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記事2022年7月23日 2585号 (1面) 
中教審第108回大学院部会開催
人社系大学院への進学増目指して
改革の方向性などを示した中間とりまとめ了承

 中央教育審議会大学分科会大学院部会(部会長=湊長博・京都大学総長)は7月21日、オンラインで第108回会議を開いた。この日は、「人文科学・社会科学系における大学院教育改革の方向性」と題する同部会の中間とりまとめ案を審議。委員からさまざまな意見が出されたが、修文については部会長等に一任、中間とりまとめとすることを了承した。また人文科学・社会科学系の学部学生はなぜあまり大学院進学をしないのかなどを把握する調査の質問項目等について検討した。


 このうち同部会の中間とりまとめ案に関しては、世界的に社会経済活動が意味的価値(環境やガバナンス等)を重視する時代となり、価値発見・価値創造的な視座を提供する人文科学・社会科学分野に産業界等から高い期待が集まり、アカデミアに限らず、産業界、公的機関等あらゆるセクターで活躍する人文科学・社会科学系高度人材を育成する必要があり、待遇面(賃金)でも学部卒と比べ人文科学・社会科学系でも10〜30%上回っているものの、学部卒後、修士課程に進む学生は理工農系では3人に1人なのに対して、人文科学分野では約21人に1人、社会科学系では約28人に1人という状態。そのため社会的評価や認知不足、人材養成モデルが学生の幅広いキャリアパスを支えるものになっていないなど大学院側の課題について検証・解決を図り、学部学生が進学したくなる魅力ある環境を整えることを提言したもの。


 具体的な改革の方向性としては、民間等におけるロールモデルの周知と採用拡大、大学院では研究指導状況の可視化と業績評価、研究指導能力の高い教員へのインセンティブと学位授与に係る教員の意識改革、研究科別の標準修業年限と実績(修了生の就業年数等)の公表、産業界等のニーズや修了者のキャリアパスの把握、教育研究ネットワークによる学生のニーズに沿ったきめ細かな研究指導・組織的な指導体制の構築等を提言している。


 こうした中間とりまとめ案に関して委員からは、人社系大学院修了者への賃金プレミアムが本当に実情を反映しているのかといった質問のほか、「リアルな姿を教員たちに示さないと前に進まない」「社会に出てどのような働きができるのか、研究がメーンで、コースワーク(専門に縛られない柔軟性、社会的価値の判断・創出能力)に力を入れてこなかった」「大学院での指導がビジネスにも役立つことを指導する教員側も学ぶ側も忘れている」「産業界にはまず修士からというアプローチがいい」などの意見が聞かれたが、改革の方向性については委員の意見と大きな齟齬はないとして、湊部会長が修文を正副部会長に一任してもらえるかと打診、委員から反対はなく修文して中間とりまとめとすることが了承された。ただし産業界等への働きかけなど具体策等については引き続き部会で議論していく、とされた。


 この後、学部学生が人社系大学院にあまり進学しないことに関して、学生の思いやネックとなっていることなどを調査する調査の概要が事務局(文科省)から提案された。その後、委員が調査項目等について意見を述べ、就活の早期化の中で調査時期の重要性を指摘する意見、大学院に進学した理由の把握、社会に出て活躍するためには学部卒の段階で足りない力をどう埋めようと考えているかの調査の必要性を指摘する意見などが聞かれた。


 最後に、大学学部の設置基準改正で新設される基幹教員については、第107回部会で大学院部会としては連動を見送るとしたが、改めて時間を設け議論した結果を部会の最終結論とすることが提案され、了承された。

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