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記事2022年2月23日 2570号 (1面) 
第3回学校法人制度改革特別委員会開催
今後の議論の骨格 福原主査が「覚書」提示
学校法人の特殊性に一定程度配慮

 大学設置・学校法人審議会学校法人分科会に設けられた「学校法人制度改革特別委員会」(福原紀彦主査=中央大学法科大学院教授)の第3回会議が2月22日、オンラインで開催された。今回、主議題となったのは福原主査が提示した覚書「学校法人における機関構造とガバナンスの在り方―今次の学校法人制度改革の議論に寄せて」。これは主査が今後の議論のたたき台としてまとめたもので、今後の議論の骨格となるものだ。


 第3回会議では初めに2月9日の前回会議以降の私学団体による追加意見が述べられ、紹介されたが、その中では複数の私学団体の代表から、都道府県知事所轄法人については大学法人とは別の機関設計の必要性や監事の機能強化を支える方策等が求められた。


 こうした追加意見表明の後、福原主査から「覚書」が提案された。A4判で9ページ。総論部分では設置する学校の教育研究の発展に向け、高度に戦略的な取り組みを進める必要があること、私的財産の拠出等に基づき、創立の理念と建学の精神のもとに学校を設置・管理する点に学校法人の特殊性があり、この特殊性ゆえ、創立者とその親族関係者、指定団体関係者を中心に構成される評議員会が「諮問機関」として位置づけられていること、広いステークホルダーとの対話による学校運営の実現など、社会情勢を踏まえたガバナンス構造の現代化が必要なことなどを指摘。


 その上で大部分が寄附行為に委ねられているガバナンス構造を、適切な機関設計に反映して「見える化」すること、文部科学省か都道府県かの所轄庁の違い、学校法人の規模を考慮するとともに、寄附行為による自治を一定の範囲で許容するなど、学校法人の実情にも配慮すること、適切な機関構造の設計による重層的なガバナンスのほか、情報公開や役員報酬によるガバナンス、ガバナンス・コードの見直しの必要性、新たな行政罰・刑事罰を必要な範囲で導入することの検討を挙げている。


 こうした総論の上に、各論となる、(1)学校法人における理事会・評議員会の意思決定権限では、大臣所轄法人(大学等)については、寄附行為変更や合併・解散といった学校法人の存亡に関わる基礎的変更等の重要事項に限り、理事会の決定とともに評議員会の決議を要するとしている。それ以外の重要な中期計画、役員報酬基準については将来を見据えた課題としている。寄附行為の変更は重要なものが対象で、細かなものは対象外となる。


 現在でも文科省の省令でグラデーションが付けられている。知事所轄法人(高校等を)については寄附行為に委ねる現行制度を維持する。


 これら改革案は、引き続き理事会が最高議決機関であり、評議員会は諮問機関ということを前提にしている。


 また次回以降に絞った形で議論する、(2)評議員会等のけん制機能によるガバナンス強化では、理事選任機関の寄附行為上での明確化および解任事由の法定化、理事会による理事長の選定・解職の法定化が必要とし、理事選任機関が機能しない場合の評議員会による解任請求、監事が機能しない場合の差止請求・責任追及の請求等を可能とするとし、理事に対しては理事会への職務報告を義務付けるとともに、情報開示を促す措置が必要としている。


  理事解任事由の法定化は不正・違法行為を行った場合に限られると想定されており、企業の株主総会での委任状争奪戦のような混乱や学校法人の乗っ取りなどのリスクをなくすことにつながる。


 さらに(3)評議員の選出と評議員会の構成等の適切化では、評議員の選任を全面的に理事長・理事会に委ねることは不適切で、基本的に評議員会を選任機関として明確化すること、理事と評議員の兼職を禁止するとともに、役員近親者、教職員、卒業生等、属性に応じた上限割合を設定すること、評議員に求める資格・能力の要件の明確化、定数・任期の適切な在り方を検討するとしている。


 このほか、監査体制の充実に関しては、理事会の内部統制システムの構築義務と内部監査体制・リスクマネジメントの充実、会計監査人制度の導入が必要(規模に応じて措置)としている。


 また監事は評議員会が選任するとともに、役員近親者の監事就任を禁止している。また評議員を監事の監査・不正報告の対象とすることも提案している。このうち(1)の学校法人における理事会と評議員会の意思決定権限に関しては、この日、理事と評議員の兼職に関して大学法人の理事長から評議員が理事になった場合、評議員は辞任しているといった報告や、高校法人の理事長から評議員や監事の確保の難しさを訴える意見があった。私立学校では評議員の位置付けもさまざまで議決機関としている法人もある。文科省は大筋で了承が得られたとしている。次回3月9日の第4回会議ではこの日の議論等を踏まえた主査の「覚書」の第2弾が提示される予定。第5回会議は3月17日開催の予定。


第3回学校法人制度改革特別委員会

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