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記事2022年12月3日 2597号 (1面) 
第2回高校教育の在り方WG開催
少子化加速地域の高校の在り方検討
教委は遠隔授業に期待感

 中央教育審議会初等中等教育分科会個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」(主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は、12月1日、オンラインで第2回会議を開き、少子化が加速する地域における高校教育の在り方について審議した。この問題については、深刻な少子化の中で高校の再編や遠隔授業の導入を進めている長崎県教育委員会と北海道教育委員会から現状や直面している課題、国への要望等を聴取し、意見交換を行った。


 第2回会議では、前回の第1回WG(11月14日開催)で委員から情報提供の要望のあった公立高校の立地が0ないし1校の市区町村の詳細や、高校の学級規模(全日制、公立、本校のみ)の現状、各都道府県における将来的な学級規模の推移の分析例、小規模校のメリット・課題、都道府県が実施した理想的な高校規模に関するアンケート結果の例が事務局(文部科学省)から説明され、少子化が加速する地域における高校教育の在り方に関する論点例が提示された。同省の説明によると、令和3年5月1日時点で、全国の市区町村(1741)のうち公立高校の立地が0ないし1校は全体の64・8%、1129自治体で、そのうち高校のない市区町村は489(28・1%)、1校が640(36・8%)となっている。公立高校の立地が0ないし1の市区町村の割合が最も低いのは東京都(33・9%)、反対に最も割合の高かったのは熊本県で84・4%だった。また同省が提示した少子化が加速する地域における高校の在り方に関する論点例では、今後、各都道府県で高校の適正規模・適正配置の議論が一層加速することが考えられる中で全ての高校で維持されるべき機能は何か、小規模校におけるメリットを最大化し課題を緩和するための方策は何か、小規模校においては、遠隔教育の活用や学校間連携の推進に取り組むことが考えられるが、こうした取り組み推進のため何が必要か、などを挙げている。


 こうした状況の中で、長崎県教委からは子供の数の急激な減少や、小中学校の減少も加速している中にあって、公立高校については地域で高校教育を受ける機会を確保するため、近年は一定数を保ってきていること、公立高校の生徒数は20年前と比べ約43%、10年前と比べ約23%減少していること、私立高校の減少率は20年前と比べ32・2%、10年前と比べ13・0%と公立を下回っていることなどを報告した。同県教委はそうした厳しい状況の中で、県、市町、企業、複数の高校、小中学校等と協議体を作り、地域一体となって魅力度をアップし地元入学生の増加、域外入学生の増加を図っていくこと、そのために県立高校遠隔授業配信センターを設置して生徒の興味・関心に応じた選択科目や協働的な学びを提供、生徒の進路希望や習熟度に応じた授業や講座を提供、外部人材等を活用して探究等のコンテンツを全校に配信することなどを目指す方針を説明した。特色ある学校ができれば生徒の全国募集ができると説明、ITC活用が大きな力を発揮するとも語っている。


 また、北海道教委も生徒減少の厳しい状況などを報告した上で遠隔授業の取り組み状況等を説明したが、遠隔授業については平成20年度から一部高校で開始、令和5年度に北海道高等学校遠隔授業配信センターが完成(全学年で配信)すること、また道外からの入学者の受け入れを令和5年度から27校に拡大することなどを説明した。


 こうした説明に委員からは、「私学に高校教育を代替させれば、ということはないか。私学は都市部に集中しているからか」「道外からの生徒募集はどのあたりからか」「国に要望したいことは何か」などの意見が出されたが、教委側からは、「公立高校には私学とは違うミッションがある」「全ての学区に私学があって切磋琢磨することが必要」「道外からは、東京や大阪といった都市部からの入学生が多く、過疎地域からは少ない」などと回答した。


 最後に行われた同WGの委員間の意見交換では、「高校は中規模でいい。例えばNPO、株式会社など設置主体の規制緩和も考えていい」「高校も一クラスの人数を少なくすることもいいことだと思う」「専門高校では令和3年度から地域の企業や研究機関から外部人材に学校に入ってもらいマイスターハイスクール授業をしている」「少子化は日本全体の問題。公設民営を活用すべき」「同じテーマを持った複数の学校の生徒がチームを作って探究的な取り組みをしている。生徒同士がつながった学びが必要だ」などの意見が聞かれた。


 次回第3回は12月12日に全日制・定時制・通信制の望ましい在り方についてヒアリングを行い、意見交換を行う。第4回は令和5年1月12日に「社会に開かれた教育課程」「探究・文理横断・実践的な学び」の推進についてヒアリング・意見交換を行う。そのうえで現在の中教審の委員は2月に任期満了を迎えるため、2月中をめどに「論点整理」をまとめる予定。


第2回高校教育の在り方WG

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