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記事2022年12月3日 2597号 (3面) 
関東地区校長研修会栃木大会開催
日私教研主催・栃木県中高連実施
新学習指導要領を研究目標に
私学取り巻く課題など協議

 「令和4年度関東地区私学教育研究集会校長研修会栃木大会」が10月7日、宇都宮市内のホテルで開かれた。一般財団法人日本私学教育研究所が主催し、栃木県私立中学高等学校連合会が実施した。この大会は、埼玉、千葉、神奈川、群馬、茨城、栃木の関東地区6県の私立中学高校の校長等が集まり、私学教育を巡る最新情勢等を学び、当面する課題等について意見交換・情報交換する研修会。通算54回目となる今年の大会は、中学校で令和3年度から全面実施され、高校で令和4年度から年次進行で実施となった「新学習指導要領」を研究目標にしている。


 大会の開会式では、実施県を代表して船田元・栃木県私立中学高等学校連合会会長(作新学院中等部・高等学校校長、衆議院議員)があいさつに立ち、「コロナ禍の中で私立学校では『教育を止めるな』のスローガンの下、色々な努力・工夫がされてきた。その成果が将来に生きるよう、われわれの目標にしていかなければいけない」と述べ、研修会参加者に、「ぜひ実りある研修会にしてほしい」などと語った。


 続いて、今年42年ぶりの国民体育大会の開催県となった栃木県の福田富一知事が来賓として出席し、「予測困難な時代において未来を担う児童生徒が、これからの社会をたくましく生きるための力を育むことが重要だ」などとあいさつし、県として私学教育に大きな期待を持ち私学振興に努める考えを表明した。


 その後、文部科学省の安彦広済・大臣官房審議官(初等中等教育局担当)が、「学習指導要領と高等学校教育改革について」と題して講演し、新学習指導要領の基本的な考えや、育成を目指す資質・能力の三つの柱(学びに向かう力、人間性等/知識および技能/思考力、判断力、表現力等)などを解説。また高校に関しては「情報T」が必履修科目となり、プログラミング教育が重要なこと、普通科に関しては各高校の取り組みを可視化し、情報発信を強化するため、「普通教育を主とする学科」の種類を弾力化・大綱化する措置が求められていることなどを説明、公立高校での普通科改革の具体例等を紹介した。


 講演後、研修会参加者からは、「私立学校は生徒を確保するため必死になって自分の学校の強みを中学生に伝えている。公立の事例にあったような特化したところに助成金をいっぱい出しますということではなく、私学全体に一般の補助金を増額すべきだと思う。私立高校は既に特色化をやってきている。私学に対してそれぞれの強みを伸ばしていってほしいといったメッセージが欲しかった」「対話型の授業を入れると必然的に授業の進度が遅れるが、遅れても構わないのか」といった意見や質問が出された。


 これに対して安彦審議官は、「興味・関心、動機づけができれば授業を早めても生徒たちは意欲的についてくる。新しい授業の形をうまく使えば授業を短縮できることが見えてきている」などと語った。


 講演後は船田会長が座長、6県の私学協会の代表者等が助言者となって研究協議が行われた。


 協議題は開催県・栃木県が提案した「新学習指導要領の着実な実施に向けた取り組み」及び「令和の日本型学校教育の実現」。この協議題に対して、各県からは「ユネスコスクールとして、自然環境に関して地域の課題に取り組む学びをしている」「課外講習などで文学講読、哲学対話、教科横断型リベラルアーツ、社会起業家養成ゼミ等を実施している。大学入試対策とのバランスが課題」など、新時代の教育づくり等の取り組みが報告されたが、その一方で、「私立学校が金太郎飴のようになって私学の独自性を失わないことが大切だ」といった意見や、「学習指導要領に関して疑問点があれば私学協会を通じて文部科学省に尋ねることが必要。教育委員会では公立校と同じになってしまう」、などの意見が聞かれた。最後に船田座長は各県からの報告を総括して、「日本の世界の中での価値が地盤沈下を起こしている。教育の中で挽回していかなければいけない。しかし単に文科省が言ったから、教育委員会がこういう方針だからとそれを真似ると、私学の良さ、存在理由はどんどん薄くなってしまう。建学の精神を大きな柱として、新学習指導要領のさまざまなやり方や考え方を常に建学の精神に結び付けていくことが大切。それをしていくためにはICT、パソコンが重要だが、初年度、2年度は公的な補助があったが、3年度以降は補助が無くなる。私学としてこれをどうつなげていくのかが課題で、また教員の負担が非常に大きくなっている」と語った。


 この後、(1)高等学校教育における「個別最適化」・「合理的配慮」(茨城県が提案)、(2)大学入学共通テストの試験科目となる「情報」の扱い(群馬県が提案)、(3)学習評価(観点別評価)(同)の聴取事項に関する提案理由が説明され、研修会参加者から取り組み状況が報告された。


 茨城県から学校生活不適応や発達障害等を抱えた生徒への合理的配慮の具現化が大きな学校課題だといった報告や、神奈川県からは、協会が不登校生のための修学支援センターを設置し、極力、入学した私立学校を卒業することを目指している取り組み等が報告された。


  また船田座長が(1)の聴取事項に関して、女子生徒の制服に関してスカートの他にスラックスを選べる学校が増えていること、わが国の特別支援学校制度に関して国連の障害者権利委員会が今年9月に中止を勧告したことにも私学として取り組んでいく必要性を指摘した。


 (2)の大学入学共通テストの試験問題「情報」への対応に関しては、時間的制約もあり、会場からは特に意見は出なかったが、事前に各県から提出された書面での報告では、「3年次は土曜講座で生徒に対して受験対策をしていく予定」「『情報』が単なる暗記科目にならないことを願う」「入試対策としては、情報科の教員が大手予備校の教員対象のセミナーに参加して入試対策について研究中」といった報告が見られた。


 次年度の校長研修会の開催県は茨城県となる。


開催県を代表してあいさつする船田・栃木県私立中高連会長


研修会の後半に行われた協議会

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