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記事2022年5月23日 2579号 (1面) 
通信制高校の在り方調査研究協力者会議
第7回 全審連工藤副会長が意見陳述
国関与で問題改善等要請

 文部科学省の「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議(荒瀬克己座長=独立行政法人教職員支援機構理事長)は5月16日、第7回会議をWEB会議方式で開いた。この日前半は全国私立学校審議会連合会(以下、全審連)の工藤誠一副会長(聖光学院中学高校理事長・校長、神奈川県)から広域通信制高校等の在り方等についてヒアリングを行い、質疑応答が行われた。後半は同会議が今後さらに審議を進めていくに当たっての論点整理が事務局(文科省)から提案され、委員間で意見交換が行われた。


 ヒアリングで意見を述べた全審連は私立学校の設置認可等に際して都道府県知事が意見を求める諮問機関・私立学校審議会の委員が情報交換等のため設置した組織。会長は東京都私立学校審議会の近藤彰郎会長。


 規制緩和等から急速に拡大を続けている私立の広域通信制高校に関して同連合会は、各都道府県の私立学校所管部局が直面する広域通信制高校を巡る問題等の改善や学校教育の正常化のため、これまで21回にわたり文科省に広域通信制制度の抜本的な見直しを要望し続けている。


 この日のヒアリングで工藤副会長は、累次の制度改正を経て通信制課程の設置が、最低収容人数240人以上、校舎面積は独立校で1200u以上、教員数5人以上という極めて弾力的な運用が可能とされた結果、全日制・定時制課程を置く高校・生徒数が減少する一方で、私立の広域通信制課程を置く高校数・生徒数が増加、なかには2万人を超える生徒数を抱える日本最大の(広域通信制)高校が存立するまでに至っていることや、高校として設置認可されていないサテライト施設(面接指導等実施施設およびサポート校)が教育活動の大宗を占め、しかもこうした施設に対する所轄庁の指導・監督が行き届かないという制度上の致命的な欠陥が放置され、生徒一人一人の個人差に応じた指導を行う高校教育とは全くかけ離れた実態があることなどの問題点を説明。その上で収容定員に関しては下限規定ではなく上限規定を設けること、サテライト施設に国が統一的な設置基準を策定すること、問題が生じた際には国自らが直接指導・是正する体制を構築し、実効性のある仕組みを早急に打ち立てること、課題の多い株式会社立の広域通信制高校については廃止を含め検討することなどを求めた。


 こうした要請に委員からはそうした大規模な広域通信制高校の実情を見せてもらい、確認したことはあるかとの意見があり、工藤副会長は設置認可した県以外では確認は難しいこと、ただ個人的に学校関係者から話を聞いたとして、限られた優秀な生徒がいる一方で、うまくいかない生徒も少なくなく、多くの生徒は学校の施設設備維持要員となっていることなどの実態があまり知られていないことなどを訴えた。


 会議の後半では論点整理が事務局から説明された。論点整理は(1)添削指導・面接指導の在り方、(2)指導体制の在り方、(3)質保証の方策、(4)通信教育連携協力施設(サテライト施設)の在り方、(5)所轄庁の在り方、(6)その他の構成で、A4判6ページの文書。論点としては、面接指導を年度途中にまとめて行う集中スクーリング、多様なメディアを利用した指導による面接指導時間数の免除の在り方、学習面のみならず生活面を含めて一人一人の状況をしっかり見ていくための教員や専門・支援スタッフに係る規定等、実施校・サテライト施設それぞれの所在する都道府県間の連携協力体制の構築等が挙げられている。こうした論点に委員からは、「教員の数を増やすだけではなく多くの専門性(家)が入りやすい制度を作ってほしい」「働き方改革に参考となる情報もあるのではないか。通信制高校ならではの教員の数の議論が必要」「通信制高校が十分な情報公開をすれば所轄庁にとって実態把握の初めの一歩になる。全日制、定時制、通信制の未来形を示せるといい」「同じチェック項目で各通信制高校の情報を公開するポータルサイトが必要」などの意見が出された。次回・第8回会議は6月24日で、論点を中心に議論を進める予定。


意見を述べる工藤副会長

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