こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2022年3月23日号二ュース >> VIEW

記事2022年3月23日 2573号 (1面) 
学校法人制度改革特別委員会
審議終える 理事、評議員の兼職禁止
実情考慮し経過措置設ける

 学校法人ガバナンス改革に向けて関係者の丁寧な合意形成を目指すため今年1月に文部科学省の大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の下に設置された学校法人制度改革特別委員会(福原紀彦主査=中央大学法科大学院教授・弁護士)は3月17日に第5回会議を、同22日に第6回会議を開き報告書案を審議し、取りまとめた。一部文言等の修正等は福原主査に一任された。3月中には修文を終え報告書が公表される予定で、報告書の趣旨を生かす私立学校法の改正案が今国会に提出される見通しだ。


 第5回委員会では「役員等による特別背任、目的外の投機取引、贈収賄及び不正手段での認可取得」について刑事罰を私立学校法上に新設することなどが話し合われ、私学関係委員も含め全委員が異論はなく了承した。


 その後、事務局(文科省)等から提案された私立学校法の改正に向けた同特別委の報告書案が審議された。その中では理事と評議員の兼職禁止が論点の一つとなり、中高関係の委員から、「人材確保の難しさから知事所轄法人は適用除外にすべきだ」など修正を求める意見が出された。


 第6回会議で引き続き意見交換した結果、社会福祉法人改革に倣って、知事所轄法人に限らず大臣所轄法人も含めて、学校法人の実情を考慮した経過措置を設けることで理事と評議員の兼職禁止措置が了承された。


 また、「寄附行為」の名称については維持することにしたが、報告書案にあった、将来、名称を「定款」に変える可能性を残すような記述は削除することとした。子法人の在り方やグループ経営に関する記述については、表現ぶりを含め再整理することとなった。


 修正は主査に一任され、福原主査は同特別委員会の親会議の大学設置・学校法人審議会学校法人分科会に報告する。


 今後、私立学校法改正案が今国会に提出される見通しで、法改正後には政令や省令、ガバナンスコード、今回の改革を反映した寄附行為の作成例等が文科省から示されることになるが、法令には書き込まれない学校法人の規模に応じた取り扱い等も明らかになっていく見通し。


 第5回、第6回で示された「規模に応じた対応案」は同じもの。大臣所轄の学校法人(大学・短大・高専を設置する学校法人)と知事所轄の学校法人(それ以外の学校法人)に関して新規採用する措置や両法人の扱いの違い等が示されている。


 大臣所轄学校法人に関しては、理事数は5人以上(現行どおり)、外部理事の数は2人以上(新規、修学支援新制度に同じ)、理事の理事会への職務報告は年4回以上(新規)、内部統制システムでは理事会による方針決定(新規)、役員の善管注意義務(現行どおり)。評議員会の決議・承認等に関しては、解散・合併・重要な寄附行為変更を対象としており(新規)、寄附行為で定めた事項、役員の責任の一部免除は現行どおり、役員近親者等・教職員などの評議員については属性ごとの上限の設定を検討する(新規)。評議員の権限については3分の1以上の評議員による招集請求(要件の緩和を検討、新規)が盛り込まれている。


 監査体制については監事の補助・内部監査、監事と会計監査人の連携、監事への内部通報などが新規に盛り込まれ、理事近親者等の監事就任は禁止(新規)、会計監査人は設置義務とし(新規)、私学振興助成法に基づく監査については、一定額の私学助成を受けた場合必要とし(現行どおり)、新規に計算書類・会計基準を一元化、会計監査人の会計監査報告で代替できる、と定めている。


 一方、知事所轄の学校法人(高校や幼稚園等を設置する学校法人)に関しては、理事定数は5人以上(現行どおり)とし、個人立など附則6条園からの移行措置も新規に検討するとしている。


 また外部理事数は現行どおり1人以上、理事の理事会への職務報告は年2回以上(寄附行為の定め)(新規)、内部統制システムは任意(新規)としている。ただし役員の善管注意義務は現行どおり。


 評議員会による重要事項に関わる決議・承認については、知事所轄法人は対象とせず、寄附行為で定めた事項、役員の責任の一部免除は現行どおり。役員近親者等・教職員などの評議員については属性ごとの上限の設定を検討(新規)するほか、小規模法人への配慮も含め検討する(新規)。


 評議員の権限は現行どおり3分の1以上の評議員による招集請求。監査体制は任意(内部規定)(新規)としている。理事近親者等の監事就任は新規に禁止としているが、新たに小規模法人の移行措置も含め検討するとしている。会計監査人は任意(寄附行為の定め)(新規)、私立学校振興助成法に基づく監査に関しては大臣所轄法人と同じ扱い。


 こうした対応案に加え、小規模な法人の運営実態等を鑑みた配慮措置・移行措置を検討するとしており、大臣所轄法人の扱いの中に大規模・広域の知事所轄法人も追加可能とする、としている。


 このほか最終の第6回会議では、幼稚園団体代表の委員から、法改正後のこととして、幼稚園には学校法人のほかに個人立の幼稚園があるため、移行措置の必要性や、令和元年度の私学法改正では改正内容の理解・実践で苦労している法人があることから、チェックリストの作成や研修会の開催、相談会の実施、必要な予算措置等が要請された。また大規模な大学法人に義務化される常任監事について私大関係の委員から理事会が給料を払う監事では適切な監査ができないのではないか、といった疑問が出されたが、学識経験者の委員から事務の委託であり、報酬(役務への対価)であり、雇用関係とは異なるもので、厳しいことも言わないと任務懈怠となるとの説明があった。


第6回特別委員会


第5回特別委員会

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞