の創設・拡充、学校法人に対する寄附促進のための措置の創設・拡充、学校法人の健全な財政基盤の確立に向けた優遇措置の創設・拡充、大規模災害等により被災した学校法人の復興のための特例措置の拡充、退職等年金給付の積立金に対する特別法人税の撤廃を求めた。


義本事務次官(中央左)に要望書提出


丸山文部科学審議官に要望


森私学部長(中央)に要望

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