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記事2022年3月13日 2572号 (2面) 
スポーツ庁第4回運動部活動の地域移行検討会議開催
大会や会費、保険の在り方等検討
公立中の運動部活動改革が対象

 スポーツ庁は2月28日に第4回運動部活動の地域移行に関する検討会議(友添秀則座長=日本学校体育研究連合会会長)をオンラインで開催した。


 今回の議題は、(1)大会の在り方、(2)地域スポーツにおける会費の在り方、(3)保険の在り方の3点。検討会議では公立中学校の運動部活動の改革を対象とすることが前提とされている。


 まずスポーツ庁が今後の競技大会の在り方について論点整理を提示。大会の参加資格が学校単位に限定され、地域のスポーツ団体などは認めないところもあり、スポーツ団体の加入者は練習の成果を発揮できない。全国大会はトーナメント方式で、高いレベルの生徒が切磋琢磨(せっさたくま)する機会となっている。しかし勝利至上主義による行き過ぎた指導も指摘されている。


 また、トーナメント方式の大会では負ければ試合の機会が失われ、スポーツの楽しさを体感しづらい状況。


 これらの対応として国から地域のスポーツ団体も大会に参加できるよう要請することも必要ではないか。自分のペースでスポーツを楽しめるよう、都道府県や市町村単位での大会を、日本スポーツ協会などに開催費を補助するなどして実施できないか。大会引率や運営に関わる教員の負担は大きい。外部指導者や地域ボランティアの協力を得て、できるだけ教員が引率しない体制を整える旨の規定の必要があるのではないか。大会運営は主催者の団体で行うべきで、人員が足りない場合は教員ではなく、外部委託やアルバイトで補充する。教員が報酬を得て大会運営に従事する場合には、兼職兼業の許可を得る必要がある、としている。


 自治体のスポーツ関係部署、競技団体の担当者などの委員がそれぞれの状況、考えを発表した。


 西政仁委員(奈良県生駒市生涯学習部スポーツ振興課課長)は、経費の捻出が課題ではあるが、競技環境は民間の方が充実している水泳、ゴルフなどは民間事業者に大会運営を委託することも考えられる、とした。 


  影山雅永委員(日本サッカー協会(JFA)ユース育成ダイレクター)は、中学校年代のゲーム環境は、JFAにチーム登録すれば、誰でも二つの大会などに出場できる仕組みになっていると説明。8人制サッカーの導入などレベルや活動状況に応じた試合機会の創出が必要だとした。


  石井朗生委員(日本陸上競技連盟事務局次長)は、日本陸連では、中学生は学校とクラブからの二重登録が可能であると説明。クラブ所属で出場することで教員の引率などの負担が軽減できる。ただ登録料が二重になり、金銭負担が大きい課題もある。多くの県で大会の審判などを教員が担っており、教員が関わらなくなることで、運営に支障を来す懸念があると話した。


  他の委員からは「競技力を高めたいという生徒と、スポーツを楽しみたいという生徒では求める大会のレベルが異なるので、大会は分けて考えた方がよいのではないか」、「地域移行をいつから始め、どのような方向性にするか方針を国で明確にしないと先に進まない」といった意見があり、国としての方向性提示が求められた。


 また「運営を外部委託すると莫大(ばくだい)な費用がかかる。開催できないとなるとスポーツの衰退につながりかねない」と費用負担ができなかった場合を懸念する意見がある一方で、「スポンサー収入など新しい収入源が見つかれば、大会開催に手を挙げる民間事業者があるのではないか」と提案する意見も聞かれた。


 二つ目の議題は地域スポーツにおける会費について。スポーツ庁は部活動が地域移行されると、所属するスポーツ団体に支払う会費が学校の部費より高くなることが想定され、家庭の経済状況によっては参加を断念せざるを得ない場合もあると説明。そこで会費は低額にし、保護者なども所属するスポーツ団体の運営に積極的に参加することで対応する方策が考えられる。困窮家庭へのスポーツ費用の補助や寄付などによる基金の創設もあり得る。こうした取り組みに国からの支援を行う必要があるとした。


 自治体に所属する委員からは、「部活動に指導者を派遣したときの費用負担は少額か無料が現状」「会費は1回5百円程度であれば保護者の納得が得られる」との発言があった。


 課題として「全てを受益者負担にするのは非現実的。特に低所得家庭への支援は必須」、「事務局運営のための費用の支援も必要」などが出た。会費のみならず、ユニフォーム、道具、保険などの費用負担も避けられないという問題も提起された。リアリティーのある財源確保ができれば、民間で何ができるか考えられるという意見も出た。


  三つ目の議題は保険の在り方について。スポーツ庁は学校の運動部の活動によるけがなどは、今まで災害共済給付制度で対応できたが、地域移行が本格的に始まれば、スポーツ保険に加入し他人にけがをさせる可能性を考慮し個人賠償責任保険の加入も必要だとした。


 対応策として、競技団体に加入する際に参加者や指導者に指定する保険加入を義務付ける、災害共済給付制度による補償と同程度の補償が受けられるスポーツ保険の整備などを示した。


 競技団体の委員からは、会員登録と保険加入をセットで考えたいとの発言があった。ハラスメントやもめ事などの問題が発生したときに、どこが対応するのか。競技団体にはその余裕はないと、事故以外に起こり得る問題への対処の方策を求める意見も出された。


 次回の会議では、学習指導要領などとの関係を論議する予定。


第4回運動部の地域移行検討会議

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