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記事2022年12月23日 2599号 (2面) 
大学院段階の学生支援新制度検討会議
授業料後払い制度を創設
令和6年秋入学から開始

 文部科学省の「大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議」(座長=小林雅之・桜美林大学国際学術研究科教授)の第4回の会合が令和4年12月15日、対面とオンラインのハイブリッド方式で開かれ、報告案『大学院段階における「授業料の受益後納付」制度(在学中は授業料を徴収せず、卒業後の所得に応じて納付する新たな制度)の創設について』を審議し、取りまとめた。


 同報告は「大学院段階における『授業料後払い』制度(在学中は授業料を徴取せず、卒業後の所得に応じて納付する新たな制度)の創設について」と一部タイトルを変え、令和4年12月23日付で同省から公表された。報告は全体で9ページ。報告の概要は以下の通り。 


  


 新たな授業料後払い制度は実務的な準備や事前審査、周知等が必要なため、令和6年秋入学から開始するため、実務は日本学生支援機構(JASSO)が担う。同機構から大学院に年1回または複数回授業料相当額を大学院に支払う(大学が代理受領する)。


 対象学生は、博士課程の学生については「第6期科学技術・イノベーション基本計画」等に基づき経済的支援の拡充等が進められているため、当面、こうした支援の対象外となっている修士課程および専門職大学院の学生とし、同機構の業務の範囲が経済的困難を抱える優秀な学生としていることから、年収要件を設ける。年収要件は、現行の修士段階の貸与型奨学金の基準をベースに、今後政府部内で検討する。その際、子供を持つ学生への配慮、社会人入学者が離職等を伴う場合は入学時の見込み年収で判定することも検討する。


 同機構から大学に支払う額(卒業後に本人が納付すべき総額)は大学院の授業料の標準額等をベースに、政府部内で検討する(卒業後の納付額が過大にならないよう上限を設ける)。また生活費にかかる貸与型奨学金を別途受けることも可能にする。


 この貸与型奨学金の金額・年収要件等は、卒業後の授業料納付と貸与型奨学金返還の合計額が過度にならないよう授業料支援との合計額等を現行の貸与型奨学金と同水準とする方向で見直す。


 卒業後、所得に応じて納付する月額は、現行の無利子奨学金の所得連動型返還制度との整合性をとり、(1)税や社会保険料等を控除した所得の9%を12等分した額とする。(2)ただし、一定年収(例えば単身世帯で年収300万円)を下回る場合は一定の最低納付額(月額2千円など)を設定する。(1)の所得の計算では、年少の子供を扶養する場合には独自の所得控除も検討する。


 納付の始期は卒業後半年経過後(ただし、博士課程に直接進んだ場合など、在学中は在学猶予の利用が可能)で、納付の終期は、納付総額が授業料分の額に達した時。納付の方法は希望者が利用する制度であること、令和6年度から速やかに実施する観点から、JASSOによる口座振替方式とする。


 実務上の課題について、仮に納付が滞った場合のために原則として債務保証の仕組みが必要だとする半面、制度の趣旨から考えれば保証は必要ないという考え方もできるとして、保証の要否、保証を付す場合の適切な在り方については、財源及び利用者が卒業後に債務不履行に陥るリスクなどを勘案しながら、今後政府部内で検討する。


 複数の学校種での貸与奨学金等の利用ケースの場合、例えば大学と大学院で所得連動返還を利用するとそれぞれ所得の9%ずつ(合わせて課税所得の18〜27%の返還)となるなど、所得に応じた無理のない返還とはいえないとした一方で、返還・納付の長期化を避けるには止むを得ないとの考え方もあることから、今後政府内で検討する。 


 このほか、卒業時などの段階で業績優秀者については全部又は一部納付を免除する優遇措置の対象者とすることが適当としている。


最終となった第4回会議

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