こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2022年6月23日号二ュース >> VIEW

記事2022年6月23日 2582号 (1面) 
中教審大学振興部会が初会合
文理横断・融合教育を推進
高大接続の改善等課題に

 先月、文部科学省の中央教育審議会大学分科会に新設された「大学振興部会」の第1回会議が6月17日、オンラインで開かれた。初会合では、部会長に大学分科会長の永田恭介・筑波大学長(国立大学協会長)を選任し、委員が部会の検討事項について自身の意見を述べた。委員数は13人。


 大学振興部会は、2018年11月26日の中教審答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」の提言に沿った施策が進められている中で、大学や社会の現状、今後を見つめ、なお課題として残されている文理横断や「出口」の質保証の徹底の仕組み、高等教育全体の規模等について第11期中教審の任期が終わる来年2月頃までに審議結果を取りまとめるのが目的。


 具体的には、(1)「総合知」の創出・活用を目指した文理横断・文理融合教育、ダブルメジャー、メジャー・マイナー等による学修の幅を広げる教育の推進、初等中等教育における学びの変化や文理分断の改善に対応した大学の在り方、(2)各大学において、密度の濃い主体的な学修を可能とする学修者本位の教育の実現、ディプロマ・ポリシー(DP)に定める卒業生の資質・能力を保証する「出口の質保証」が徹底され、社会との「信頼と支援の好循環」を形成する仕組みづくり、(3)大学の「強み」と「特色」を生かした連携・統合、再編等による地域における学修者のアクセス機会の確保や学生保護の仕組みの整備、国公私の役割等を踏まえた高等教育の規模の在り方等を検討する。


 このうち(1)の論点に関しては、改めて文理横断・文理融合教育等の必要性、同教育等へのアプローチ、類型、わが国の大学で十分にそうした教育等が進展していない背景や要因、学部段階における同教育等の推進と専門教育の高度化、大学院における研究者養成との関係、同教育等を行う大学・学部等を積極的に評価、支援していくための取り組み、同教育等を実施していくに当たってオンライン環境等も活用して他大学・学部と連携を図ることの有効性、特に小規模の大学にあっては、大学等連携推進法人制度等を活用して他大学とリソースを共有することの有効性、文理分断からの脱却、文理横断・文理融合教育等の推進の観点から、初等中等教育と高等教育との接続に必要な取り組みを挙げており、初中教育と高等教育との接続では入試科目の見直し、入学者選抜における工夫・改善等の検討を求めている。


 こうした検討課題や論点例が事務局(文科省)から提示されると、委員からは、「文系の人に対する文理横断(教育)は難しい。数学がネックとなる。逆はできる。数学の入試をどうするかが解決策だ」「こうしたことは企業人として実感している。理数系を抜きに時代は語れない。数学ができないとそもそも採用は厳しくなる。採用者のボリュームゾーンは文系。産業界も協力していかないとこの問題から抜け切れない。ビジネス側の最前線ではどういう取り組みをしているのか、文系採用の多い企業の取り組みを聞いてみてはどうか」といった意見が聞かれた。


 また中学高校段階での対応の必要性を指摘する意見も複数委員から聞かれ、「入試から考えていかないと高校段階から改善されない」「中学高校あたりに手を付けないと厳しい。数学を高校でどこまで学ばせて大学に送り出すかだ」「大学入学後に数学をかなり丁寧に指導している経済学部がある。そのことを事前に告知すると、ある程度数学を学んでくる」などの意見が出された。


 さらに「大学に入ってから高校の数Vをやってはダメ。高校は高校レベルで完結することが大事」「大学の強み、特色を生かすことをすごく考えないといけない。アドミッションにもある程度予算を使うべきだ」「文系理系の分断は高校以前からある。高校1年で文系に進学するか、理系に進学するかを選んでいる。実態把握が重要」といった意見が聞かれた。


  このほか「文理融合(の重要性)を言う一方で、理系(特に女子)を増やすということも言っている。少し違和感がある」との意見もあった。


 最後に永田部会長がいろいろな人から意見等を聞きたいと語り、今後、部会としてヒアリングを行っていくことが提案され、了承された。次回の第2回大学振興部会は7月11日に開催の予定。


6月17日の第1回大学振興部会

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞