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記事2022年4月23日 2576号 (1面) 
特定分野に特異な才能のある児童生徒指導支援会議
学習や学校生活に困難が生じている場合の対応など議論
プラットフォームの提案も

 文部科学省の「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」(座長=岩永雅也・放送大学学長)は第9回会議を4月15日、オンラインで開催した。


 今回の会議では、特異な才能を有する児童生徒が学習や学校生活に困難が生じている場合の対応などが論じられた。


 最初に委員から、教室以外の場所での学習を出席と認める場合があるが、学校や教育委員会が、「学校への出席」をどう捉えているかの議論がまず必要という意見が出された。出席は一斉授業に参加することの意味合いが強い。


 「学校の授業が簡単すぎて不満足な児童生徒が、外部への学びの参加で、学校への出席と認めてよいのか。所定の教育課程は受けるべきだ」という意見が上がった。


 これに対して「現状では、特異な才能を持つ子が不登校になるケースが少なくない。個別対応は教師では難しく、外部リソースに頼らざるを得ない。外部の学びに質のチェックがないのは問題ではあるが、リソースを充実させ、質の保証をさせたい」との意見が出た。


  藤田晃之委員(筑波大学教授)は情報提供として、「学習指導要領に『生徒が自ら学習課題や学習活動を選択する機会を設けるなど、生徒の興味・関心を生かした自主的、自発的な学習が促されるように工夫すること』とあり、特異な才能の支援を充実させる萌芽は指導要領の中にある」と述べ、「1人1台端末が整備された現在、多様な学びは可能になった。ただ社会性の獲得のために生活集団としての学級、ホームルームの重要さを再認識する必要がある」と話した。


 松村暢隆委員(関西大学名誉教授)からも情報提供があり、「アメリカでは特異な才能のある子供をgiftedとして選び出すことはしなくなってきている。この会議でも特異な才能のある子供の特定はしない方向性である。特異な才能とは、普通より高い能力、創造性、強い意欲を持つといった程度で、細かな基準があるわけではない」と述べた上で、「ただ個別の実践では、特異な才能は見いだされるべきだ。それによって入学試験、コンテスト、プログラムの参加などを可能にする」とした。また、「教育委員会がハブとなって特異な才能の識別、指導支援のノウハウが蓄積されることが望ましい。全国の拠点で新しい実践を開発、既存の実践を活用し、最終的には全国的なプラットフォームができるとよいと思う。全国の好事例を集約し、識別方法や支援方法を発信し、その地域でふさわしい方法が実践できるようになればよい」と話した。


 特異な才能のある子供への社会に対する理解と啓発についても意見が交わされた。「子供の意思を反映させられる仕組みをつくれないか」という発言があり、「サラリーマンの有給休暇制度のような、子供が学校を堂々と休めるシステムをつくり、その休みを有意義な活動に使う」という例を挙げた。別の委員は「学習の補てんを考えると学校有休は難しいので、夏休みをもっと長くするなど、学校の休みを長くさせればいろいろな活動に参加できる。全ての子供が才能を拡張できる機会にもなる」と語った。


 また「保護者が担任や校長が代わるたびに、子供の特性を説明して回らなければならず大変だという話を耳にするので、保護者と子供が一緒になって作る、説明のためのポートフォリオがあれば役立つ」との意見も出された。


 岩永座長は、支援策について「長期の休みがあっても子供のために意識的して有効に使えない保護者もいれば、ポートフォリオをうまく書けない人もいるだろう。行政の対応を考える際には、一部の意識の高い保護者だけを対象にしないことを念頭に置く必要がある」と述べた。

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