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記事2022年7月3日 2583号 (1面) 
令和4年度第1回読書活動推進会議開催
来年度からの第5次基本計画審議
読書習慣形成やICT活用などを論点に

 文部科学省は6月29日、令和4年度第1回子供の読書活動推進に関する有識者会議を開催した。「子どもの読書活動に関する法律」に基づき、概ね5年に一度「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定され、今年度は平成30年に策定された第4次基本計画の最終年度。この有識者会議は、令和5年度からの第5次基本計画の策定に向け意見を聴取するため設置された。座長には秋田喜代美・学習院大学教授が就任した。


 最初に文科省から子供の読書活動の現状が報告された。調査によると、小、中、高校生の1カ月当たりの読書冊数は小、中学生では増加傾向にあるものの、高校生はほぼ横ばい。不読率(1カ月に1冊も読まなかった人の割合)は、最近10年間を見ると、小、中学生は改善傾向にあるが、高校生は50%前後を推移するなど依然として高い状況だ。高校生が本を読まない理由(上位3位)は、「他の活動等で時間がなかったから」64・5%、「他にしたいことがあったから」47・3%、「ふだんから本を読まないから」32・8%。


 文科省は高校生への読書の推進策として、限られた時間の中で読書の優先順位が上がるきっかけづくりをすること、高校生になるまでに読書習慣を形成することが必要であるとしている。


 電子書籍での読書状況は、電子書籍を読んでない割合が多いが、紙の本は読んでいないが、電子書籍は読んだとする層が少数ながらあった。


 子供の読書活動推進で電子書籍を活用した取り組みを行っている自治体は8・2%にとどまっており、その実施主体は公立図書館が最も多かった。具体的な取り組みは「公立図書館の設備や蔵書の充実」52・2%、「特別な配慮を必要とする子供たち向けの電子書籍の導入」33・6%などとなっている。


 続いて、文科省から同会議での三つの論点案の説明があった。(1)「発達段階や多様な特性に応じた読書習慣の形成」では、乳幼児期から読書習慣を形成するための効果的な取り組み主体的・対話的な深い学びの実現に向けた効果的な取り組み高校生が読書をするきっかけになるような効果的な取り組み特別な支援が必要な子供や外国籍の子供への読書活動の推進方策読書活動に関わる学校、図書館、NPOなどとの連携方策が具体的論点案として挙げられている。(2)「読書とICTのベストミックス」では、ICTの活用を読書活動にどう結び付けていくのか紙と電子書籍の強みを生かした読書活動をどのように考えるのか、を論点案としている。(3)「地方公共団体の推進体制」では、地方公共団体の読書活動推進計画の策定の促進地域間、学校間格差を解消するための方策読書活動を支える人材の育成方法を論点案としている。


 論点案について、委員からは高校生の不読率への方策に関して「高校生は探究学習への関心が高いので、これを好機と捉え、探究学習を通して本と出合い、小説を読むのとは異なる問題解決のための目的意識を持った読書をする場を設定していく」との意見があった。


 電子書籍の活用に関しては、「電子書籍か、紙の本かというメディアの違いではなく、問題なのは本の中身だ。興味を持って読んでもらえるコンテンツをどのように提供できるかが重要。それぞれの特徴を踏まえ、うまく活用していきたい」、「学校図書館単独で電子書籍を充実させるのは予算面で難しいので、地域で連携し、公立図書館から電子書籍を借りられるシステムをつくる」などの意見が出された。


 学校図書館のバリアフリー化に関しては、「特別支援学校の学校図書館では、通常学級の小中高と比較すると学校司書の配置率、図書標準の達成率に大きな開きがある。また小中高のバリアフリー図書館の整備も進んでいない。小中高でも特別な支援を必要とする子供たちが学んでいるので、学校図書館のバリアフリー化の展開も考えなければならない」など、2019年に制定された読書バリアフリー法の具体的な取り組みを求める意見も出された。


  最後に秋田座長が「読んだ本の冊数や時間よりも読書の経験やプロセスの質が問われる。本は大人から言われて読むものではなく、子供たちが主体的に仲間同士で紹介し合ったり、オンラインでつながったりし、参画していくことが重要である。第5次基本計画には子供の声を聞いていくことも必要だと考えている」とまとめた。

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