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記事2022年6月3日 2580号 (1面) 
規制改革推進会議 人への投資等で答申取りまとめる
都道府県での私立学校の設置審査実態を把握へ
経営困難校等の撤退等サポートも

 岸田文雄総理の諮問機関「規制改革推進会議」(議長=夏野剛・株式会社ドワンゴ代表取締役社長)は5月27日、第13回会議をオンラインで開き、「規制改革推進に関する答申」を取りまとめた。わが国の経済成長や国民一人一人が生み出す付加価値の増大に必要な規制改革項目を、スケジュールを含め列挙したもの。答申では、五つの重点分野の一つに「人への投資」を取り上げており、その中では、都道府県の設置認可に係る審査基準等により私立学校の新設を実質的に認めない不適切な運用事例の調査と必要に応じた改善、特別免許状制度等による外部人材の活用(特に「情報T」の教員確保)、デジタル・新技術の活用を前提とした学修者本位で質の高い教育の実現に向けた大学設置基準の見直し等を提言している。いずれも令和4年度中の措置を求めている。


 このうち私立学校の新規抑制懸念は、同会議の人への投資ワーキング・グループ(大槻奈那座長=マネックス証券株式会社専門役員)の中で、社会に開かれた学習者主体の初等中等教育に関して議論された事項。


 同WGの4月22日の第7回会議では、多様な学修ニーズを実現する高等教育問題も含めて、文部科学省の茂里毅・初等中等教育局学習基盤審議官、水田功・同局初等中等教育企画課長、板倉寛・同局学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、小幡泰弘・総合教育政策局教育人材政策課長、森田正信・大臣官房審議官(高等教育及び科学技術政策連携担当)から現状等を聴取し、意見交換を行っている。


 第7回会議では座長代理の中室牧子・慶應義塾大学総合政策学部教授が神奈川県や埼玉県の取り扱いを挙げて、生徒減少期間中は全日制等の収容定員の増加をもたらすような学校、学科等の新設については、当面許可は見合わせると書いてあるなどと指摘した上で、「これがある限りにおいては、非常に不健全な市場になっているのではないか。新陳代謝やイノベーティブな学校の設置は起こらないのではないか」と文科省の考えをただした。大槻座長も「愛知県で関係している学校が新設の高校をつくったが、相当大変だと聞いている」などと発言。


 また元楽天副社長の本城慎之介委員(学校法人軽井沢風越学園理事長)は「小学校と中学校の設置基準については標準授業時数とか教職員の定数とか、かなり縛りが強いので設置基準の見直しは避けて通れないと思う」などと発言。


 これに対して同省の水田課長は不登校特例校制度の促進を進めており、授業時数特例校という制度を今年度から始めたことなどを説明したが、本城委員は「中学、小学校では通信制は認められないと理解しているが、設置基準の見直しは必要で、特例ではなく通例となるような形をぜひ実現してほしい」と語った。


 個に応じた学びを大切にする、社会に開かれた初等・中等教育に関しては、令和4年度から必修化された科目「情報T」および令和5年度から開設される「情報U」について、住んでいる地域によらず全ての生徒が質の高い教育が受けられる状況を確認するため、教員配置状況、実技指導・実習実施状況、外部人材やチューターの活用状況、生徒の満足度・教員のフィードバックを調査し、公表すること、質の高い「情報T」に必要な施策を4年度中に検討・実施するよう求めている。


 また普通免許状を持たない社会人等が学校現場に参画しやすくなるような試験制度の見直しの検討・実施、特別免許状授与に関する数値目標を含む採用計画の公表推奨等を令和4年度中に措置することも求めている。


 一方、イノベーションを育む高等教育に関しては、経営困難大学等が学校法人運営からの撤退や学校再編による再生を希望する場合に必要な手続きをまとめたハンドブックの充実や一層の周知(令和4年度に措置)、通学制大学の学部教育で行うオンライン授業全般にかかる卒業単位への算入上限について削除の可否や上限の対象とすべき授業の態様を含め、在り方の検討(令和5年度以降に検討開始、結論を得て速やかに措置)、大学の設備は学生や教員の教育研究上支障がない範囲内で他大学・機関・地方公共団体等と共有・共用できることの周知(令和4年度に措置)等を求めている。


 こうした答申の基となった4月22日の人への投資WGでは通学制の大学にけるオンライン授業の上限撤廃がWG委員から再三にわたって求められたが、文科省からは特例措置を設け、実質、4分の3までオンライン授業で対応できるようにする(一定の要件あり)こと、学生からはオンライン授業に一定数不満があることなどから上限撤廃には踏み込まないことなどが説明された。

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